今日の日フィル定期は、
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 編ホ長調 作品73 「皇帝」
- ハンス・ロット:交響曲 ホ長調
というプログラム。指揮は沼尻竜典・日フィル正指揮者、ピアノは梯剛之さんです。
前半の演奏は、弱音の部分の繊細さ、響きの透明感はさすがでした。ただ、ミスタッチが多かったのと、僕の好みからいえば、「皇帝」はもう少しがっしりとした演奏の方がいいのではないかと思いました。アンコールでリストのコンソレーション第3番(変ニ長調)を演奏されましたが、こちらの方が梯さんらしさがでていて、よかったです。
後半のハンス・ロットの交響曲は日本初演。ハンス・ロット(1858?1884年)は、マーラーとほぼ同世代の(わずかに先んじる)作曲家ですが、1880年に精神を病み、25歳でなくなったため、忘れられていました。1990年になってようやく「再発見」され、交響曲もようやく演奏されるようになったそうです。
プログラムの解説では、「ブラームスやブルックナーの交響曲からの残響と同時に、同世代のマーラーに通じる響きを聴き取ることができよう」とありますが、僕が聞いた印象では、ブラームスやブルックナーっぽいところもありますが、基調はマーラー風? でも、マーラーというよりハリウッド映画の映画音楽という感じでしょうか。確かに現代風な音楽なのですが、本質的なところで、マーラーともちがうという印象を持ちました。第3楽章のスケルツォは、古典的な感じで始まり、途中から段々とマーラー風になり、最後は両者のジンテーゼ(?)という感じです。あちらこちらに“聴き所”の旋律がある一方で、全体としての印象はちょっと散漫な感じでした(全曲で約55分)。しかし、これが1880年の音楽だと言われると、やっぱり驚いてしまいます。
さて、日フィルの演奏ですが、プログラムにはホルン4、トランペット3とありますが、本日の演奏ではホルン8、トランペット5になっており、その分、マーラー的な響きが強調されていました。ただ先月、先々月の定演に比べると、やや弦がばらついた感じ?で、金管も初めての楽曲にちょっと余裕がなかったという感じがしました。しかし、日本初演としては大成功だと思います。こうした作品を意欲的に取り上げた沼尻氏に、大きな拍手が送られていました。