盧武鉉大統領が、米軍の柔軟性戦略にたいして、「われわれの意志と関係なく、韓国国民が北東アジア紛争に巻き込まれることはない」と表明。これが「いかなる場合でも譲歩できない確固たる原則」だと指摘しました。
米軍の「柔軟性戦略」というのは、東アジア地域で紛争が生じた時に在韓米軍を投入するというもの。中台間や北朝鮮がらみの紛争に在韓米軍が投入されれば、当然、中国や北朝鮮の在韓米軍基地への反撃が予想される。だから、盧武鉉大統領の発言は、近隣地域について在韓米軍の投入反対を意味しています。
日本が、台湾海峡への関与を表明したのとは、まったく逆の動き。さて、どちらが自国の安全を保障することになるでしょうか?
盧大統領、米軍の機動軍化に事実上反対
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は8日、在韓米軍を有事の際、北東アジアの他地域に投入するいわゆる「戦略的柔軟性」問題に関して、「明らかなことは、我々の意思と無関係に、我が国民が北東アジアの紛争に巻き込まれることはないということであり、これはいかなる場合にも譲歩できない確固たる原則だ」と述べた。
盧大統領は、忠清北道清原郡(チュンチョンプクト・チョンウォングン)の空軍士官学校練兵場で開かれた第53期空士卒業及び任官式に出席して演説し、「最近一部で、在韓米軍の役割拡大をめぐり、さまざまな憂慮の声が聞かれる。いわゆる戦略的柔軟性に関する問題だ」と述べ、このように発言した。
盧大統領の言及は、在韓米軍削減とあいまって、米国が要求している在韓米軍の戦略的柔軟性に異議を提起するものであり、今後これに関する米国側との交渉が注目される。盧大統領は、これまで同問題について、留保的な態度をとってきた。
これと関連して、政府のある関係者は、「国家と民族の運命に直結する北東アジアの地域紛争への在韓米軍の介入は、韓国の意思と無関係に行なわれないという点を明らかにした『ドクトリン』の性格を帯びている」と説明した。
一方、盧大統領は、「韓国軍は今後10年以内に、自ら作戦権を持つ自主軍隊に発展する」として、「戦時作戦権の還収に備えて、独自の作戦企画能力も確保していかなければならない」と述べ、現在米軍が有している戦時作戦権の還収問題を正面から取り上げた。
盧大統領は、03年の8・15光復節(クァンボクチョル・独立記念日)記念式典以来、「10年以内に自主国防の基礎をつくる」と述べてきた。今回の発言は、自主国防計画が、作戦権還収まで念頭に置いていることを明らかにしたものだ。
盧大統領はまた、「韓国軍は、韓半島だけでなく、北東アジアの平和と繁栄を守ることを目標にしており、北東アジアの『勢力均衡者』として同地域の平和をしっかりと守る」とし、「韓米同盟の土台の上で、周辺国との緊密な協力をさらに強化し、これと並行して自主国防の力量を備えなければならない」と述べた。東亜日報 MARCH 08, 2005 22:28
by 金正勳 ( jnghn@donga.com)
盧大統領、在韓米軍の東アジア機動軍化に反対表明
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は8日、空軍士官学校第53期卒業および任官式に出席し、在韓米軍を北東アジアの機動軍に切り替えるという米国側の方針に関連し、「はっきりしているのは、われわれの意志とは関係なく、韓国国民が北東アジアの紛争に巻き込まれることはないということ」と述べた。
盧大統領は「これはいかなる場合でも譲歩できない確固たる原則として守り抜くだろう」と述べた。
大統領府のある高官は、 盧大統領の発言について「ドクトリン的な性格が強い」とし、「今後、韓米協議を経て文書化する方策を講じるだろう」と述べた。また、政府は在韓米軍の海外移転の際、韓国側の“事前同意”を義務付ける案も推進している。
韓米両国は今年2月3日にソウルで開かれた韓米安保政策構想(SPI)会議で、この問題に対する協議に着手し、出来る限り早期に結論を出すことにしている。
韓国側は在韓米軍兵力の一部がイラクなど、国家安保戦略に影響が少ない地域に派遣されるのは同意できるが、中国・台湾紛争のような東アジア地域情勢に決定的な影響を及ぼす問題には介入できないという立場だ。
しかし、米国側は在韓米軍に対し、こうした制限を設けることに否定的な考えを持っている。また、韓国が要求している在韓米軍の海外移動の際、事前同意を得ることにも否定的だ。
同日、盧大統領の発言は、韓米間における争点について韓国側の立場を明確に示したものと解釈される。辛貞録(シン・ジョンロク)記者 jrshin.chosun.com
[朝鮮日報 記事入力:2005/03/08 19:55]
ところで「朝鮮日報」は、盧武鉉大統領のかかげた原則は「理解できる」が、それを公表したのは「承伏しかねる」という論説を掲載しています。韓国メディアではどうも評判が悪いみたいですが、それは、1つには「朝鮮日報」にしても「東亜日報」にしても「中央日報」にしても、大手メディアが「保守系」だということによるものだと思います。むしろ、「保守系」メディアであっても、盧武鉉ドクトリンそのものについては反対できない、ということに注目すべきでしょう。
「盧武鉉ドクトリン」以降の韓国と米国
盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は北東アジアの他の地域紛争の際、在韓米軍の一部を現地に投入する可能性があるという米国の戦略的柔軟性方針に対し、「はっきりしていることはわれわれの意志と関係なく、韓国国民が北東アジア紛争に巻き込まれることはないということで、これはいかなる場合でも譲歩できない確固たる原則」と述べた。
例えば、中国と台湾の間で紛争が発生した場合、在韓米軍の一部兵力が投入されることによって韓国が紛争の巻き添えになってはならないという意味だ。
大統領の今回の発言は在韓米軍の性格、韓米同盟の性格、韓米同盟の形式と内容、ひいては北東アジアと世界政治において米国とのパートナー関係に長期的な変化をもたらす「戦略的」選択だ。
大統領の発言を通じた韓国のこうした戦略的選択の対角にはアジア太平洋地域の米軍を機動軍化したいという米国の戦略的選択があり、この米国の選択は韓国の選択と関係なく進められるだろう。
従って、両立できない両国の戦略的選択によって、結局米国は、自らの国益追求の足かせにならないよう韓米同盟の枠組みを切り替えるだろう。その最初の措置は、在韓米軍の一部を北東アジアの他地域への再配置することをもって具現化するだろうと容易に推測できる。
米国はまた、長期的に韓中日が協力と競争で微妙に絡み合っている北東アジア安保構想で韓国の役割を再検討するだろう。米国はこれまで、韓国が有している安保的重要性を考慮し、国際社会で間接・直接に韓国を支援してきた。
こうした有形・無形の支援もいかなる形であれ、変化を強いられることが明らかになった。韓国は今後こうした変化を経験しながら、米国の支援が韓国にどういう意味を持っていたかを肌で感じるだろう。
同盟国の国益が常に一致するわけにはいかないため、場合によって各国は国家の存立と繁栄という観点から重大な戦略を選択することもある。
したがって、大統領の今回の宣言が、韓国の長短期の国益と北朝鮮問題、ひいては南北統一に至る道で米国および周辺国といかなる関係を持つかに対する冷静な検討ときめ細かい研究の末、行われたものであれば、韓国は大統領のこの宣言を支える準備をするしかない。
もちろん、これには膨大な予算が必要になるだろう。それだけでなく、米国との関係変化は連鎖的に日本との関係変化を誘発し、しかも韓中日の3か国関係にも微妙な変化をもたらすだろう。
大統領府の関係者は今回の大統領の発言を盧武鉉ドクトリンと説明している。盧大統領は「戦時作戦権回収に備え、独自の作戦企画能力を確保しなければならない。10年以内に自ら作戦権を持つ自主軍隊に発展させていく」とし、今回の発言が自主国防という大きな枠組みのなかで行われたことを示唆した。
盧大統領は以前にも同様な発言をしている。だとすれば、盧大統領の今回の発言は単なる発言ではない、「ドクトリン」と呼ぶに値する外交政策構想であることがわかる。
とはいえ、盧大統領が現時点で、こうした形式でこの問題に釘を刺すことが賢明な政策的選択かどうかについて異論の余地はある。
同盟国間の立場が食い違い、どちらにも肩入れできない場合は曖昧な状態のまま放置することも外交の方策だ。今のところ、北東アジアの紛争が実際に発生し、韓米の立場のズレが鮮明になることは、現実に発生しにくい一つの可能性に過ぎないためだ。
「われわれの意志とは関係なく、韓国国民が北東アジアの地域紛争に巻き込まれてはならない」という盧大統領の原則的立場は理解できるが、大統領がその立場をこうした形で公開的に明らかにしたことについて承服しかねるのはそのためだ。[朝鮮日報 記事入力 : 2005/03/09 20:27]