岩波新書の新刊、『東アジア共同体』(新赤版919)を読み始めました。
著者の谷口誠氏は、外務省入省、国連大使、OECD事務次長を経て、早稲田大学アジア太平洋研究センター教授などを務められた方です。だから、日米安保条約や日米関係については、「日米間には日米同盟が存在し、日米安全保障条約があり、日本の生存にとって、米国と健全な友好関係を維持していくことが重要なことは言うまでもない」という立場ですが、日本の対アジア外交において、日本が東アジア諸国に評価されてこなかった原因として、「過去の侵略戦争と、それに纏わる歴史認識の相違」とともに「戦後の日本外交」が対米重視政策であるためにに、「いっかんしたアジア重視政策がなかったこと」をあげられるとか、東アジア通貨危機の原因として「東アジアNIEsに、マクロ経済政策の一環として資本市場の自由化の促進を強く要求し、指導してきたIMF(国際通貨基金)、OECDの責任は大きい」と指摘されるなど、なるほどと思う指摘があちこちに登場します。
また、日中関係については、「中国の一般大衆の強い反発の主な原因」は「日本の政治家、とくに小泉首相の靖国神社参拝問題にある」と指摘し、「姑息な策を弄しての参拝は、国内向けの政治的パフォーマンスと受け取られても仕方ない」「首相はなぜアジア太平洋戦争による日本の犠牲者のみならず、1000万人に及ぶアジアの犠牲者、他国の犠牲者に思いをいたさないのであろうか」と、ズバリ核心をついた批判を明らかにされています。
FTAや「宮沢構想」の評価など、もっと掘り下げて検討すべき点もいろいろありますが、元国連大使などを歴任された方の意見として、じっくり読んでみたいと思います。
【書誌データ】著者:谷口 誠/タイトル:東アジア共同体――経済統合のゆくえと日本――/出版社:岩波書店(岩波新書、新赤版919)/発行:2004年11月19日/定価:本体780円/ISBN4-00-430919-0
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