子どもの脳死判定の難しさ

定義から言えば、半年後に自発呼吸の兆候が見られたのだから、脳死ではなかったということ。脳死でなかったものを、脳死と判定したとすれば、判定基準に問題あり、ということになります。

「脳死状態」診断の小児、半年後自発呼吸の例も(朝日新聞)

「脳死状態」診断の小児、半年後自発呼吸の例も

 国内の小児救急の医療現場で、主治医が臨床的に脳死状態と診断した後も、1カ月以上心臓が動き続けた子どもの「長期脳死」の事例を、杉本健郎・日本小児神経学会理事が20日の同学会で発表した。医療現場で小児の脳死診断にあいまいさが残る実態が浮き彫りになった。
 99年から04年まで、「脳死」の診断後に1週間以上、心臓が動いていた子どもは、全国で35人報告され、うち30日以上動いていた子は18人いた。完全な脳死ならありえない自発呼吸の兆候が、診断から半年後に見られた例もあった。意識が回復した子どもはいなかった。
 15歳未満からの脳死臓器提供を認める前提条件を探るため、日本小児科学会が全国の救命救急センターなどを対象に調査したデータを、詳しく解析し直した。 [asahi.com 2005年05月21日15時22分]

こういう問題がある以上、私は、家族の同意があれば臓器移植を可能にするという法改正には賛成できません。15歳未満の子どもへの脳死判定の拡大についても、慎重な検討が必要です。

与党検討会が2案 臓器移植法改正(北海道新聞)

与党検討会が2案 臓器移植法改正

 臓器移植法改正を目指す自民、公明両党の有志議員でつくる検討会は20日、本人意思の尊重をめぐり意見が一致せず、2つの改正法案で議論していくことを決めた。
 河野太郎衆院議員(自民)と福島豊衆院議員(公明)の案は、本人が拒否の意思表示をしていない限り、脳死判定と臓器提供を家族の承諾で可能とする内容。一方、斉藤鉄夫衆院議員(公明)は「本人意思を尊重する現行法を拡充するべきだ」として、対象年齢を引き下げる対案を示した。
 検討会は同日終了し、近く与党政策責任者会議に結果を報告する。今後は関係者からの聞き取りなどを進め、それぞれ議員立法で今国会への法案提出と成立を目指す。
 河野・福島案は「脳死は人の死」という前提に立った上で《1》本人が15歳以上で、提供意思を書面で表示し、遺族が拒否していない《2》本人の意思が不明でも、遺族が書面で承諾する?という場合について、脳死判定と臓器提供を可能とした。
 このため、現在は不可能な15歳未満の脳死者も遺族の承諾で提供できるようになり、小児心移植などに道を開く可能性が出てくる。被虐待児からの臓器提供防止は、政府が必要な措置を講ずると付則に記した。
 一方、斉藤案は脳死判定と臓器提供は現行法と同様に、本人の書面での意思表示があり、遺族が拒まない場合に可能とした上で、提供対象年齢を現行の15歳以上から12歳以上に引き下げた。
 また、両法案とも親族への優先提供を可能とする項目を新たに設けた。親族は親子と配偶者に限る方針。[北海道新聞 2005/05/21 09:29]

「本人が拒否を表明していない限り」というが、拒否を表明していたが意思が確認できなかったという場合はどうするのか。いまのドナーカードのようなものに、「拒否」を明記して、いつも保持していなければならない、ということなのだろうか。事故に巻き込まれた時に、そのカードがどこかへ行ってしまった、なんていうのはどうするんだろう? 本人の意思に反して「臓器移植」されたとき、誰が罪に問われるのだろうか…、疑問。
また、「親族への優先提供を可能とする」というのは、臓器移植のルールを根本的に変更するもの。臓器移植は、純粋に優先度にしたがって移植相手が選ばれること、そして、誰から、誰に移植したかはおたがいに知らせない、というのが大原則ではなかっただろうか。

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