堤隆『黒曜石 3万年の旅』

本カバー

 黒曜石の石器には、誰しも歴史へのロマンを呼び起こされるでしょう。著者は、現在は長野県浅間縄文ミュージアムの学芸員だということですが、國學院大学の博士課程を修了したあと在野の考古学研究者に贈られる藤森栄一賞を受賞(1992年)など、在野で研究を続けてこられたのだと思います。だからと言う訳ではありませんが、本書の文章は学術書、研究書というより、ずっとソフトで、著者と一緒に黒曜石の遺跡を求めて全国を探索して歩いているような気がしてきます。その文章の魅力に惹かれて、一気に読み終えてしまいました。

黒曜石の石器が、江戸時代から古代人のつくったものだと考えられていたこと、「黒曜石」か「黒耀石」か、日本各地の黒曜石の原産地巡りなど、興味深い話のあいだに、人類と道具と言語の歴史やら、気候の寒冷化への対応として、石器が使われるようになったという、ダイナミックな後期旧石器時代像が描かれています。

【書誌データ】堤隆著『黒曜石 3万年の旅』(NHKブックス1015)/日本放送出版協会/ISBN:4-14-091015-1/2004年10月発行/本体920円

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