朝日新聞は、7日付で、日本政府関係者の話として、領海侵犯した中国海軍の原潜が、グアム島周辺を一周した帰路であったことを明らかにしました。
そのこと自体は領海侵犯事件の直後から言われていたことだと思いますが、記事を詳しく読むと、実は、自衛隊と海上保安庁、米軍は、10月に同原潜が青島を出発したときから追跡していたし、日本の領海を侵犯する数日前からP3Cで追跡。海上保安庁は、浮上した原潜の撮影もしていたということです。だとしたら、今回の「領海侵犯」騒ぎは“やらせ”としか言いようがありません。
結局、こんどの領海侵犯は、米軍偵察の帰路に米軍の追跡を振り切ろうとして間違って日本領海に侵入してしまったというあたりが「真相」なのではないでしょうか。「朝日」は、「今後、太平洋海域で、中国と日米との間で海軍力の競合がより強まることも予想される」と書いていますが、中国の狙いはあくまで米軍にあると考えた方が現実的でしょう。
領海侵犯の中国原潜、直前にグアムへ 米軍牽制、訓練か(朝日新聞)
領海侵犯の中国原潜、直前にグアムへ 米軍牽制、訓練か
政府が11月に海上警備行動を発動して追跡した中国海軍の漢(ハン)級原子力潜水艦が、日本領海に入る前に米海軍の重要拠点であるグアム島の周囲を一周していたと、日本政府関係者が6日明らかにした。中国原潜のこのような行動が判明したのは初めて。政府は今回の原潜の航行目的は、「台湾有事」の際に米海軍の動きを原潜で牽制(けんせい)する軍事作戦の訓練だった可能性が高いと分析している。
政府関係者によると、原潜は10月中旬、母港である中国海軍北海艦隊潜水艦基地がある青島・姜哥荘(チアンコーチョワン)を出港し、浮上と潜行を繰り返しながら航行した。米軍と自衛隊、海上保安庁は哨戒機や偵察衛星によって、帰港までの30日間余りに及ぶ行程のほとんどを追跡した、という。
政府がまとめた原潜の行動記録によると、原潜は青島を出港した後、東シナ海を南下し、10月下旬には沖縄本島と宮古島の間を通って太平洋に抜けた。そのまま南東に向かい、11月初めにグアム島近海に到達。同島に距離150キロまで接近して周囲を一周したという。
その後、原潜は北西方向に戻って再び日本近海に接近。10日に石垣島付近で日本の領海を侵犯した。その後は東シナ海を北上し、16日に姜哥荘基地に帰港した。
自衛隊は領海侵犯の数日前から対潜哨戒機P3Cなどで追跡していた。
中国の軍事当局は95年から96年にかけての台湾海峡危機の際に、米空母の介入によって軍事行動が抑え込まれた経験から、台湾東側の太平洋海域に素早く潜水艦部隊を展開する必要性を認識したとされる。日本列島から南西諸島、台湾を結ぶラインを「第1列島線」、小笠原諸島からマリアナ諸島にかけてを「第2列島線」と呼び、その間で潜水艦の自由航行に必要な海底・海水のデータ収集や航行訓練を活発に行ってきた。
しかし、日本政府関係者によると、今回のように第2列島線を越えたことは一度もなかったという。
政府関係者は「グアム島を一周するなど、今回の原潜の行動は非常に挑発的で、中国海軍の作戦準備が新たな段階に入った可能性がある」と指摘する。今後、太平洋海域で、中国と日米との間で海軍力の競合がより強まることも予想される。
一方、原潜が領海侵犯する前に、海上保安庁が中国国旗を掲げて浮上航行する潜水艦の撮影に成功していたことも明らかになった。しかし、その後、原潜は潜航。領海侵犯時は潜航したままだった。
写真撮影後に政府は海上警備行動を発令したが、潜水艦については「国籍不明」と述べるにとどめていた。潜航していたことなどから、国籍の特定には慎重を期したとみられる。<グアムの米軍基地> 中国や北朝鮮などに対応するため、米軍はグアムの軍事拠点としての位置づけを高めている。第7艦隊の前方配備の拠点として、原子力潜水艦の追加配備が検討されており、キティホークに次ぐ2隻目の空母を配備する計画もある。世界最大級の空軍給油施設を備えるグアムのアンダーセン空軍基地(第13空軍司令部)には、B52爆撃機と空中給油機が配備されているが、さらに爆撃機や新型戦闘機の配備も検討されている。 [朝日新聞 12/07 08:46]