面白そうな本を見つけたと言った三戸祐子さんの『定刻発車』ですが、さっそく読み終わりました。
JR東日本の在来線の90.3%が「1分違わず」正確に発着しており、1列車あたりの遅れは平均0.8分という日本の鉄道の正確さ。それが当たり前になっているから、3分でも遅れようなら、乗客はイライラし始める…。
こんな“日常”がどうして誕生したか? 著者は江戸時代にまで遡って文化的背景を探るとともに、技術的側面に光を当てて、そうした「正確な運行」がどうして生み出されてきたかを明らかにしています。面白いと思ったのは、日本の鉄道が正確に発着するのは、乏しい施設・車両で、たくさんの乗客をさばかなければならなかったという日本の鉄道の“後進性”にあるという指摘です。
ということで、普段“当たり前のこと”として見過ごしているようなことに背景に、実は、膨大な蓄積やらシステムがあることをみせてくれるので、とても面白く読めます。ただし、いかに正確に運行されているか、ということの解明に力点が置かれているので、当然のことながら、JR宝塚線の脱線事故のような事態がなぜ生まれたのか、というトラブル発生の側面は、ほとんどまったくといっていいほど触れられていません。その意味で、JRは素晴らしいという話で終わっているのが、勿体ないという感じです。