景気と個人消費の問題に関して、新聞論調をあれこれ調べてみました。
中国新聞社説「賃上げの行方 景気持続のカギ握る」(05/2/08)
厚生労働省によると、景気が上向いた昨年でも常用労働者の月間現金給与額は前年比0.7%減の33万2,485円。4年連続して減った。こんな調子では、個人消費が活気づくはずがない。
今は比較的、手元に余裕のある高齢世帯の支出増などもあって個人消費が景気の失速を食い止めているともいわれる。だが「年金不安」など将来を見通せば、心理的にも縮こまる人が増える可能性がある。支出増がいつまで続くか、楽観はできまい。
加えて家庭への公的負担が数年来、格段に重くのしかかっている。その総額は7兆円との試算もある。また定率減税の廃止、消費税問題など家計を冷え込ませる大きな案件が控えている。
公共事業に偏らず、民間の力で景気を軌道に乗せる。これを実現させるには、個人消費の役割についての再考が欠かせまい。国内総生産(GDP)に占める割合が6割近いことだけでなく、刺激のタイミングを含めて議論する必要がある。
日銀は昨年末、「雇用・所得情勢にみる日本経済の現状」を発表した。その中で、名目GDPや企業収益に比べて雇用者所得の動きは弱く、労働分配率は大幅に低下していると分析。その背景について、経済のグローバル化に対応した企業の収益力の強化、非正規雇用拡大の流れなどを挙げている。
一方で景気回復が続いているにもかかわらず、消費者物価が上昇に転じない点についても言及。労働生産性の上昇に比べて賃金が抑制されているためと分析している。「脱デフレ」を掲げる日銀にとっては、悩ましい現象に違いない。
経済が安定成長するのは、企業と家計の所得がバランスよく増える時である。日銀は「その意味で、所得増加の裏付けがはっきりしない間は、個人消費の下方リスクもある程度念頭に置かざるをえない」と指摘。雇用者所得が、どのようなタイミングとペースで回復していくかを注目したいという。経営側にボールが投げかけられているように思う。
南日本新聞社説「【GDP減速】消費の喚起で景気腰折れ防ぐ対応を」(05/2/18)
リストラの一巡で雇用不安は薄らいだものの、企業の賃金抑制姿勢は変わらず04年は定期給与の平均が前年比0.7%減の月約33万円にとどまっている。4年連続で前年を下回っていることも関係しているのだろう。
さらに、年金保険料の引き上げや定率減税の縮小などで可処分所得の減少が予想され、消費者が今後も買い控えに走るのではという懸念も残る。
今回のマイナス成長について小泉純一郎首相は「基本的に緩やかな回復局面にある」との認識を示し、竹中平蔵経財相も05年半ばに景気が再浮上するというシナリオに「変化がない」と強気の構えを崩していない。
しかし、今後の景気がバラ色の青写真通りにいくかどうかは予断を許さない。個人消費の先細りや情報技術関連の生産調整など克服すべきハードルは高い。