イギリスBBCが、昨年12月におこなった世論調査で、アウシュビッツの名前を一度も聞いたことがないとの回答が45%を占め、35歳未満では60%を超えたそうです。
日本でも、僕が小さかったころは、南方から苦労して引上げてきた人の話、あるいは国内での空襲の経験を身近に聞くことができました。酷い話だけれども、「戦争中は、中国人を何人殺した」と自慢するような人もまだいたりしました。高校生の時、ある人から、中国人捕虜を軍刀で試し切りした写真を見せてもらったこともあります(その人の名誉のために言っておきますが、その人は、自慢のためではなく、そういうことがあったということを忘れてはいけないということで、普段人には見せない写真を見せてくれたのです)。
しかし、いまの子どもにとっては、そうした話は、親の、そのまた親の(あるいは、さらにその親の)世代の出来事。「そんな昔のこと」と思ったとしても不思議ではありません。それだけに、歴史をどうやって受け継いでいくのか、工夫も努力も必要だと改めて思いました。
アウシュビッツ「知らぬ」、5割近くに 英国
英国のハリー王子(20)が仮装パーティーでナチス兵士の制服を着たことが暴露され、謝罪した問題をきっかけに、ホロコースト(大虐殺)の記憶の風化を懸念する声が広がっている。ナチス・ドイツによってユダヤ人らが大量虐殺されたアウシュビッツ強制収容所(ポーランド)の解放から60年。特集番組に合わせBBC放送が行った調査では、アウシュビッツの名前も知らない英国人が5割近くにのぼった。
BBCは昨年12月、英国の16歳以上の4000人を対象にホロコーストに関する世論調査を実施。アウシュビッツの名前すら一度も聞いたことがないと答えたのが全体の45%にのぼった。35歳未満では60%を超え、若者の間でホロコーストに関する知識が乏しくなる傾向が顕著だった。
ハリー王子の行為については、ホロコーストで親族を殺された保守党のハワード党首が「(声明だけでなく)公の席で直接、謝罪すべきだ」と厳しく批判、悲劇を身近に感じている人々の心情を代弁した。ユダヤ人団体などから、王子をアウシュビッツに招待し、歴史を追体験することで反省を促そうという声もあがっている。
インディペンデント紙に対し、歴史家のアンソニー・ビーバー氏は「(王子の行為は)ばかげていて、謝罪すべきなのは確かだ。ただ、アウシュビッツを知らない人が5割という方が衝撃的だ」と語った。[asahi.com 01/15 15:04]
ナチスの影 揺れる欧州
■アウシュビッツ『知らない』45% 英国
【ロンドン=沢田敬介】英国のヘンリー王子のナチス・ドイツ軍服仮装問題は、英国内でも第二次世界大戦の記憶が風化している事実を浮き彫りにした。
ユダヤ人強制収容所解放60周年のドキュメンタリー番組を11日に放送した英BBC放送が昨年12月行った世論調査(16歳以上の4000人を対象)によると、半数近い45%が「アウシュビッツという言葉を聞いたことがない」と回答。35歳以下では60%に達した。
「聞いたことはある」とした中でも70%が「よく知らない」と答え、なぜナチスが強制収容所を設けたかに至っては76%が「意識したことがない」と回答した。[東京新聞 2005/01/16]
初めまして。書込み有難うございました。
ヘンリー王子の一件には呆れ果てる一方で、悪気が在ってやった事ではなく、歴史に余りにも無知過ぎるが故の行為だったのだろうなあと。そして、その後に報じられたBBCのアンケート結果で、ヘンリー王子と同じ様に歴史に無知である人が少なくないのだと改めて痛感させられました。もしかしたら、戦勝国であるイギリスには、敗戦国で起こった事、それも自国民が被害にあっている訳ではないアウシュビッツの悪夢は、それ程迄に気に留め置く出来事ではないのだろうかとすらも思いました。
しかし、同じ様なアンケートを日本でやった場合にも、歴史認識の薄さが出る様な気もし、必ずしも戦勝国だから敗戦国だからという観点では片付けられない話なのかもしれません。
第二次大戦中の話ですが、当時の日本の新聞に、中国大陸で日本兵が(中国人の)斬首数を競っているという話が載ったそうです。競っている軍人の名前を具体的に挙げ、物凄い数の斬首数を書き連ね、戦意高揚に利用したという事でした。この為、敗戦を迎えて当該軍人は戦犯として処刑されたという事です。
しかし、近年の調査によると、どうやら斬首合戦なるものが本当に行なわれていたかに付いては、かなり疑わしい部分が在り(その論証を自分も読みましたが、確かに実際にそういう事が在ったと断定するには厳しい気がしました。)、戦意高揚の為にでっち上げられた可能性が高いという事でした。
戦争という異常な環境下故、様々な非人道的な行為は行なわれていたと思います。斬首合戦はなかったにしても、斬首したという行為がなかったと考えるのは現実的ではない気がします。南京大虐殺と呼ばれる出来事も、中国が主張するとてつもない犠牲者数は事実かどうかかなり疑わしい部分が在るでしょう。「白髪三千丈」ではないですが、大袈裟に誇張されているとも思えます。しかし、様々な資料や証言を見聞すれば、中国が主張する程の数ではないにせよ、かなりの人が虐殺されたのは事実ではないかと考えます。
事実を矮小化する事も、自虐的に誇大化する事もなく、冷静に事実を見極める必要性を感じます。とは言え、何処に事実を見出すかというのが一番難しい部分では在るのですが・・・。
これからも宜しく御願い致します。
P.S. 高校時代、日本史を選択していましたが、戦中&戦後史は実にさらっと触れられただけでした。世界史でも同様だった様です。最近の入試では、この時代が扱われる事が多いという事で、以前よりは教えられている様ですが、それでも余り具体的な部分には及ばないそうです。教えられるだけではなく、個々人が自身で色々学ぶという態度も必要だとは思いますが、過ちから学ぶという意味でも、それなりに具体性を持って教える必要が有るのではないでしょうか。
ピンバック: ふうてんの猫の猫耳東風的MBA生活
近現代の悲劇はナチスと日本だけが作ったとは思っていません。
たとえば、共産国においては1億から2億の人が共産政権によって虐殺されていますし、ポルポト政権下では中世ヨーロッパを思わせる拷問器具で人が殺されたとも言われています。
(ソ連、中国だけでそれぞれ6000万人以上が殺されているはずです)
日本の悪行を語り継げば世界が平和になるのであればかまいませんが、そんなことをしてもチェンチェンにもチベットにも平和は来ないだろうと思います。
世界史も平和も、日本の大戦という一点ではなく、大戦後の世界情勢や、南側も交えた地球視野でものを見て立体的に捉えるようにしなければ、今世紀をより平和な世紀にすることはできないだろうと思います。
>giant-55さんへ
私は、戦争の被害について、もっと中国やアジア諸国の人々の主張に耳を傾けることが大事だと思います。
>ふうてんの猫さんへ
日本とナチスだけが悪かったとは私は思っていません。しかし、日本が日本の侵略戦争の与えた被害や結果について学ばないとしたら、いったい誰がそれを取り上げるのでしょう?