青色発光ダイオード(LED)の発明をめぐる、発明者中村修二氏と日亜化学との訴訟が、日亜側が8億円余を支払うことで和解になりました。
青色LED訴訟 和解成立 日亜が8億4391万円支払い(毎日新聞)
裁判所の和解勧告についてはよく分かりませんが、実は先月20日に、東北大学などがより安価な方法で青色LEDをつくる技術の開発に成功しています。その直後(24日)に、日亜側が和解手続きに入ったと発表しています。このあたりが、和解に至った事情ではないでしょうか。
青色LED訴訟 和解成立 日亜が8億4391万円支払い
青色発光ダイオード(LED)の発明者、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(50)が、勤務先だった精密機器メーカー「日亜化学工業」(徳島県阿南市)に約200億円の発明対価を請求した訴訟の控訴審は11日、東京高裁(佐藤久夫裁判長)で和解が成立した。日亜側が8億4391万円を支払い、中村教授は自らが関与した特許など計195件の対価請求をしないとの内容。発明対価を巡る訴訟としては、調味料メーカー「味の素」の人工甘味料製法特許訴訟での1億5000万円を超える過去最高額で決着した。
1審の東京地裁判決(昨年1月)は、発明の対価を約604億円と認定。中村教授の請求通り200億円の支払いを命じていたが、大きく減額された。日亜の経営に多大な影響を与えないよう配慮したとみられる。
控訴審では、控訴した日亜側が「1審は中村教授の発明を過大評価している」と主張。中村教授側は「発明だけでなく製造段階でも全責任を負い、貢献は大きい」と反論していた。佐藤裁判長は昨年12月、控訴審を結審させたうえで、双方に和解を勧告し、和解交渉を重ねていた。
訴訟で争われたのは、青色LEDに関する特許のうちの一つだが、和解では中村教授の関与した特許すべてが対象となった。その対価を6億857万円とし、遅延損害金を合わせて8億4391万円の支払いで合意した。
青色LEDは電気を通すと青く光る半導体で、発明によってフルカラー表示が可能になり、携帯電話など小型液晶画面のバックライトなどに広く使用されている。市場規模は年間約3000億円とされ、2010年には1兆円に達する見込み。日亜は93年、世界で初めて商品化に成功した。【坂本高志】
中村教授は弁護士を通じ「和解額には全く納得していないが、弁護士の助言に従って勧告を受け入れることにした。問題のバトンを後続のランナーに引き継ぎ、本来の研究開発の世界に戻る」との声明を発表した。
また日亜化学工業は「当社の主張をほぼ裁判所に理解して頂けた。特に青色LED発明が1人ではなく、多くの人々の努力・工夫の賜物(たまもの)とご理解頂けた点は大きな成果と考える」とする小川英治社長のコメントを出した。[毎日新聞 1月11日17時20分更新]
↓こっちが、東北大などによる安価な青色LED開発を伝える朝日新聞の記事。
化粧原料で青色ダイオード 東北大など、低コストに道
化粧品や日焼け止めなどに使われる安価な酸化亜鉛で青色発光ダイオード(LED)を作ることに、川崎雅司・東北大金属材料研究所教授らのグループが世界で初めて成功した。窒化ガリウムを使う現行の製造法の特許を使わずにすみ、コストが安くできる可能性があるという。論文は物質科学専門誌ネイチャー・マテリアルズ電子版で20日に発表される。
酸化亜鉛は白い粉末状のありふれた産業素材。青色LEDになることは理論的に分かっていたが、質のよい結晶作りが難しかった。川崎教授らは温度を調節するなどして結晶をきれいに成長させる独自手法を開発、安定して発光する青色LEDの試作に初めて成功した。明るさなどはまだ現行製品に及ばないが、今後改良する。
青色LEDは、信号機や携帯電話の画面の光源に実用化され、需要が今後も大きく伸びると見込まれている。東京地裁は、窒化ガリウムを使う製造法を発明した中村修二・カリフォルニア大サンタバーバラ校教授に発明対価の一部200億円を支払うよう、特許を持つ当時の勤務先企業に命じ、企業側は控訴している。 [asahi.com 12/20 03:00]
そして、これがその直後に和解交渉に入ったことを報道する日経の記事。→日亜化学、東京高裁の和解勧告で手続き開始(NIKKEI NET)
日亜化学、東京高裁の和解勧告で手続き開始
発光ダイオード(LED)製造最大手の日亜化学工業(徳島県阿南市、小川英治社長)は24日、青色LEDの発明対価を巡り、開発者の中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授と争っていた控訴審で東京高裁が和解を勧告したことを受け、和解手続きに入ったと発表した。 (NIKKEINET 2004/12/24 14:12)
代替技術については、こういう記事もあります。→「先行メーカーの特許には抵触しない」、昭和電工が青色LEDの新製法 – nikkeibp.jp – エレクトロニクス
「先行メーカーの特許には抵触しない」、昭和電工が青色LEDの新製法
2004年11月27日 13時45分
2004年10月25日、昭和電工がサンプル出荷すると発表した青色LEDのベアチップに関して、同社が加熱処理を行わずに結晶をp型化していることが明らかになった。ベアチップは窒化ガリウム(GaN)系化合物を使ったもの。
GaN系青色LEDで先行する日亜化学工業はGaN単結晶をp型化するために加熱処理「熱的アニーリング処理」を行っている。昭和電工は「先行メーカーの特許には抵触しない技術」(同社)を確立し、青色LED市場に参入する。(近岡 裕)
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