仕事との関係で起こるセクハラ問題についてのニュースが2つ。
1つは、在宅介護の活動中の女性ホームヘルパーさんの4割が「セクハラを受けたことがある」という山形労働局の調査。女性1人で、他人の家の中に入っていくのだから、なかなか深刻な問題です。
もう1つは、教育実習生にたいする教員の側からのセクハラ。5,666人中、「自分が被害にあった」のは215人(3.8%)、「周囲の被害を見聞きした」は414人(7.3%)。仮に、「自分が被害にあった」が全部女性だとすると、女性の回答者3,528人中の割合は6.1%になります。セクハラの行為者の6割は教員。校長、教頭を含むというのですから、学校教師のセクハラ問題は、「一部の問題」ではすまなくなりつつあるのかも知れません。
4割「セクハラ受けた」?在宅介護中の県内女性ヘルパー(山形新聞)
4割「セクハラ受けた」?在宅介護中の県内女性ヘルパー
天童市内の介護支援専門員が県内の女性ホームヘルパーを対象に在宅介護の活動中に受けたセクハラについてアンケートを行ったところ、回答を寄せた約400人のうち4割が家族を含む男性利用者から「セクハラを受けたことがある」と回答していたことが、19日までに分かった。この結果を受け、山形労働局雇用均等室は県内44市町村の社会福祉協議会事務局長が集まる会議でセクハラに関する講習会を開催するなど指導を強化していくことを決めた。
アンケートを行ったのは、天童市寺津の介護支援専門員荒木昭雄さん(45)。東北福祉大の通信制大学院の修士論文として昨年11、12月に取り組んだ。同10月現在、県内で訪問介護事業を行っていた約200の事業所のうち、休止中の事業所やタクシー会社を除いた187事業所を通じて、女性ヘルパー1179人に配布。409人から回答(回収率35%)を得た。
具体的なセクハラの内容は「体を触る」(39.2%)が最も多く、「ひわいな冗談」(32.5%)が続いた。具体的な事例では、「股間(こかん)や胸を触る」「ベッドに引き込む」「キスされた」「抱きつく」などの直接的な行為のほか、「5万円をやるから寝てくれ」と性交渉を要求したり、「下腹部を触れと言う」「アダルトビデオを見せ、反応を見る」などが並んだ。
セクハラ行為をした対象者の記述は自由記載としたため分類していないが、サービスの利用者の多くは高齢の男性。昨年4、5月に行った事前調査(50人が回答)では、利用者本人が最も多く、利用者の夫や息子からセクハラを受けたヘルパーもいたという。
セクハラを受けた時の感情では「嫌悪を感じた」(40.2%)「怒りを感じた」(18.6%)「恐怖を感じた」(16.3%)が上位を占めた。その後の心の状態については、「恐怖、家の前を通るのも嫌」「行きたくない」「仕事が嫌」など、精神的に強いショックを受けた声が続く一方、「お年寄りなのでしょうがない」「気にしない」などの意見もあった。
今回のアンケートでは、セクハラを受けた後の個人と、事業所の対応も聞いた。その結果、個人で対応するよりも、事業所で対応した方が、その後のセクハラ行為が減る傾向にあることが分かった。しかし、勤務する事業所がセクハラ防止の取り組みをしているかとの問いには、「していない」の回答が7割強(複数回答)で、荒木さんは「全国的にも利用者から受けるセクハラの検証を行っている事業所は少ない」と指摘している。
山形市内の事業所の女性管理者は山形新聞社の取材に対し、「以前から現場ではセクハラの存在が確認されていたが、『お年寄りだから』とか『我慢すればいい』とか、表ざたにしない風潮があった」と指摘し、潜在的な件数の多さを懸念している。
山形労働局雇用均等室の高橋弘子室長は「同局にヘルパーから相談が寄せられたことがなかったため驚いているが、県とも連携し集団で集まる機会などを利用しながら、事業主に求められる対策について説明するなど、啓発活動に努めていきたい」と話している。[山形新聞2005年5月20日]
教育実習生がセクハラ被害!!
幼稚園から高校までの教育実習を受けた大学生約5600人のうち、10%の542人がセクハラ被害に遭ったり見聞きしたりしたことが21日、内海崎貴子・川村学園女子大助教授らの全国調査で分かった。セクハラをしたのは校長を含む教員が61%を占め、生徒からの被害もあった。だが「ことを荒立てたくない」と、71%は黙認している状態で、“性職者”の暴走はとどまるところを知らない。
「大学生だから遊んでるだろう」。中学校に教育実習を依頼した女子大学生は校長にこう言われ、性的関係を迫られた。最近起きた教育実習生へのセクハラの一例だ。
場所は職員室。聞いていたはずの周囲の教員は何の反応も示さなかった。学生は「教員なんてこんなものかと二重に傷ついた」という。
調査表を国公私立大74校の約1万人に配布。5666人(女子3528人、男子2093人、不明45人)が回答。215人が「自分が被害に遭った」、414人が「周囲の被害を見聞きした」と回答。両方に回答した学生は87人いた。
直接の被害者215人の内訳(複数回答)は「性的にからかわれたり、みだらな冗談を言われた」が20%で最多。「必要ない性的な話題を質問された」(17%)、「体をしつこく眺め回されたり、必要もないのに触られた」(15%)、「宴会で指導教員らのそばに座席を指定されたり、お酌やデュエットを強要された」(10%)と続き「性的関係を迫られた」(3%)は10人だった。
セクハラの行為者は「指導教員以外の教員」(34%)が最多で、26%が「生徒」、15%が「指導教員」、12%が「校長、教頭、主任」など。
典型的なのは実習終了後の酒宴で、校長や指導教員の隣に座るよう求められ、お酌をさせられるケース。「教材研究」と称して遅くまで実習生を残したり、休日に呼び出して“指導”後、食事や酒に誘う例などがある。
内海崎助教授は「実習生には、大学が事前にセクハラの可能性とその対処法を教えるべきだ」と話している。[デイリースポーツ2005/05/22]
ちなみに、教育実習生のセクハラ問題では、愛媛新聞が社説を書いています。
社説 教育実習でのセクハラ 「未来の教員」の前途を閉ざすな(愛媛新聞)
社説 教育実習でのセクハラ 「未来の教員」の前途を閉ざすな
児童生徒に対するわいせつ行為やセクハラで処分される教員が急増するなか、教育実習に臨む大学生の間でも、実習先で教員などからセクハラに遭うケースが少なくない。そんな実態が明らかになった。
川村学園女子大(千葉県)の内海崎貴子助教授らの全国調査によると、昨年、幼稚園から高校までの教育実習を受けた大学生の男女約5600人中、被害に遭った人が3.8%いた。「周囲の被害を見聞きした」も合わせると1割近い。
関東の私立大の団体が2001?02年度に行った調査も似たような結果だった。教育実習生のセクハラ被害が確実に存在することを裏づけている。
たとえば、昨年は島根県立高で実習生の指導教官である男性教諭が減給となり、辞職願を出した。教育者の育成を担う福岡教育大では付属学校の男性教官2人が停職や減給となった。
カラオケで体に触った。食事や旅館に誘った。それらが理由とされる。職責をわきまえない行為にはあきれてしまう。
それでも、文部科学省が原則懲戒免職と指導している児童生徒へのわいせつ行為に比べ、実習生へのセクハラはこれまで見過ごされていなかったか。
今回の調査でも、被害に遭いながら7割以上が「軽く受け流した」などと答えた。問題化するのは一部なのだろう。
実習生に対するセクハラの背景には教員側の優越的な地位がある。教育実習は教員免許の取得に不可欠だが、実習生は出身校などに申し込んで受け入れてもらっており、立場が弱い。被害を受けても訴え出にくい。
いじめや不登校への実践的指導能力の養成が求められ、教育実習の重要性は高まっている。だが、セクハラで意欲をそがれるばかりか、思い詰めて大学をやめる学生さえいるという。学ぶ権利が侵害され、前途も閉ざされるとは理不尽だ。有能な人材を逃して損失を被るのは子どもたちや社会全体である。
セクハラを許す土壌の学校では生徒も加害側になりやすい。今回の調査ではセクハラ行為者の約4分の1が生徒だった。さらに、実習生にセクハラをする教員が子どもに同様の被害をもたらさないと言い切れるだろうか。実際、子どもへのセクハラは教員との力関係が背景にあり、問題の根は同じだ。
セクハラを訴え出ても学校などが加害者をかばうようなら2次被害を引き起こす。その点でも似たような構図といえる。
研修などを通じて防止に努めるのはもちろん、問題が起きたとき、被害者のケアや加害者の教育を徹底する。あるいは第三者の立場で介入し、厳密な事実認定などを行う専門家の機関を設ける。そうした対策が考えられよう。実習生を送り出す大学側にも対策が求められる。
一方で、仕事に忙殺され、管理も厳しい教員の職場環境の改善も必要にちがいない。
教職員間、教員と保護者など「スクールセクハラ」の形態はさまざまだ。その1つとして光を当て、対策を急ぎたい。[愛媛新聞 2005/05/23]