新防衛大綱決定

10日、新しい防衛大綱と中期防が閣議決定されました。

今回の防衛大綱の特徴は、1つは、海外活動を自衛隊の「本体業務」に格上げすること。もう1つは「多様な事態への対処」ということで、米軍のミサイル防衛システム(MD)への参加を決め、テロ対策を名目にした部隊強化に踏み出したこと。

日本への「本格的な侵略事態生起の可能性は低下」と言うなら、日本は軍縮に向かうべきです。にもかかわらず、「新たな脅威」を押さえるために自衛隊は米軍に協力して積極的に海外へ出て行こうというのは、まったく矛盾しています。米軍との一体化を進めれば、ますます日本は「テロ」の標的にされる危険性が高まるだけです。

また、中国との関係でも、東アジアにどのような安全保障環境をつくるのかという大きな方向がないので、結局は、「中国脅威論」を言いつのって、相互緊張を高めるだけ。かつてはソ連の脅威、こんどは中国、北朝鮮の脅威と、脅威をあおり立てるのが防衛政策ではありません。

<新防衛大綱>決定 ミサイル攻撃に弾力対応、安保政策転換(毎日新聞)

<新防衛大綱>決定 ミサイル攻撃に弾力対応、安保政策転換

[ 毎日新聞 12月10日 12時04分 ]

 政府は10日午前、安全保障会議と閣議で、日本の防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」と次期中期防衛力整備計画(05?09年度)を決定した。新大綱ではテロや大量破壊兵器などの「新たな脅威」に対応するため「多機能」で「弾力的」な防衛力整備を進め、ミサイル攻撃など多様な事態に即応できる体制の確立を掲げた。国際平和協力を国土防衛と並ぶ、日本の安全保障の2大目標とすることで従来の自衛隊の「付随的任務」から「本来任務」に格上げする方向も事実上示し、必要最小限の防衛力保持を基本とする戦後の安全保障政策の転換を打ち出した。
 防衛大綱が策定されたのは76年、95年に続き3回目。「9・11」後の国際環境の変化に伴い見直された。陸上自衛隊の定数を5000人減らし、装備のあり方を「別表」で示した。
 新大綱は、独立国として必要最小限の防衛力を保持するこれまでの基本方針「基盤的防衛力構想」を事実上見直した。新しい防衛力の役割として(1)新たな脅威や多様な事態への実効的な対応(2)本格的な侵略事態への備え(3)国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取り組み――の三つを掲げた。大野功統防衛庁長官は10日の記者会見で、自衛隊の国際的活動を「本来任務」へ格上げする自衛隊法改正を次期通常国会で目指す考えを示した。
 新たな脅威への具体的対応として、弾道ミサイルに対するミサイル防衛(MD)システムの配備、ゲリラによる攻撃、島しょ部侵攻に備えた部隊の即応性、機動性の向上を挙げた。
 日米同盟については、「不透明・不確実な要素が存在するアジア太平洋地域の平和と安定の維持に不可欠」として、さらなる関係強化を求めた。「専守防衛」「非核三原則」の基本は「引き続き堅持する」とした。
 安全保障環境では、北朝鮮について「軍事的な動きは地域の重大な不安定要因」と核やミサイル開発の動きをけん制。中国について「核・ミサイル戦力や海・空軍力の近代化を推進し、海洋における活動範囲の拡大を図っている」と指摘。「動向に注意していく必要がある」との表現で安保上の懸念材料との認識を初めて示した。さきの中国原潜による領海侵犯事件を念頭に「領海内で潜没航行する外国潜水艦に適切に対処する」として、日本周辺海域での領海警備の強化を盛り込んだ。【古本陽荘】

◆新防衛大綱の骨子

  • 日本の安全保障の目標は、国土防衛と国際安全保障環境の改善
  • 「多機能」「弾力的」「実効性のある」防衛力を整備
  • テロや弾道ミサイルに対応するため、日米安保体制を強化
  • 国際平和協力活動を積極的に推進
  • 陸海空の統合運用の強化
  • 北朝鮮は、地域の重大な不安定要因
  • 中国は、軍の近代化、海洋活動の活発化から動向に注意
  • 防衛力は10年後までを念頭におき、5年後または情勢変化で見直し

◆次期中期防衛力整備計画の骨子

  • 陸自に、機動的に部隊を提供する中央即応集団を新設
  • ミサイル防衛で、地上に警戒管制レーダーを整備
  • 国際平和協力活動の教育部隊を新設
  • 5年間の防衛費の総額の限度は24兆2400億円

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