セゾングループの元会長の堤清二氏ら親族が、偽装されたコクドの株は本当は堤家のものだとして、株の所有権確認を求める訴えを起こしました。
名義の偽装は不正行為だけれども、だからといって、名義人=本来の所有者としてしまうと、堤義明氏による株偽装事件の全貌が分からなくなってしまいます。いったいどれだけの株が、実際には堤家の財産とされていたのかをまず確定したうえで、それをどう解決するかを考えてほしいと思います。
コクド株の持ち分確認求め、堤清二氏も提訴
西武鉄道グループの中核会社「コクド」の株について、グループを創業した堤康次郎氏の二男で、セゾン文化財団理事長の堤清二氏(77)と親族2人が、「株主の多くは名義借りで自分たちが相続したもの」として、コクド幹部ら27人が名義人になっている同社株計217株分について、持ち分の確認を求める訴訟を東京地裁に起こしていたことが分かった。
清二氏側は、「財産的利益を求めるのではなく、名義借りの真実にフタをしてグループ再編を進めるやり方に一石を投じたい」としている。
清二氏は、堤義明容疑者の異母兄で、「辻井喬」のペンネームで詩人、作家としても知られている。コクド株を巡っては2月、堤容疑者の実弟で五男の猶二氏(63)が同様の訴えを起こしており、コクドを分割して西武鉄道などと合併させるグループ経営改革委員会の再編案が滞る恐れもある。[2005/3/5/03:08 読売新聞]
堤容疑者の資産 100億円もない?
西武鉄道株をめぐる証券取引法違反事件で、前コクド会長堤義明容疑者(70)の逮捕から一夜明けた4日、東京地検特捜部の本格的な取り調べが始まった。西武鉄道グループの再建を目指す経営改革委員会も開催。コクド、堤容疑者の資産の全容解明がどれだけ進むか注目されるが、識者からは、かつて3兆円と言われた堤容疑者に残される資産について「100億円もないのでは」との見方も出ている。
海外メディアが「地球一の億万長者の逮捕」と伝えた堤容疑者の資産。87?90年の世界長者番付で1位に格付けした米フォーブス誌は、当時約3兆円と試算している。
これは西武グループが所有する不動産や株の評価額がほとんど。グループは西武鉄道や81のホテルを運営するプリンスホテル、西武ライオンズなど国内外135社で構成。堤容疑者がこれを一括管理するコクドを支配していたことから、はじきだされた数字だ。
この資産に改革委が次々とメスを入れている。まず、コクドは2つに分割され、堤容疑者は西武鉄道やプリンスホテルが合併して誕生する新コクドから排除され、新コクド保有の西武グループ資産をすべて失う。さらに、ほかの多くの資産も税金逃れのため、個人名義ではなく会社名義にしていたとされ、これらも手元に残らない。自宅としていた東京都港区西麻布の邸宅の実態はコクド名義の“社宅”であり、奪われる可能性が高い。
個人名義の資産は神奈川・大磯の自宅など、わずかな土地だけ。残される資産額を経営評論家の梶原一明氏は「100億円にもならないだろう。彼にとってはスッテンテンの状態」と分析する。3兆円からすると、300分の1だが、それでも100億円は一般庶民には想像もできない巨額。億万長者であることに変わりはない。
約5億円といわれる年収も西武グループの給与などであることから今後はゼロ。これからの生活について梶原氏は「わずかに残される個人名義の株も、清算させられる可能性が高い。家族名義の株の切り売りと経営改革委が残すと言っている多少の資産で暮らしていくのだろう」と話す。
経営改革委は「コクドの資産の解明も進まない状態。堤容疑者に残す資産の話などまだまだ先」としている。世界的大富豪に残される資産はいくらか。偽装の皮をどれだけはがすことができるかにかかっているとも言えそうだ。[スポニチアネックス 2005/03/05]
コクド株問題:不明朗取引03年3月末まで多発
コクドの役職員が持ち株会を通じて同社株を購入した際、いったん支払った購入代金が、すぐに払い戻される不明朗な株取引が03年3月末まで多発していたことが、7日開かれた西武グループ経営改革委員会で報告された。こうした株式の事実上の無料分配システムは、グループオーナーの堤氏一族の方針に逆らわない役職員に株を割り当て、一族のグループ支配を強化する役割を果たしていた可能性が強い。
持ち株会は「国友会」と呼ばれ、03年4月に「社員持ち株会」が分離して役員の持ち株会になった際に、このシステムは廃止された。導入された時期は不明だが、1920年に箱根土地(現コクド)を創業した堤康次郎氏の時代から続いていたという。
会見した諸井虔委員長(太平洋セメント相談役)らによると、コクドの株式担当者らが株の購入者を直接指名。指名された役職員は、いったん購入代金(1株につき100円)を売り主である定年退職した役職員に支払い、この元役職員がその金を国友会に返金。その後、国友会側から買い主が返金を受けていた。株式の配当は、株の購入者が受け取っていた。こうした複雑なやりとりにコクドの株式担当者が関与していたという。
改革委は、西武グループの持ち株会社化などを含め、グループの資本構造の再編を検討しているが、再編には株式の実質所有者の特定が不可欠。同委顧問の川合弘造弁護士は「所有者が不明な株があるということを念頭に入れて再編プランを作らなければならない」と話しており、今回発覚した不明朗な株取引が今後の経営改革計画策定に影響を与えそうだ。【吉田慎一】
[毎日新聞 2005年1月7日 20時56分]
西武株問題:個人名義偽装、堤氏の父の代から
西武鉄道株のグループ企業による虚偽記載問題で、親会社「コクド」の堤義明前会長の側近が、多数の個人名義に偽装された西武鉄道株について「すべて堤氏のもので、堤家で相続すると認識していた」と証券取引等監視委員会の調べなどに証言していることが分かった。名義がすべて堤前会長の場合、ばく大な相続税がかかる。名義の偽装は創業者の父親が始めており、2代にわたる相続税対策だった可能性が強まった。
西武鉄道株は1212人分、計約1億800万株が個人名義。うち大半が架空名義だったことが発覚している。
関係者によると、西武鉄道株は当初、グループ創業者で堤前会長の父親、康次郎氏が保有していたが、相続税対策のため1957年ごろ、個人名義に分散した。64年に康次郎氏が死去し、個人名義株はそのまま堤前会長に引き継がれたという。
こうした株は元従業員らの名義を使い、大量の印鑑とともにコクド総務部で管理されていた。側近らは監視委などに「株は康次郎氏の代から堤家の財産として受け継がれてきたもので、堤家で今後も保有されると認識していた」と証言している。個人名義株への株式配当はコクドの収入として税務申告されていた。
一方、コクド株は、昨年9月時点で36%保有する堤前会長以外の持ち株比率が、役員持ち株会の「国友会」11%、従業員持ち株会32%などとなっているが、その後、役員や社員が支払った株の購入代金がコクドから返却されていたことが判明。西武鉄道株と同様に、名義偽装が行われていた疑いが浮上している。側近らは「堤氏の持ち株は、実際にはもっと多い」と証言している。
コクド株の一部は康次郎氏が創立した学校法人にいったん生前寄付され、康次郎氏の死後に堤前会長が買い戻す複雑な手続きが取られた。学校法人は寄付を受けても非課税となることを利用した相続税対策とみられる。
堤前会長の弟2人は「個人名義でコクドが管理していた西武鉄道株と、所有権がはっきりしないコクド株は堤家の遺産だ」と主張している。
名義偽装について堤前会長は昨年10月の記者会見で「株式実務にはノータッチだった」と釈明していた。[毎日新聞 2005年2月12日 3時00分]