企業の手許には余剰資金、銀行は貸出し減少

今日の「朝日新聞」によれば、企業部門の資金余剰は年間50兆円を超えたそうです。他方で、「日経新聞」は、民間銀行の平均貸出残高は86カ月(7年余)連続のマイナスになったと報じています。

資金余剰、50兆円超す 法人企業統計調査(朝日新聞)

銀行貸し出し、86カ月連続で減少(日経新聞)

もはや、家計部門の余剰資金を銀行が集め、企業部門に貸し出すという、かつての構図はすっかり壊れてしまいました。逆に、企業は、リストラで人件費を切りつめ、莫大な利益を上げて、せっせと銀行に借金を返済。銀行は貸出先がなく、儲けるところがない。家計部門は、リストラのあおりを食って、赤字に…。その結果、景気がよくなる見通しがないので、企業は余剰資金を抱えていても、投資先がない…。こんな“三すくみ”状態になってしまっているということです。

この“三すくみ”を逆転させるためにも、企業部門がため込んだ莫大な資金余剰を人件費として解放させて、まず国民の消費生活を温めることが必要です。そうすれば、景気が上向き、企業にとっても新しい投資先が生まれるし、銀行にとっても融資先ができることにもなるのではないでしょうか。

資金余剰、50兆円超す 法人企業統計調査(朝日新聞)

 7日発表された04年10?12月期の法人企業統計調査は、経常利益、設備投資(ソフトウエア除く)が前期比ではともに減少に転じ、景気を先導してきた企業部門の停滞を示す結果となった。14日発表の国内総生産(GDP)2次速報が1次速報から下方修正されるとの見方も出ている。その一方で、設備投資の絞り込みなどで生まれた企業部門の資金余剰は年間50兆円を超え、いずれ前向きな設備投資などに向かい、景気を押し上げるとの期待もある。
 今回の調査で、全産業の売上高は前期比0.8%増と増収を維持したが、経常利益は同2.4%減と7四半期ぶりの減益となった。「原油などの素材価格の高騰で売上高はふくらんでも利益は伸びない状況。経常利益は頭打ちになっている」(大和総研の牧野潤一シニアエコノミスト)との見方もある。
 今回の結果を受け、2月の1次速報時点で前期比0.1%減だった10?12月期の実質成長率が、2次速報時点で下方修正されると予測する民間調査機関も目立つ。三菱総合研究所は同0.3%減に、みずほ総研と大和総研は同0.2%減への下方修正を予測。野村証券や第一生命経済研究所は輸入の下方修正などで相殺されて修正なしと見込んだ。
 一方、今回の調査では、企業部門の資金余剰が目立った。明治安田生命保険の推計によると、内部留保などから設備投資などの資金を出してなお残った「資金余剰」の金額は、04年10?12月期に52兆2000億円(直近4四半期の合計額)にのぼる。
 90年代末のデフレの深刻化、金融システム不安に直面して、設備投資を抑制して借り入れ返済に充てる姿勢を強め、98年4?6月期以降、資金余剰に転じ、徐々に増えてきた。
 「余剰な資金は現預金として積み上がり始めており、前向きな設備投資に向かう」(みずほ総研の丸山義正シニアエコノミスト)との期待が高まる。給与などとして従業員に回れば、個人消費を下支えする可能性もある。
 ただ、50兆円余の資金余剰の内訳をみると、景気を牽引(けんいん)してきた製造業は8兆1000億円にとどまり、非製造業が44兆1000億円、全体の84%を占める。規模別では、景況感の回復が遅れている中堅中小企業、業種別ではサービス業、卸売り・小売業、不動産業などの寄与が大きい。
 非製造業の余剰資金増加を99年1?3月期以降で分析すると、営業利益の増加によるものは約4分の1。そのほかは設備投資を減価償却以下に抑えることで生じたり、低金利や有利子負債削減による利払いの減少などで資金が余った。
 分析にあたった明治安田生命の小玉祐一氏は「金利低下や債務削減も限界に来ており、そろそろ資金余剰は縮小に向かってもおかしくない」とも指摘する。50兆円余りの資金が動き出すかどうかが、今後の景気を占うポイントの一つになりそうだ。
[asahi.com 2005/03/08]

銀行貸し出し、86カ月連続で減少(日経新聞)

 日銀が8日発表した2月の貸出・資金吸収動向によると、都市銀行や地方銀行など民間銀行の平均貸出残高は前年同月比3.0%減の383兆1524億円と86カ月連続のマイナスとなった。日銀では「貸し出しのマイナス幅は徐々に縮まっているものの、資金需要が大きく広がっている状況にはない」と分析している。
 都銀は5.1%減で102カ月連続のマイナス、地方銀行は1.2%増と5カ月連続のプラス、第二地方銀行は4.9%減と8カ月連続のマイナスだった。
 地銀の貸し出しが5カ月連続で伸びていることについて、日銀では「地元での貸し出しが伸びないので、都市部の大手企業向けシンジケートローン(協調融資)などに力を入れている」と見ている。〔NQN〕(NIKKEI NET 2005/03/08 09:36)

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