2次系配管からの熱水漏れ事故で11人の死傷者を出した関西電力美浜原発の事故について、経済産業相原子力安全・保安院の最終報告書の案の内容が明らかにされました。
「日経新聞」は、「終報告書案は『リスト漏れは本質的な問題ではなく、関電の保守管理体制、品質保証体制が機能せず、安全文化が浸透していなかったことが核心』と結論づけ、関電の企業体質を厳しく批判した」と指摘しています。
美浜原発事故、保守体制機能せず・保安院が最終報告書案(日経新聞)
美浜原発事故、保守体制機能せず・保安院が最終報告書案
11人の死傷者を出した関西電力美浜原子力発電所3号機の蒸気噴出事故で、経済産業省の原子力安全・保安院は12日、最終報告書案をまとめた。関電の保守点検や品質保証の体制に問題があったことが主因とする内容で、14日に福井市で開く事故調査委員会(朝田泰英委員長)に提出する。
美浜3号機事故で破裂した配管は、厚みが内側から薄くなりやすい場所にもかかわらず、検査対象リストから漏れていたことが問題視された。しかし、最終報告書案は「リスト漏れは本質的な問題ではなく、関電の保守管理体制、品質保証体制が機能せず、安全文化が浸透していなかったことが核心」と結論づけ、関電の企業体質を厳しく批判した。
原発は修繕や改造によって配管などの構造が変化するが、関電は保守管理業務に反映しなかった。報告書案は「安全第一とする関電の経営方針とは裏腹に、現場の第一線では定期点検の工程厳守を優先する意識が強かった」と指摘。「経営陣と現場の認識の乖離(かいり)が、長年にわたって是正されなかった」と、関電に企業風土を変えるように求めた。[NIKKEI NET 2005/03/13 07:00]
美浜原発の11人死傷事故、下請けに責任なし…保安院(読売新聞)
美浜原発の11人死傷事故、下請けに責任なし…保安院
関西電力美浜原子力発電所3号機(福井県美浜町)の配管が破断し、11人が死傷した蒸気噴出事故で、経済産業省原子力安全・保安院は12日、事故の原因は関電と三菱重工のずさんな配管管理であり、下請けの「日本アーム」(本社・大阪市)に責任はないと断定した。
保安院は当初、3社に責任があるとみていたが、その後の調査で日本アームは関電の指示通りに管理していただけとわかった。これで関電と三菱重工の責任は一層重くなる。
三菱重工は美浜3号機を製造。配管管理業務も請け負い、1990年に点検リストを作った。日本アームは関電の子会社で、1996年に三菱重工から管理業務を引き継いだ。
破断したのは、水流の乱れで配管の厚みが薄くなる「減肉」が起きやすい危険個所。だが、点検リストから漏れていたため、76年の運転開始以来一度も厚み測定が行われていなかった。
この経緯をめぐっては、事故後、3社の主張が食い違い、保安院は昨年9月の中間報告書で「事故原因は関電、三菱重工、日本アームの3社が関与する配管の管理ミス」としていた。
しかし、その後の調査で、日本アームは関電の指示に従って作業を進めていたに過ぎなかったことが判明した。
日本アームは2003年4月に事故で破断した個所がリストから漏れているのを見つけた。
ところが、関電との取り決めでは未点検個所を見つけた場合は次々回の定期検査で点検することになっていたため、発見直後の定期検査では点検せず、昨年8月14日からの定期検査で点検する計画を立てた。配管はその5日前に破断した。
関電は事故後、「日本アームがリスト漏れに気づきながら放置したのが問題」と批判していた。だが、保安院では、関電は原子炉設置者として点検リストを絶えず見直す責任があるのに、三菱重工が作成したリストをうのみにしたうえ、点検業務を日本アームに丸投げし、リスト漏れの有無を自ら確認していなかったと判断した。
三菱重工は、事故前に北海道電力の泊原発1号機や日本原子力発電敦賀原発2号機の同一個所でリスト漏れを見つけながら、関電にも日本アームにも知らせていなかったとしている。
保安院は、14日に福井市で開く事故調査委員会に提出する報告書案にこうした事実を盛り込み、30日に最終報告書をまとめる。◆美浜原発3号機事故=2004年8月9日、関電美浜原発3号機の2次系配管が破断、熱水が噴き出し、作業員5人が死亡、6人が重軽傷を負った。福井県警も業務上過失致死傷容疑で捜査している。[2005/3/13 03:04 読売新聞]
美浜事故報告書案の要旨
美浜原発事故調査委員会の最終報告書案の要旨は次の通り。
【事故状況と対応】略
【技術的検討】略
【配管の肉厚管理に関する検討】略
【登録漏れが起きた経緯】
関西電力は配管の管理指針を策定するにあたり、(破損した個所を含め同様の構造の)配管を追加したが、点検計画をつくる際には、この指針に従うよう三菱重工業に明確に要求しなかった。このため当初から登録漏れがあったのに関電、三菱重工業ともに漏れを明確には意識していなかった。
【登録漏れが見逃され続けた経緯】
一、保守管理には外注が不可欠だが、外注の結果発生した責任が一義的には事業者にあることの自覚が関電には不足していた。
一、関電は、三菱重工業や日本アームに現場の実情を十分反映していない配管図から点検個所を抽出させ、点検対象のリストや点検計画を作成させた。関電は点検リストの確認をしたが、配管図まではチェックしなかった。
【不適切な管理の常態化】
一、関電は、配管の肉厚が技術基準を下回っていることが判明しても、(交換作業によって)発電所の運転再開が遅れる恐れがあることから補修を先送りするなど、技術基準不適合が常態化していた時期があった。
一、安全第一という方針と裏腹に、関電の現場の第一線では検査工程を優先する意識が強く、経営層と現場の認識の乖離(かいり)が長年にわたり是正されずにいた。
【事故の教訓】
一、関電における保守管理体制、品質保証体制が機能せず、安全文化が浸透しない状況で、長年にわたって当初の点検対象登録漏れが放置されてしまったことが事故の核心。
一、関電は事業者として、運転履歴を踏まえた適切な保守管理を行っていなかった。
[中国新聞 First upload: 3月13日2時7分]
案の定、というか行政の責任には触れずじまいですね。
ひたすら主語は「関電は…」であって、それを指導監督する立場にあるはずの原子力安全保安院の責任はどうなっているのでしょうか。もっとも報告書は保安院がまとめたものなのですが、ここまで自己批判というか、反省がないのは大いに問題だと思います。