昨日、天気が不安定ななか、夕方からプラプラと新宿に出かけ、ロシア映画「父、帰る」を見てきました。前にも映画館まで行ったけれども「満席・立ち見」であきらめて帰ってきた作品です。昨日も、最終回であるにもかかわらず、満席になっていました。しかし、見終わると、さっぱり訳の分からないことだらけ…。欲求不満の溜まる映画です。
アンドレイとイワンの兄弟は、母と祖母と4人で暮らしていたが、ある日突然、父親が12年ぶりに帰ってきた。翌日、父と兄弟は自動車での旅に出かけるが、イワンは訳もなく父親に反発していく…。
というストーリーで、見ていると、兄の方は少しでも父親の記憶があるらしく、それなりに父親になついていくのですが、弟の方は、父親の記憶が全くないらしく、また兄に張り合う気持ちもあって、父親に反発していったのだろうと思います。冒頭の、父親が帰ってきた日の食事シーンにも、そんな微妙な緊張感があふれています。
ところが途中から、父親が「仕事ができた」といって、突然旅を中止しようとしますが、結局、兄弟を連れてまた旅を続けます。しかし、母は「お父さんはパイロットだ」といっていたけれども、どうもそうではないらしい。しかし、財布の中にはお金がいっぱいはいっている。なんとなく胡散臭そうな雰囲気で、イワンは、「本当に父親なのか?」と兄に問いかけます。やがて、父親は鄙びた漁港で仲間らしき男に会い、そのあと、浜辺にうち捨てられたボートで無人島へ…。ここで事件が起こるのですが、それはネタばれになるので書けません。しかし、結局最後まで父親が何者だったのか、なぜ突然帰ってきたのか、何も分からないまま。父親は無人島の森の奥にある廃屋で、床下からトランクを掘り出し、その中からなにやら古びたケースを持ち出すので、それが目的だったんだなということは分かるのですが、ケースの中に何が入っていたのかはわからないまま映画は終わってしまいます。おいおい、いったい何だったんだよ?と言いたくなるような展開です。
だけれども、不思議な存在感みたいなものだけはしっかりとある作品でした。広い草原、青い空、湖…どれも非常に強烈な印象を残してくれます。メインテーマが頑なに父親に反発していくイワンの気持ちであるなら、それはもう本当によく伝わってきます。なにか分厚い文芸大作を読み終わったような、不思議な充実感が残る作品でした。
【映画情報】監督=アンドレイ・ズビャギンツェフ/製作=ドミトリー・レフネフスキー/出演=ウラジーミル・ガーリン(兄)、イワン・ドブロヌラボフ(弟)、コンスタンチン・ラブロネンコ(父)/2003年ロシア、アスミック・エース
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