JR宝塚線快速電車はなぜ横転脱線したか?

今のところ、車両や軌道に不備はなかったとされています。しかし、他に原因がなかったとすると、制限速度70kmのR300のカーブを100km超で走っただけで横転するような車両を走らせていた訳で、それ自体、重大問題でしょう。

カーブ手前、車体傾く 事故調「強い遠心力」 脱線事故(朝日新聞)

他方、中日新聞は、研究者の意見として、脱線前に異常な横振動が起こっていたのでは、と指摘しています。

横振動の痕跡か/JRの脱線車両、車輪表面に摩耗の照り(中日新聞)

空気バネの不安定さを含め、徹底した解明を望みます。

カーブ手前、車体傾く 事故調「強い遠心力」 脱線事故

 兵庫県尼崎市のJR宝塚線(福知山線)の脱線事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は6日、車体がカーブの外側に異常に持ち上がったことを示す傷が、事故車両の1?4両目で見つかったことを明らかにした。高速走行による遠心力の大きさを示すとみられ、調査委は、カーブが急になる手前の「緩和曲線」付近で、すでに車体が大きく左に傾き、その後、台車もひきずられ、右側の車輪が浮き上がった可能性が高いとみている。
 会見した事故調委員の宮本昌幸・明星大教授(車両工学)によると、車体と台車をつなぎ、振動を抑える「ストッパー」と呼ばれる部品に不自然にこすれた跡があった。カーブの外側に激しく動いたことを示しているといい、車体が異常に左上方に動いたために跡がついたとみられるという。このため、調査委は、まず車体部分が浮き、さらにストッパーの下にある台車が引きずられて浮き上がったとの見方を強めている。
 宮本委員は「車体が傾いたところに遠心力がかかれば、車体と台車をつなぐ空気バネがたわみ、台車が引っ張り上げられることが考えられる」と説明した。
 「緩和曲線」はカーブへの出入り口部分に、直線となめらかにつなげるために設けられている。事故現場の半径300メートルの比較的急なカーブの前に約60メートルの緩和曲線がある。しかし、電車が高速走行している場合には、緩やかなカーブの入り口付近でもかなりの遠心力を受けるという。調査委と兵庫県警の調べによると、快速電車は直線部分を時速120キロで走り、カーブ付近でも制限速度(70キロ)を大幅に上回る108キロで走っていたとされる。
 カーブ部分のレールや線路の状態には、脱線の要因につながるような目立った不具合は見つかっていない。調査委は、カーブの入り口付近を通過した際に、すでに遠心力が働き、まず車体が左上方に浮いたのではないかと見ている。
[asahi.com 2005年05月07日03時10分]

横振動の痕跡か/JRの脱線車両、車輪表面に摩耗の照り

 兵庫県尼崎市のJR脱線事故は、快速電車の先頭部分が転倒する直前に車体に激しい横方向の振動が断続的に起こり、脱線につながった可能性があることが7日、共同通信が入手したビデオ映像や写真から判明した。
 1両目に残された乗客の救出作業が続いていた事故2日後の4月27日午後、関係者が撮影した。快速電車の先頭車両がマンションの地下駐車場の奥深くまで突っ込んでいる様子や、横倒しになってマンションの壁にへばりつくように折れ曲がっている二両目内部の様子などが間近から撮影されており、衝突の激しさがうかがえる。
 専門家が注目したのは、破損した2両目の映像。車両前方にある「第1台車」がはっきりと判別できる形で映し出されており、車輪の表面や台車付近の損傷状況などを詳しく分析することができた。
 新潟大の谷藤克也教授(鉄道工学)によると、第1台車の第1、第2輪軸では、ともに進行方向右側の車輪のフランジ(ツメ部分)から外縁部にかけて、金属同士が激しく摩耗することで生じる「照り」があった。左車輪はゆがむなど大きく損傷していた。
 同教授は「ところどころに帯状の照りがあり、車輪表面が不均一。通常の走行では見られない状態で、車輪の回転に異常があった」と解析。転倒直前、車体に激しい横方向の振動が起こった可能性があると指摘した。
 さらに「脱線の主な要因は(100キロを超えていた)現場カーブへの進入速度」とした上で「車体が転倒した要因は遠心力だけとはいえない。車両全体の振動も要因になったのでは」との見方を示した。非常ブレーキによるロックした痕跡は車輪には見られないという。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は6日、先頭車両の第1台車の写真を公開。「現段階では、脱線を引き起こす異常な振動の痕跡はみられない」としているが、脱線した快速電車に乗り合わせた複数の乗客が「脱線前の大きな横揺れ」を証言している。
 2両目の車輪も進行方向右側は円形を保っていたが、左車輪はゆがんでいた。
[中日新聞 2005年5月7日付夕刊]

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