日本海新聞の社説

憲法問題での新聞各紙の社説・論説を拾ってゆきたいと思います。

1回目は、日本海新聞の社説(5/16付)。「鳥取でも憲法論議を」と呼びかける入り口に、鳥取県内での「九条の会」の動きが取り上げられています。憲法問題については両睨みで書かれた部分もありますが、焦点の憲法9条にかんしては、「米国のように『先制攻撃権がある』と主張している国との同盟強化につながることには、慎重でありたい」と明言していることに注目。

日本海新聞:社説 鳥取でも憲法論議を(5/16付)

社説  「鳥取でも憲法論議を」 ――国民投票法案は個別方式で

 衆院憲法調査会(中山太郎会長)が先月15日、改憲の方向を示す最終報告書を議決し、憲法論議は新たな段階に入っている。与党自民党は11月にも憲法改正草案を発表する。こうした流れに対し、鳥取県内でも全国的な動きに呼応して護憲派が今年2月、境港九条の会を結成し、5月中には鳥取県九条の会(仮称)も発足する予定だ。県民一人一人は憲法問題をどうとらえたらいいのか、論点を整理してみたい。

権力側に守る義務

 第1点は、日本国憲法を守る義務があるのは誰かということ。戦後の1947年に発効した日本国憲法は主権在民、基本的人権の尊重、平和主義の3つを基本原則とし、国民から負託されて権力を行使する人たちに憲法を守る義務があるとされている。
 憲法第3章「国民の権利及び義務」を読むと、条文の中に「権利」が16カ所、「自由」が8カ所出てくるのに対し、「義務」は勤労と納税、子どもに普通教育を受けさせる義務の3カ所となっている。
 しかし、「戦後、日本の社会の各方面において、権利の裏にある義務に対する認識が非常に希薄になり、国家、社会、家族・家庭への責任や義務が軽視され、権利主張のみが横行して他者の権利を侵害し、あるいは社会の混乱を引き起こすという弊害が生じている」(衆院憲法調査会最終報告書)として、国防や環境保全、投票など国民の義務規定を増やすべきとの意見も一部にある。

海外派兵の歯止め

 2点目は、自衛権や自衛隊について憲法九条に明記することの是非。9条1項の「戦争の放棄」を変えようとの議論は出ていない。一方、2項の「戦力不保持」と「国の交戦権の否認」については意見が分かれている。
 日本は戦後、憲法制定後に米国の要求で自衛隊をつくり、日米安保条約に基づき増強してきた。今では国民の多数が自衛隊の存在を認め、イラクなど海外にも派遣された。こうした現実を踏まえて、自衛隊(軍)の保有を憲法に明記して「国の交戦権の否認」を削除しようとの意見もある。
 これに対して、九条の会などは「9条が集団的自衛権(同盟国が攻撃されたときに出動できる)の行使の歯止めになってきた」として9条の堅持を訴えている。
 集団的自衛権の行使について衆院憲法調査会では、これを認めるべきとする意見、認めるが行使に限度を設けるべきとする意見、認めるべきでないとする意見に三分された。
 集団的自衛権は、攻撃を受けた国に対する一時的な措置として国連憲章上認められている。しかし、米国のように「先制攻撃権がある」と主張している国との同盟強化につながることには、慎重でありたい。
 3点目は、新しい人権を憲法に明記すべきかどうか。環境権やプライバシー権など憲法制定当時には想定されていなかった権利がその後認められるようになったとして、それを憲法に明記することが国民の人権保障に有益だとの意見がある。
 これに対して憲法学会などから「新しい人権は、包括基本権を定めた憲法13条(幸福追求権)に含まれる」との指摘もある。新しい人権の憲法明記について、護憲派からは「九条改悪の劇薬を国民に飲ませやすくするもの」との批判も上がっている。
 憲法論議は県民の間でまだ関心が低いが、憲法は国民の暮らしとかかわりがあり、国の将来を左右する。憲法の条文を読んだり、機会があれば憲法の学習会に参加してみてはどうだろう。
 国会が憲法改正を発議すれば、国民投票となる。国民投票法案が注目されるが、改憲案の賛否を一括して投票する方式ではなく、条文ごとに個別に投票する方式で民意が尊重されるようにしたい。[日本海新聞 2005/05/16]

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