読売新聞が4月8日付で、憲法にかんする世論調査を報道。
見出しでは「憲法改正『賛成』 2年連続6割超す」と謳っていますが、よく読むと、改正賛成は、昨年の65%から61%に4ポイント減っているのです。反対に、「改正しない方がよい」は23%から27%に4ポイント増です。
中身をさらに詳しく見てみると、憲法9条について今後どうすればよいかの問いには、「改正する」43.6%で、これも昨年より1ポイント減。これに対し、「これまで通り、解釈や運用で対応する」が27.6%(昨年比1ポイント増)、「9条を厳密に守る」が18.1%で、「改正必要なし」という意見は合わせて45.7%になり、「改正する」を上回っています(改正必要なし派が改正派を上回るというのは、去年も同じ)。
読売新聞は、「政界での改正論議が活発化する中…国民レベルでも時代の変化に対応した新たな憲法を求める意識が定着した」「9条改正への国民の理解が深まった」と書いていますが、両項目は、いずれも去年より減っています。とても「定着した」「理解が深まった」とは言えません。むしろ、改憲の正体を見抜きつつある――あるいは、そういったら言い過ぎというなら、改憲論の胡散臭さを感じつつある、ということではないでしょうか。
【憲法9条について、今後、どうすればよいと思うか】
これまで通り、解釈や運用で対応する | 27.6% |
9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない | 18.1% |
解釈や運用で対応するのは限界なので、9条を改正する | 43.6% |
また、集団的自衛権については「憲法改正や憲法解釈の変更によって、使える用意すべきだ」は30.5%しかなく、「これまで通り、使えなくてよい」32.3%が上回っています。
【集団的自衛権について、あなたの考えに近いものは】
憲法改正や憲法解釈の変更によって、集団的自衛権を使えるようにすべきだ | 30.5% |
これまで通り、集団的自衛権は使えなくてよい | 32.3% |
どちらとも言えない | 33.9% |
さらに、「日本の憲法で、どんな理念や考え方を強調するのが望ましいか」という問いに、一番多いのは「平和の大切さ」67.9%。ということで、全体として、改憲派が力こぶを入れてきた割には、9条改憲して自衛隊が海外で武力行使できるようにしようという意見は支持されてない、ということです。とくに、「集団的自衛権は使えるようにすべき」という意見が3割にとどまっているのは、注目に値します。
また、「今の憲法の中で、『公共の利益』と『個人の権利』の関係をどう感じているか?」との問いには、「公共の利益を重視しすぎている」45.0%、「調和がとれている」20.9%に対し、「個人の権利を重視しすぎている」は17.1%。
自民党などは、しきりに「個人の権利が尊重されすぎている。もっと、公共の利益を尊重するようにすべきだ」と主張していますが、そういう主張は、ほとんどまったく支持されていない、ということです。この点でも、改憲派の目論見の破綻ぶりが明らかになったと言えます。
【今の憲法の中で、「公共の利益」と「個人の権利」の関係をどのように感じているか】
公共の利益を重視しすぎている | 45.0% |
個人の権利を重視しすぎている | 17.1% |
両方の調和がとれている | 20.9% |
憲法改正「賛成」2年連続6割超す 読売世論調査
読売新聞社が実施した「憲法」に関する全国世論調査(面接方式)で、改正賛成派が61%に上り、昨年(65%)に続いて6割を超えた。
1981年の同調査開始以来、2番目に高い水準で、政界での改正論議が活発化する中、戦後60年を経て国民レベルでも時代の変化に対応した新たな憲法を求める意識が定着したといえそうだ。
調査は3月12、13の両日に実施。改正賛成派はすべての年代で多数を占め、自民、民主、公明の各党支持層では6割を超えた。特に民主支持層は67%と同支持層では過去最高で、自民支持層64%を上回った。共産、社民両党支持層でも賛成派は約4割に上った。
改正に賛成する理由は、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じている」が51%と最も多かった。
改正反対派は、昨年比4ポイント増の27%だった。
憲法改正の最大の焦点である9条については、「改正」44%(昨年比1ポイント減)が最多で、「これまで通り解釈や運用で対応」は28%(同1ポイント増)、「厳密に守り、解釈・運用で対応しない」は18%(同2ポイント減)。9条改正賛成派はこの質問を始めた2002年以来、4年連続多数派となり、9条改正への国民の理解が深まったといえる。
一方、憲法で関心のある項目では、「戦争放棄、自衛隊」47%が1位だった。2位は「天皇や皇室」の27%。女性天皇をめぐる皇位継承論議の高まりなどを背景に、過去最高を記録した。3位は「プライバシーの保護」26%だった。
実際に条文を改めたり、新たな条文を加えたりする方がよいと思う項目では、「個人情報やプライバシーの保護」32%がトップ。企業の顧客情報の大量流出など、個人情報の管理に対する不安が広がっていることが影響したようだ。以下、「自衛のための軍隊保持」29%、「天皇の地位やあり方」25%が続いた。
憲法で強調した方が望ましい理念、考え方では、「平和の大切さ」68%が圧倒的な支持を集めた。[2005/4/7 22:44 読売新聞]
それから、読売の世論調査は、「今の条文を改正したり、新たな条文をつけ加えたりする方がよいと思うものは?」という質問をしていますが、これに「自衛のための軍隊保持」を選んだのはわずか28.5%。これも注目すべき数字かも知れません。「9条を今後どうすればよいか」に「改正する」と答えた割合43.6%にくらべると、かなりのギャップがあります。この差は、政府のあいまいな解釈や運用を制限するために「9条を改正すべき」と考えている人がいることを示しているのではないでしょうか? 少なくとも、9条「改正する」43.6%という数字が、水増しされた数字である可能性は十分あると思います。
もはや言った者勝ちの世界ですね。
「新たな憲法を求める意識が定着した」
「常任理事国入りは日本の悲願」
「強制連行、従軍慰安婦、南京虐殺はフィクション」
いずれも根拠が乏しいにも関わらず、言われつづけることによって「市民権」を獲得してきた言い方です。大きな新聞やテレビ局が繰り返してこういう事を言いつづけていれば、何も知らない人にとってはそれが真実のように思われてしまうようで、恐ろしく思います。
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