政府が新しい「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の骨子を、自民党に提示しました。
「国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威として登場」という状況認識のもと、「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにすること」を目標として、「米国との戦略的な対話に主体的に取り組」みながら、「国際平和協力活動に主体的、積極的に取り組む」と言っていますが、“テロ撲滅”を看板にして自国中心主義的に世界のあっちこっちに“力の政策”で望もうとするアメリカと「戦略的対話」に従って自衛隊を「国際平和協力活動」という看板でどんどん海外に派兵していけば、結局、世界の反米テロの危険が日本にも及ぶようになります。
つまり、この新しい「防衛計画の大綱」(骨子)なるものには、安全保障の目標と基本方針のあいだに大きな齟齬が存在しているのです。テロの危険性にたいしては、別の手段でのアプローチが求められているし、それが国連加盟諸国の多数の声でもあります。
防衛計画大綱:自民に骨子案提示 「新たな脅威」に対応(MSN-Mainichi INTERACTIVE)
防衛計画大綱:自民に骨子案提示 「新たな脅威」に対応
政府は16日午前、自民党に新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の骨子を提示した。「日本防衛」に加え「国際的な安全保障環境の改善」を「安全保障の目標」として設定、テロや弾道ミサイルなど「新たな脅威」に対応するため「多機能弾力的防衛力」を整備することを示した。防衛力整備の計画はおおむね10年を視野に置くが、国際環境の変化に伴い5年後に見直すことを明記する。
先月提出された小泉純一郎首相の諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・荒木浩東京電力顧問)の報告書の内容を色濃く反映した。政府は12月上旬までに新防衛大綱を閣議決定し、これに基づく中期防衛力整備計画を同中旬に決定する予定。
骨子は、「国際的な安全保障環境の改善」が日本の平和と安定につながるとの考えから、現在は「付随的任務」とされている自衛隊の国際平和協力活動を「本来任務」に格上げする方向を打ち出した。日米同盟については「我が国とアジア太平洋地域の平和と安定の維持に不可欠」として、日米の役割分担の見直しなど「日米安保再定義」を視野に「米国との戦略対話に主体的に取り組む」方針を明示。また、国連安保理常任理事国入りを目指す姿勢を強調した。
一方、武器輸出三原則については、米国との技術開発を解禁する方針を示しているものの、防衛大綱自体に盛り込むべきかどうかは「検討課題」とした。【古本陽荘】政府が与党に提示した防衛大綱の骨子の概略は次の通り。
【安全保障環境】
▽国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威として登場。
▽新たな脅威や多様な事態に対応することが必要。
【安全保障の基本方針】
▽安全保障の目標
・国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにすること。
▽日米安全保障体制
・米国の軍事プレゼンスは、アジア太平洋地域の平和と安定の維持のために不可欠。
・米国との戦略的な対話に主体的に取り組む。
▽国際社会との協力
・国際平和協力活動に主体的、積極的に取り組む。
▽国連の機能の実効性の確保。
・国連改革の実現につとめるとともに、安保理常任理事国として責任を果たす。
【防衛力の在り方】
▽多機能・弾力的・実効性、効率性
▽防衛力の役割
・新たな脅威等への実効的な対応=弾道ミサイル攻撃対処、ゲリラや特殊部隊による攻撃対処、周辺海空域における領空侵犯対処、武装工作船等対処など。
・国際的な安全保障環境の改善のための主体的、積極的な取り組み。
【留意事項】
▽防衛力の在り方は、おおむね10年後までを念頭に置いたもの、5年後には必要に応じ見直しを行う。
▽武器輸出三原則等の取り扱い。
・平和国家としての基本理念を堅持
・日米安保体制の効果的な運用の確保。
・国際共同開発。
[ 毎日新聞 2004年11月16日 11時15分 ]