4月に各小委員会がまとめた要綱をもとに、条文化の作業をすすめる自民党新憲法起草委員会をめぐるニュース。
自民憲法起草委 「森試案」条文化を断念(中日新聞5/20付)
自民憲法起草委 「森試案」条文化を断念
自民党新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は19日、11月に発表する予定の新憲法草案のたたき台となる「森委員長試案」の条文化を断念した。起草委幹部が明らかにした。同委員会は、条文化した試案の代わりに項目別に見解をまとめた「起草委要綱」を来月中にとりまとめ、草案づくりのたたき台とする。
起草委は当初、4月末に条文形式の試案を発表する方針で作業を進めていた。
しかし、「前文」「天皇」「安全保障」などで調整が難航。18日に開かれた民間有識者を交えた諮問会議では、党がまとめた「集団的自衛権は明記しなくても権利として有している」との結論に異論が相次ぐなど、集約のめどはたっていない。このため現段階で条文化した試案をまとめ上げるのは不可能と判断した。
起草委は「起草委要綱」を、事実上の「森委員長試案」と位置づけており、11月の憲法草案づくりの作業には影響は及ばないと受け止めている。
ただ、条文形式のたたき台なしで条文化した新憲法草案をつくることで、全体の構成、各条の具体的表現などで調整が難航する可能性がある。[中日新聞 2005/05/20朝刊]
「象徴天皇制」は維持 自民憲法起草委
自民党新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は18日、民間有識者らを含めた諮問会議の初会合を開き、新憲法草案策定に向けた議論を行った。天皇制については、天皇を元首とすることに否定的な意見が相次ぎ、起草委の要綱では「象徴天皇制」とする方針で一致した。
天皇制については、4月に起草委の各小委員会がまとめた要綱で、「元首と明記すべきだ」との少数意見を盛り込んでいた。しかし、起草委要綱では、少数意見は削除し、象徴制の堅持で一本化することになった。
自衛のための「軍」保持の方針を打ち出していることについては、「軍のイメージがよくない」「国を守るとか、国際協力をするということを書けばいい」と反対意見が多く出た。集団的自衛権に関しては、「いろいろな議論があるので、憲法に書いてはっきりさせた方がいい」と明記を求める意見が出た。
起草委は今後、2、3回、諮問会議を開いた後、6月中に起草委要綱を策定。その後、11月15日の立党50周年を機に条文化した新憲法草案を発表する。[東京新聞 2005/05/19朝刊]
なお、朝日の記事によれば、「集団的自衛権」明記を求める意見を出したのは、日本経団連、日本商工会議所の代表らしい。
天皇の元首化は見送り 自民新憲法起草委
自民党新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)は18日、有識者や財界人らでつくる「諮問会議」の初会合を党本部で開き、安全保障など10小委員会の各要綱をもとに議論した。集団的自衛権では憲法に明記するかどうか意見が分かれ、天皇は元首と明記しない方向となった。
4月にまとめた要綱で条文化せずに政府の憲法解釈の変更で認めるとした集団的自衛権の行使について、日本経団連、日本商工会議所の代表はこの日の会合で「国民の間に論争があるので明記したほうがすっきりする」と主張。岡崎久彦元駐タイ大使は「自衛のためと書くだけでいい」と、政府解釈で行使を容認すべきだとの考えを示した。
要綱で「明記すべきだとの意見もあった」と付記された天皇の元首化については、天皇小委員長の宮沢喜一元首相が「今さら元首と呼ぶのはそぐわないという意見があった」との小委の議論を紹介。作家の三浦朱門元文化庁長官が「元首という言葉は時代遅れになっている」と発言したほか、慎重論が相次ぎ、見送られる方向になった。
諮問会議は委員の意見を採り入れ、起草委試案をまとめる。同委幹部は会合後、「6月中に試案をまとめ、7月から条文化に入りたい」との見通しを示した。6月から全国10ブロックでタウンミーティングを開き、国民から意見を聴くことも決めた。[asahi.com 2005年05月18日19時03分]
私は憲法の改正はあってもいいと考えています。しかし、それは一般論としての話です。今のように、第9条を否定する方向での改正には反対です。
天皇元首化にも反対です。賛成できる理由を考えることができません。
報道記事を読むと、自民党の憲法改正案に元首化は盛り込まれないとのこと。一瞬、安心した気持ちになったのですが、こんな感覚自体、「流れ」に乗ってしまっている証拠でしょうか。
渋谷さん、こんばんは。
天皇元首化を見送ったのは、焦点の9条改憲に全勢力を集中するためではないでしょうか。残念ながら、安心している場合ではないのかも知れません。
私も一般論としては、憲法を絶対改正してはいかんという理由はないと思っています。でも、9条改憲は、そんな一般論ではすまない大問題です。