書き込みが遅くなりましたが、水曜日に、またまた映画を見てきました。3日連チャン、前日に続いてまたもや銀座シネスイッチです。今度は、先週封切られたばかりのフランス映画「ピエロの赤い鼻」です。
フランスの田舎町。中学教師のジャックは、日曜ごとに近くのお祭りでピエロに扮してみんなを笑わせている。でも、息子のリュシアンにとっては、父親がみんなの笑いものになるのが嫌いで仕方なかった。しかし、ジャックがピエロに扮するのには、実は理由があったのだ。ある日、父の古い親友・アンドレがリュシアンにその話してくれた。その出来事は、町がドイツ軍に占領されていた第2次世界大戦末期のことだった…。
ということで、アンドレの語りによって、映画は戦争と占領の時代に遡っていきます。
といっても、若いころの登場人物は、最初とまったく同じ俳優。ちょっと髪の毛をふさったとさせたぐらいで、20年ほど前の若い2人というにはだいぶ無理があります(とくにアンドレは…)。ドイツ軍に占領されていたといっても、もうヒトラーの敗色は濃厚で、レジスタンスが盛んに行なわれています。ジャックとアンドレも、2人で張り合っているルイーズに格好いいところを見せようと、レジスタンスの真似をして、鉄道のポイント切替所を爆破。上手くいったように思えたのですが、ドイツ軍は、雨の中、夜中に村中の男を集め、ジャック、アンドレ、それに保険屋のティエリー、兄がレジスタンスに加わっているエミールの4人を人質にとり、真犯人が名乗り出なければ身代わりに4人を処刑すると宣言。4人は、雨でぬかるんだ穴の底に囚われてしまいます…。
と、ここから先は書けません。この映画の感動を伝えるには、ここから先のストーリー展開を書いてしまえば簡単なんですが、それじゃあ、まったくのネタ晴らし。映画を見る“値打ち”がなくなってしまう…。ということで、ここから先は、ぜひ見に行ってください。
で、結論からいうと、いい意味で予想を裏切ってくれる展開です。だいたい、最初にこの映画のことを知ったとき、僕は、てっきり、ジャックが昔からピエロをやっていて、その彼が戦場で…というストーリーじゃないかと勝手に思ってましたが、まったく違ってました。
この映画が予想を裏切ってくれるのは、もう1つ。この映画に登場するドイツ兵は、けっして“悪の権化”なんかじゃないんですよ。ドイツ軍の敗色はすでに濃厚で、兵士たちも、いつまでも作戦にしがみつく司令官のグチをこぼしたり、スイスに逃げ出したいと言ってみたり…。そういう、ありふれた人間くさい兵士として描かれています。
この映画のテーマは、一言でいえば、やっぱり勇気だと思います。決定的瞬間における、ちっぽけかも知れないけれど、決定的な勇気。人質になった4人のところに現われたドイツ兵ベルントの勇気、転轍手フェリクスと彼の妻マリーのみせた勇気。そんな勇気は、決して超人的なものではなく、人間くさい、平和な時代だったらごく普通に暮らしている人たちの中にある――。そんなメッセージが伝わってきました。
【作品データ】監督 ジャン・ベッケル/原作 ミシェル・カン/出演 ジャック・ヴィユレ(ジャック)、アンドレ・デュソリエ(アンドレ) ティエリー・レルミット(ティエリー)、ブノワ・マジメル(エミール)、イザベル・カンドリエ(ルイーズ)、シュザンヌ・フロン(マリー)、ベルニー・コラン(ベルント)/2003年フランス
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