米軍がファルージャ市全域を「100%制圧」しました。しかし、いったいどれだけの犠牲が出ているのか、攻撃されたのは本当にテロリストだったのか。米海兵隊大佐は「8日の作戦開始以降、武装勢力1000人以上を殺害、拘束者も1000人以上に上る」(毎日新聞)と語ったそうですが、民間人の犠牲者がどれぐらいにのぼるかは、いまのところまったく不明です。
さらに、小泉首相が思わず語ったように、このファルージャ制圧作戦がアメリカにとって見ても「成功」だったといえる結果を残すかどうか。かえってイラク国内の反米感情――少なくともスンニ派の――を強め、対立を複雑にしただけで終わるのではないか。そうなったとき、アメリカはいったいどうするつもりなのだろうか。そして、作戦「成功」を願い「支持」を表明した小泉首相は…。すでに、ファルージャ以外の地域では、米軍や米軍の支配下にあると見なされるイラク暫定政府、警察などを標的にしたテロが続発しています。
ファルージャ:米軍制圧 とんでもない破壊と、内部の声も(MSN-Mainichi INTERACTIVE)
ファルージャ:米軍”完全制圧” 残存勢力の壊滅目指す(MSN-Mainichi INTERACTIVE)
「ファルージャ、路上に多数の遺体」/中東TV(NIKKEI NET)
ファルージャ:米軍制圧 とんでもない破壊と、内部の声も
ファルージャ制圧作戦には米軍、イラク軍合わせて約1万5000人が投入された。ファルージャへは今年4月にも大規模な攻撃を仕掛けたが、実にその6倍にあたる兵力だ。
作戦を立案したナタンスキー米海兵隊少将はAP通信に対し、作戦の一部を明かしている。それによると、作戦の「開始」は実際に市街地へ突入した8日の数日前。米軍はまずファルージャ南部郊外に兵力を集結させ、続いて6日夜には北部郊外の戦力を増強。「武装勢力の陣形を乱す」(同少将)のが狙いだった。
8日夜、北部郊外の部隊は6地点から市街に突入し、同市南部に向け進攻。米海兵隊と陸軍部隊が先導し、後方のイラク軍が家屋を捜索した。
米軍は、戦闘に20種以上の航空機、M1A1エイブラムズ戦車、ブラッドレー装甲戦闘車などを投入。カラシニコフ銃や迫撃砲、ロケット弾などの武器に頼る武装勢力を圧倒した。
米紙ニューヨーク・タイムズの従軍記者は、同市中心部で武装勢力のライフル狙撃によりくぎ付けとなった海兵隊部隊が空爆を要請、モスク(イスラム礼拝所)にレーザー誘導弾が投下され、空爆は数時間に及んだと、戦闘の一場面を伝えている。
しかし、市内の被害状況を示す情報は断片的だ。英BBCアラビア語放送の現地記者は「ヤシの並木も砲撃を受け、幹しか残っていない。たくさんの遺体が路上に放置され、死臭が耐えられないほどだ」と惨状を報じた。
米軍は武装集団の逃亡を阻むため同市を包囲。AP通信によると、市南部で10日、225人の男女が脱出を懇願した。しかし、米軍は女性と子供ら25人を除く男性200人に市内へ戻るよう命じた、という。
AP通信によると、海兵隊は16日、市内の被害状況の調査を開始。トッド・ボーワー軍曹はつぶやいたという。「なんてこった。とんでもない破壊だ」【高橋宗男】
[毎日新聞 2004年11月16日 20時00分]
ファルージャ:米軍”完全制圧” 残存勢力の壊滅目指す
【カイロ小倉孝保】イラク中部ファルージャの武装勢力制圧作戦を進める駐留米軍とイラク軍は、15日までの攻撃で同市全域を支配下に収めた模様だ。現地の米海兵隊大佐は15日、電話会見で米国防総省の記者団に「同市を100%制圧した」と語った。しかし、市内では依然、少人数のグループがゲリラ的抵抗を続けている。米軍側は残存勢力の壊滅を目指し、約5万戸とされる市内全戸の捜索を続けている。
ロイター通信などによると、制圧作戦の最終的な局面で武装勢力は市南西部の拠点に追い込まれた。米軍は15日、一帯に激しい空爆を続け、戦車を進撃させた。武装勢力の攻撃は収まりつつあるという。
米海兵隊大佐は同通信に対し、8日の作戦開始以降、武装勢力1000人以上を殺害、拘束者も1000人以上に上ると語った。拘束者のうち外国人は24人にとどまり、多くは戦死した模様だ。
一方、米兵の死者は38人、負傷者は320人、イラク兵の死者は6人、負傷者は28人。民間人の犠牲は、米軍が赤新月社などの市内への立ち入りを禁止しているため、実態が分かっていない。
[毎日新聞 2004年11月16日 19時41分]
「ファルージャ、路上に多数の遺体」/中東TV
【バグダッド14日共同】イラク赤新月社の緊急支援物資を積んだトラックが13日夕、米軍が武装勢力の制圧作戦を続けるイラク中部ファルージャ郊外の総合病院に到着した。中東の衛星テレビ、アルアラビーヤは目撃者の話として「路上にたくさんの遺体が横たわっている」と悲惨な状況を伝えた。
しかし、赤新月社の報道官によると、米軍当局は市中心部への立ち入りを拒否、緊急物資は中心部に残る一般市民には届いていない。
赤新月社は、中心部での物資配給を許可するよう米軍側に要求。米軍は、市中心部に通じるユーフラテス川の橋の安全が確保できない、と拒否の理由を説明している。
イラク暫定政府は13日、ファルージャ総合病院から「多数のけが人」をバグダッド市内に搬送したと発表。このため、赤新月社は医薬品などを届けようと同病院を訪れたが、負傷者はおらず、医薬品なども十分にあったという。
(NIKKEI.NET 11/14)