米軍警備艇、漁師に銃口を向ける

今月5日、広島県江田島市の長島沖で刺網漁をしていた漁船に約10メートルの距離まで接近し、漁師に銃口を向ける、という事件が起きていたことが明らかになりました。

事件が起きたのは、米軍に提供している海域から約12キロも離れたところ。米軍海域に入った漁船を追跡していたということですが、日本側に通報せずにそんな追跡が許されていいのでしょうか? それにしても、こんな重大な事件が起きたのに、米軍に抗議するどころか、とりあえず「追尾は正当」と答えてしまうあたり、日本の外務省って、いったいどっちむいて仕事してるんでしょうねえ。

米軍警備艇:小銃で漁船を威嚇 広島・江田島沖(毎日新聞)

船長が恐怖語る 岩国米兵威嚇事件(中国新聞)

米軍警備艇:小銃で漁船を威嚇 広島・江田島沖

 広島県江田島市沖の瀬戸内海で、漁船の男性が米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属の警備艇の米兵に小銃で威嚇されたと第6管区海上保安本部(広島市)に通報していたことが14日、分かった。現場は、日米地位協定に基づき日本の艦船が入るのを制限している同基地沖の「提供水域」の東約12キロ。同本部は「米軍の警備艇が、提供水域を大幅に外れて船を威嚇するのは初めてではないか」と話している。
 調べでは、男性は今月5日午後1時半ごろから現場付近で刺し網漁をしていたが、約50分後に星条旗を掲げた警備艇が約10メートルの距離まで接近。米兵が銃口を向けた後、別の米兵に大声で船体番号を伝えて立ち去ったという。男性は「引き金を今にも引きそうで怖かった」と話しているという。
 一方、米兵は同本部の調べに「銃口は向けていない」と答えたという。
 同本部などが同基地から聴取した話によると、同日午後1時55分ごろ、提供水域内に日本漁船が入った。警備艇が追跡したが江田島市沖で見失ったため、付近の数隻に接近し、質問したという。【遠藤孝康、吉川雄策】[毎日新聞 2005年1月14日 東京夕刊]

船長が恐怖語る 岩国米兵威嚇事件

■警備艇 10メートルまで接近

 「銃口を見てパニックになった。生きた心地がしなかった」。江田島市沖の瀬戸内海で、操業中に米海兵隊岩国基地の警備艇から銃で威嚇されたという同市能美町、鹿川漁協所属の漁船船長静間久尚さん(38)。14日、現場の海を訪れ、9日前の突然の出来事の恐怖を語った。(藤原靖成)

 漁場の長島沖は、自宅裏の桟橋から沖合5キロで、船で約10分。午後1時ごろから、朝に仕掛けた刺し網を揚げていた。次の場所に移動しようとした時、1隻の船が西から近づいてきた。
 迷彩服の兵士が船首に立ち、何かを叫びながら銃口を向けていた。「何を言っているのか分からない」。両手を上げるのが精いっぱいで声も出なかった。「今にも撃ちそうに見えた。何でこんな所に銃を持った人間がいるのか」。目を疑った。
 約10メートルまで近づいた時、兵士が操舵(そうだ)室のもう1人に向かって、こちらの船体番号を英語で読み上げているのが分かった。星条旗が見え、「米軍だ」と気づいた。
 息を殺していると、船はいったん東に移動。再び引き返してきて岩国方面に去って行った。遠く離れてから、ようやく手を下ろし、携帯電話で第六管区海上保安本部に通報した。
 「わずか2、3分が、とても長く感じた」。後で海保職員から「不審船を追い掛けていたようだ」と聞き、少し前に船が1隻通ったことを思い出した。
 昨年12月中旬に市内の会社を辞め、兼業から漁業一本でやっていくと決意。この日が新年の最初の操業だった。銃口を見てから漁に出ていない。仕掛けた網もそのままなくなった。「せめて休んでいる間の補償を」。漁をいつ再開するか決めかねている。

■「米単独の追尾は問題」 専門家指摘に米側は正当性主張

 米海兵隊岩国基地の警備艇が江田島市沖の瀬戸内海で漁船の船長を威嚇したとされる問題で、岩国基地は14日、「提供水域外まで不審船を追尾したことに問題はない」との見解を示した。外務省も「追尾は正当」としているが、日米地位協定に詳しい法政大人間環境学部の本間浩教授(66)=国際法=のように「米軍だけの追尾は問題で、少なくとも日本側が関与する必要がある」と指摘する声も出ている。
 今回の追尾について、岩国基地は「提供水域内に脅威を与える不審船を海域を越えて追跡することは当然」と強調。漁船に銃口を向けていないとあらためて説明する一方、約13キロに及ぶ追尾を正当だと主張する。外務省日米地位協定室も「威嚇については事実確認中」としながら追尾自体は正当としている。
 根拠の1つは国際法で、自国の領海内で違法行為をしている船を発見した場合、領海を越えて追尾することを認めているという。今回は日本国内にある米軍基地の管理する海域からの追尾という特殊な例で、国際法にも明確な規定はないが、外務省は「提供水域の安全を保つために一定の措置を取ることを地位協定でも認めており、今回の追尾も違法性はない」と説明している。
 しかし、本間教授は基地周辺での追尾を米軍にすべて委ねるのは提供地域・水域の拡大解釈にもつながると強調。「テロ警戒で米軍は過敏になっており、今回のような問題はまた起こる恐れがある」と指摘した。
 また「米軍基地は例外的に認められた存在であり、米軍が不審船の追尾をする場合は、海上保安庁などと連携するなどの仕組みが必要だろう」と話している。
 今回の威嚇問題では、岩国基地は第六管区海上保安本部などへの通報はしておらず、船長から通報を受けた六管が岩国基地に照会して事実が判明した。六管も「違法性はないにしても、連絡はほしかった」としている。[中国新聞 2005/1/15]

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