前に、テレビで出ていた話として書いたこと(207系17号はブレーキの効きが甘い?)ですが、共同通信が、JR宝塚線で脱線した車両について複数の現役運転士が「ブレーキの効きが甘い」と証言していると報じています。
「体質論」みたいなことばかりやっていると、こういう基本が曖昧にされてしまいます。電車が転覆・脱線するには、それなりの技術的な理由・原因があるはず。それをきちんと追及しなければ、ほんと、ただ罵声を浴びせて終わり、お詫びしたら終わり、ということになりかねません。
脱線車両「ブレーキ甘い」 複数の現役運転士証言(共同通信)
兵庫県尼崎市のJR福知山線で脱線した快速電車について、同線で乗務する複数の現役運転士が14日までに、「同僚の間でブレーキの利きが甘い車両として知られていた」などと証言した。
死亡した高見隆二郎運転士(23)は事故の前、川西池田駅と伊丹駅で相次いでオーバーラン。何度も非常ブレーキをかけるなど不自然な運転をしていたことが既に判明しており、尼崎東署捜査本部は、車両の特性と事故の関連についても調べを進めている。
運転士らによると、電車は同じ型式であっても、個々の車両にはブレーキの利き方や加速の具合にそれぞれ特有の“くせ”がある。スムーズな運転のためには、その把握が不可欠という。[共同通信 2005年5月14日18時14分]
ところで、事故電車に乗り合わせていながら、現場で救助活動などせずそのまま出勤した2人の運転士の「手記」なるものが発表されました。しかし率直に言って、「私が悪うございました」と平謝りするだけで、会社から何も指示がなかった、あるいは出社するように言われた問題にはまったく触れていません。意地悪く言えば、「会社は悪くない、悪いのは社員です」というアリバイのために、会社に書かされたような文章。
その場にいあわせたとき、とっさにどうしたらよいか。それは、事故直後に駆けつけた多くの周辺住民の方が、当たり前のように、解決した問題。車両の中で閉じ込められた人でさえ、他の乗客を励ましたり、頼まれて電話をかけたり、みんな「なすべきことをした」のです。にもかかわらず、2人は、出勤することを選んだ訳で、なぜそんなふうな考え方をしてしまったか。それは、こんな簡単な文章で片づけられるような問題ではないと思うのですが…。
今回の事故は、事故発生に絡んでいろいろと考えさせられる問題が多くある事故ではないかと思います。
その組織が掲げる価値を、組織のメンバーがどう内面化(して行動にあらわせるように)できるか、も問題の一つです。
GAKUさんのいわれる「なすべきこと」をする(できる)ことが、「その組織の掲げる価値」と相容れないようなら、そのような組織は困った存在です。
個人の資質は大きいでしょうけれども、それだけに帰すことはできないような気がします。