来年4月から東京都交響楽団の常任指揮者にジェイムズ・デプリースト氏が就任するという話を、昨日初めて知り、今日そのデプリースト氏が指揮する都響のコンサートがあるというので、昨晩に続いてまたまたサントリーホールに出かけてきました。
といっても事前にチケットを入手できなかったので、当日券の窓口に並びました。そうしたら順番を待っているあいだに、「チケットが余っているので、よかったら買ってもらえませんか」と声をかけられ、1階前から6列目という席をゲットしました。最近は安くあげるために2階席、それも後ろの方ばかりだったので、舞台に近い席はひさびさ。オーケストラの音がストレートで聞こえ、なかなかいい席でした。
プログラムは、以下の通り。ロシア音楽シリーズです。ヴァイオリンのソリストは、川久保賜紀さんです。
- グラズノフ:演奏会用ワルツ第1番 ニ長調 op.47
- チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
- チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 op.36
3曲とも、いわゆるロシア音楽らしく、ロマンティックな曲でした。川久保さんのヴァイオリンは、情熱的で力強い演奏でした。前から6列目だったので、川久保さんの弾くバイオリンの胴体のf字孔から、“ここから音が聞こえてますよ?”という感じで、ビンビン音が響いてきました。
さて、お目当てのジェイムズ・デプリースト氏ですが、1936年、アメリカ・フィラデルフィア生まれのアフロ・アメリカン。1962年に小児麻痺にかかり、その後遺症のため、いまは車椅子で振っておられます。レナード・バーンスタインに選ばれて、ニューヨーク・フィルのアシスタント・コンダクターを務めたあと、ヨーロッパ・デビューし、ワシントン・ナショナル交響楽団、ケベック交響楽団などをへて、1980年、オレゴン交響楽団の音楽監督・指揮者に就任。という経歴からも分かるように、主にアメリカを舞台に活躍してきた指揮者です。プログラムの記事でも、日本のオーケストラで、アメリカ人が常任指揮者になるのは事実上初めてと紹介されています。
で、そんなデプリースト氏の指揮ぶりですが、やさしくて、すみずみまで行き届いた、温かみのある演奏だというのが率直な感想です。まあ、今日のプログラムからいえば、温かく、優しい演奏というのは当たり前かも知れませんが、あれこれ理窟っぽい話はさておいて、ともかく演奏を楽しもうというエンタテイメントに徹した指揮ぶりという感じでした。交響曲第4番の第3楽章では、弦のピチカートのところではまったく棒を降ろしてしまって、管の吹き出しのところだけタイミングを合わせるために少しふるだけ。ピチカートが生み出す自然のリズムに任せるという感じでした。
都響の音も、弦の艶、管の響き、どちらもチャイコフスキーにぴったりという感じで、本当に楽しめる演奏でした。正直に言うと、都響にはこれまで何度も期待が“はずされた”ことがあって、だいぶ評価が渋かったのですが、どうも僕の見込み違いだったようです。
ということで、ジェイムズ・デプリースト&都響に注目です。
ところで、プログラムをかねた今月の「月刊都響」に、リレー連載「都響の40年」の第3回として、岩野裕一氏が「オーケストラは50年、100年という単位で――」という一文を書かれています。1964年の都響創立当時の経緯をふり返って、「東京都の名に値するような、ニューヨーク、ボストン、ベルリン、ウィーンの交響楽団と肩を並べ得られるようなものをつくりたい。それでなければ、東京都がつくるだけの価値はない」(1965年3月)という当時の東都知事の発言や、都民の「情操を培うために、長期的にかつ効果のある施策」として「経営が安定し、芸術性の高い、また公共性のある『交響楽団』を創設する」という「設立趣意書」などを紹介されており、興味深く読みました。
はじめまして。はろるど・わーどと申します。
TBありがとうございました。
確かにデプリーストさんは、とてもエンターテイメント性のある指揮者ですね。音楽に温かみがあった上に、聴かせどころはしっかりと盛り上げる。これまでの都響の指揮者には、あまりいなかったタイプなのかもしれません。
ところで私も「月刊都響」の当該記事を読みました。現在の都響をとりまく環境はなかなか厳しいようですが、設立の意義があれほど志の高いものとは知りませんでした。本当に興味深かったです。
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