朝日新聞、NHK松尾元放送総局長記者会見に反論

NHK特集番組改変問題で、続報。

1つめは、一昨日のNHK側がおこなった記者会見にたいする朝日新聞側の反論。

番組改変問題 NHKの会見に対する朝日新聞社の反論(朝日新聞)

もう1つは、今朝の東京新聞の社説。“言ったか言わなかったか”の水掛け論でなく、問題の焦点がどこにあるかを指摘しています。

社説:番組改変問題 放送の自律性はどこへ(東京新聞)

番組改変問題 NHKの会見に対する朝日新聞社の反論

 朝日新聞社は2人の記者が松尾武氏に会い、克明に取材した結果を正確に報じました。松尾氏が19日の記者会見で具体的に挙げた見解の異なる件について、取材内容に基づいて個々に反論します。
 詳細は、以下の通りです。
 (1)松尾氏は記者会見で「安倍氏とは会ったが、中川氏については記憶が定かではない」と取材に答えたとしています。
 本紙の取材時は、松尾氏は放送前日の1月29日のことについて、「中川さんが先で安倍さんの順ではないか。もう1人、途中でどなたかにお会いして車で移動した」と同じ日に中川昭一、安倍晋三両氏に相次いで面会したことに言及しました。そのうえで、記者が「国会議員に会ったのはそのときだけか?」と確認の問いかけをすると「それ1回きり」と答えていました。
 (2)松尾氏は記者会見で、同氏が議員会館に中川氏を訪ねたことを18日付け朝刊記事がかぎかっこなしで決めつけていると主張し、記事中の「途中、どなたかにお会いしてから、自民党本部だったか、ちょっと広い応接室で安倍氏に会った」という本人の発言について、「中川氏かどうか記憶が定かでないだれかに会ってから」という意味で答えたとしています。
 本紙の取材時は、中川氏との面会について、(1)の通り、具体的に言及していました。
 (3)松尾氏は記者会見で、放送前の番組をめぐって国会議員と面会することについて、本紙が同氏の発言として「大河(ドラマ)とかではあるけど、今回のような(教養)特集的要素のものにはない」と報じたことに対し、「政治的圧力を感じたという文脈の中でそうした発言をしたことはなく、するはずもない」と述べました。
 本紙の取材時は、「放送前に国会議員に呼ばれることは?」との質問に対し、「だいたい作ったあとです」と答えました。さらに記者が、「放送前は異例か」と確認すると、上記のように、「大河(ドラマ)とかではあるけど、今回のような(教養)特集的要素のものにはない」と話しました。
 (4)松尾氏は記者会見で、本紙の取材に対し「繰り返し『政治的圧力は感じていません』と答えた」と述べています。
 本紙の取材時に、「圧力は全く感じていない」と松尾氏が話した事実はありません。逆に、「圧力とは感じますよ」と明言しています。そのうえで、「圧力とは感じるが、それは一つの意見だったと聞く耳はもつ」などと語っています。
 (5)松尾氏は記者会見で、「もし呼ばれて行かないとどうなるか?」という本紙記者の質問について、「誘導尋問的な質問でした。正確に覚えていないが、そもそも自民党に呼ばれたという発言はしていないので、そのような仮説、仮定の話になるはずもない」と答えています。
 本紙の取材時は、「3、4倍の圧力」とした上で、「放送中止になったかもしれない」と、仮定の話として放送中止の可能性まで言及しました。
 (6)松尾氏は記者会見で「中川氏の話しぶりについては、『注意しろ、見ているぞ、示唆を与えられたと幹部は受け取った』とされているが、私はこのような発言をしていない。記者に中川氏と面会したか記憶が定かでないと言っているのに、こうした答え方をするはずがない」と答えました。
 本紙の取材時は、中川氏の言葉について松尾氏は「明確に一つひとつ記憶にない」と言いながらも、「全体の雰囲気として、注意しろ、見ているぞという示唆を与えられた」と表現していました。
 (7)松尾氏は記者会見で、議員との面談を「圧力」と感じたと書いた本紙記事について、「故意に(私の)意図を変えて書かれている」「記事の中で、『議員ら』とあるが、私は政治家のことを言ったのではない」と述べています。
 本紙の取材時は、(4)にもあるように、「今回呼ばれたことも圧力と感じたわけですね」との質問に対し、「圧力とは感じますよ」と答えています。さらに、中川、安倍両氏に会ったときの印象を話している最中には、「ただの脅しと思ったか」との質問に対し、「ただの脅しだとは思ったけれど緊張感が出てきた」と答えています。
 (8)松尾氏は記者会見で、「いかにも政治的圧力を受けて私たちの作業が混乱したかのような印象を与えているが、私の発言は、NHKが考える公正、公平、中立に向けて、番組の直前の最後の最後まで、私を含めて真剣に考えて編集作業を続けたことを説明したのであって、やはり発言の趣旨をねじ曲げた記事にされている」と述べました。
 番組改変の経緯は、松尾氏への取材のみに基づいて報じたものではありません。(asahi.com 01/20 00:33)

社説:番組改変問題 放送の自律性はどこへ

 放送前の番組について特定政治家にあらかじめ説明することを「当然」とするNHKの見解には驚かされる。報道機関は、公正であるだけでなく、公正さを疑われないようにしなければならない。
 編集中の放送番組の内容について“政治的介入”があったように最初に報じた朝日新聞と、放送したNHK、介入を疑われた安倍晋三・自民党幹事長代理、中川昭一・経産相らの言い分が大きく違う。真相は究明しなければならないが、報道内容の核心を否定する政治家側と二人三脚のように見えるNHKの対応は、奇異に感じられる。
 ただ、NHK幹部が安倍氏に呼びつけられたのか、それとも自発的に訪ねたのか、中川氏が会ったのが放送前か後かは本質的問題ではない。問われているのはNHKと政治家との距離、関係である。
 番組の素材である「女性国際戦犯法廷」は歴史観や客観性に関する批判が各方面からあった。公正な番組をつくるためNHK内部でチェックしたり議論するのは当然である。
 しかし、放送前、あるいは番組作成中に一部有力政治家に説明したり了解を求めたりするのは内部の議論とはまったく次元が異なる。「放送の自律性」「報道の中立、公正」といった報道機関としての生命線を危うくするものだ。
 報道関係者なら政治家への説明を当然とする姿勢にはとうてい共感できないだろう。NHKは番組の改変は圧力によるものではなく自主的判断によるというが、李下(りか)に冠を正したようなもので、疑う方がむしろ自然といえよう。
 自戒すべきは政治家も同じだ。予算承認の権限を握っている政治家の発言は、たとえ「公正、中立に」という単純な言葉であっても重い政治的響きを持つ。事後の批判ならともかく、放送前の番組に口を挟むのは慎むべきなのである。
 NHK会長を務めた故島桂次氏は著書の中で自民党からの影響力行使がしばしばあったことを認め、放送内容に配慮した経験を記している。
 いまでもNHKには国会担当の職員が複数いて日常的に政治家と接触しているという。そうした関係の中で有形、無形の圧力、介入はなかったのか、放送内容がゆがめられたことはなかったか、第三者機関をつくって洗い直し、公表すべきだ。
 いうまでもないが番組改変問題と一連の不祥事とは直接は関係ない。仮に改変問題を切り抜けても、不祥事に関する海老沢勝二会長はじめ執行部の責任はいささかも軽減されないことを指摘しておきたい。[東京新聞 2005/01/21]

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