米国産牛肉輸入再開問題(続報)

米国産牛肉の輸入再開問題ですが、政治的な動きはともかく、安全基準の問題として、どこらあたりに問題があるのかは、「毎日新聞」20日付の記事がわかりやすく紹介していると思います。

1つは、アメリカは生後30カ月以上の牛しか特定危険部位の除去をしてないらしいこと。

第2に、アメリカはBSE検査を生後30カ月以上(あるいはEUの場合は24カ月以上)しか行っていないが、日本の全頭検査によって、それ以前の牛(生後21カ月、23カ月)からも発見されていること。

そういうアメリカの検査基準があって、それとは別立てにして、日本への輸出についてのみ、枝肉を「目視」して年齢判定をやる――なんていうことが、はたして可能かどうか。考えてみれば分かりそうなものです。

日米牛肉協議:食の安全、日本譲らず ライス・町村会談(毎日新聞)

日米牛肉協議:食の安全、日本譲らず ライス・町村会談

 米国産牛肉の輸入再開問題をめぐるライス米国務長官と町村信孝外相との会談は19日、平行線をたどった。国際基準による早期解決を迫り80年代の経済摩擦に逆戻りすることに警鐘を鳴らす米側に対し、日本側は輸入再開に向けた環境整備に努力する姿勢を示しながらも「食の安全」の原則は譲らなかった。双方とも対立点こそ決定的にしなかったが、輸入再開問題は良好な日米関係に火種を残すことになった。【高塚保、ワシントン木村旬】

 町村外相「食の安全は日本人にとって重要だ。輸入再開の時期は明示できないが、早期解決に向けて取り組みたい」
 ライス長官「米国内の生産者も議会も安全だと信じている。この点に関しては国際的な基準が設けられている」

 1時間35分に及んだ日米外相会談は15分間が米国産牛肉の輸入再開問題に費やされたが、双方の主張は平行線だった。

◇国際基準への見解に相違

 ライス長官は80年代の日米貿易摩擦を引き合いに出しながら「日本に対する制裁を論ずる人々がいる。単に貿易というだけでなく、日米関係に対して悪影響をもたらしつつある」と指摘。町村外相は「日米間で大きな問題にならないよう注意していきたい」と理解を求めたが、「牛肉問題のために日米関係を傷つけることがないようにしてほしい。結果が必要だ」と追い討ちをかけた。
 外相会談のやり取りについて、外務省幹部は「米側がありとあらゆる言い方で現状への不満を表明した形」と分析。「ガス抜きになった」(政府筋)との見方があるが、ライス長官を「手ぶら」で帰す形になり、米国内の対日強硬論が高まるのは必至だ。政府が抱える「日米同盟」と「食の安全」の両立というジレンマがさらに深まることも想定される。
 日本の禁輸措置に対し、米議会や畜産業界から不満が噴出し制裁論にまで発展しているのは、昨年10月の日米政府間協議で「輸入再開の大枠で合意した」と、米側が受け止めていたためだ。ブッシュ大統領が小泉純一郎首相との電話会談で直接、早期打開を迫った背景には、「早期に解決されないと、ブッシュ政権の重要政策に波及しかねない」(米議会筋)という懸念もある。
 大統領は公的年金改革を掲げ、年内の法案成立を目指しているが、株などの運用で年金を蓄える改革案には民主党が「リスクが大きい」と反対、共和党にも慎重論がある。しかも、年金改革を審議する上院財政委員会のグラスリー委員長(共和党)は、畜産が盛んなアイオワ州出身だけに、ホワイトハウスは神経をとがらせている。強硬派のアラード上院議員(共和党)は、ライス長官訪日前、長官に「禁輸が続けば、経済制裁に発展する可能性を日本に伝えてほしい」と求めていた。

◇輸入再開、9月ごろか

 米国産牛肉の輸入再開時期は9月ごろが有力視されているが、輸入再開条件を審議する内閣府・食品安全委員会次第で冬以降にずれ込む可能性もある。
 輸入再開には、BSE(牛海綿状脳症)の国内検査基準(現在は全頭検査)を「生後20カ月以下の牛の検査除外」に緩和する必要がある。政府の諮問(昨年10月)以来、食品安全委プリオン専門調査会での審議が長期化していたが、今月28日の同委プリオン専門調査会で国内基準緩和の答申案が固まる見通しとなり、4月末にも答申が出される見通し。
 これを受けて、政府は輸入再開手続きに入るが、輸入条件を確定し、5月末にも「輸入条件に基づく米国牛肉の安全性」を食品安全委に諮問する。審議が順調に進めば、答申案の公表・意見募集後の9月ごろに輸入再開の運びとなる。ただ、輸入条件には「肉質による牛の月齢判別法」など専門家でも判断が難しい項目があり、審議長期化の可能性もある。
 食品安全委は国家行政組織法第8条に基づいて03年7月に設置された、いわゆる「8条委員会」で、証券取引等監視委員会と同様に高い独立性が保証されている。日米外相会談でも、町村外相はライス長官に「担当大臣でも(食品安全委に)介入できない」と説明し、理解を求めた。ただ、輸入問題は、食品安全委への諮問が必ずしも必要なく、政府は答申案に対する意見募集の期間短縮なども含め早期再開の道を探っている。
 ライス長官が日米外相会談で「米国は満たしている」と主張した国際基準は、国際獣疫事務局(OIE、日米など約170カ国加盟)が定めている基準だ。OIEは、異常プリオンが蓄積しやすい牛の特定危険部位(脳や脊髄(せきずい)など)の除去を第一に掲げ、併せて発生状況を確認するためのモニタリング検査などを求めている。各国の発生状況などで、必要な検査頭数は異なる。
 米国では03年12月にBSE感染牛が初めて確認され、生後30カ月以上の牛の特定危険部位の除去と、歩行困難牛などを対象とした検査頭数を倍増(年間約4万頭)する対策を導入し、OIEの基準を満たした。
 しかし、OIEの基準は国際貿易を考慮した最低限の基準で、科学的に正当な理由があれば、各国がより高い措置を取ることができる。欧州連合(EU)は生後24?30カ月以上の牛で全頭検査を実施している。日本もBSE感染牛が確認された01年秋以降は全頭検査を導入した。厚生労働省は当初、EU同様に生後30カ月以上を検査対象と決めたが、国民の不安解消のために全頭検査に踏み切った。その結果、生後21カ月と23カ月の若い牛を含めBSE感染牛が15頭確認された。【江口一】
[毎日新聞 2005年3月20日 1時12分]

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