毎日新聞が、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の話として、「空気バネが異常な振幅をくり返し、脱線を誘発した可能性が高い」と報道。
ようやく、ハード面での問題が指摘され始めました。空気バネの問題は、地下鉄日比谷線脱線事故の時も指摘されたのではなかったでしょうか。そのあたりの検証も望みたいですね。
尼崎脱線事故:空気バネ、異常振幅 脱線を誘発の可能性(毎日新聞)
尼崎脱線事故:空気バネ、異常振幅 脱線を誘発の可能性
兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、事故を起こした快速電車は、車体の揺れを制御する空気バネが異常な振幅を繰り返し、脱線を誘発した可能性が高いことが、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調べで分かった。右カーブに高速で進入した際、車両のバランスが崩れるのを増幅したとみられる。非常ブレーキ作動前に運転士が常用ブレーキを強めにかけていたことも判明。2度にわたる急ブレーキが車体を不安定にし、横転しやすい状況につながったとみられている。
脱線した207系型車両は「ボルスタレス」方式と呼ばれる、台車に取り付けた左右一対の空気バネの上に車体が載っている。電車の車輪は通常、レール内側を左右の車輪のフランジ(つば)が微妙に当たりながら軌道に沿って走る「蛇行動(だこうどう)」を取って進む。空気バネは、車体に蛇行動などに伴うがたつきが伝わるのを緩和するため付けられている。
事故調のこれまでの調べで、脱線した快速電車は制限速度70キロを大きく超える時速100キロ以上(回収したモニター制御装置の記録では同108キロ)で現場の右カーブに進入したことが分かっている。その際には、同70キロの場合の2?3倍の遠心力がかかるが、事故調は、スピード超過による遠心力だけでは脱線までには至らないと判断。バネの振幅が影響した可能性が強まった。
「蛇行動」は低速でも起きるが、高速になるに従って激しくなり、バネの振幅も増加する。このため、通常はスピードを落として蛇行動を収めてからカーブに進入する。事故調は、今回の事故について、振り子運動のように車体全体の揺れを助長する力が加わり、横転しやすい状況を作ったとの見方を強めている。
専門家の見解では、右カーブの場合、カーブに入って左側に遠心力がかかるタイミングと、空気バネで車体が左に揺れるタイミングが合うと、脱線の危険性が増すという。乗客の証言では「カーブに入る前に、普段より大きい横揺れが起き、どんどん大きくなって脱線した」といい、事故調はカーブ前の電車の速度がポイントと見て、電車から回収した「モニター制御装置」などを解析し、速度の確定を急ぐ。
また1、2両目のバネは破損していたため、事故調は、JR西日本や車両メーカーから設計資料を取り寄せるなどして、快速電車の空気バネの性能について調べている。
一方、非常ブレーキが作動する前に、高見隆二郎運転士(死亡)が常用ブレーキを強めにかけていたことが事故調の調べで分かった。それでもカーブ進入に耐えうる速度に減速できなかったため、非常ブレーキを作動させた疑いが出てきた。
左側レール上部には、電車が衝突したマンション手前約58メートルにある最初の脱線痕付近まで、約60メートルにわたって細かい傷が付着。通常は車輪が接触しない部分で、片輪走行した際の傷とみられる。【川辺康広、田中謙吉、坂口雄亮】
[毎日新聞 2005年5月5日 3時00分]