給与所得控除の縮小へ 政府税調

政府税調が6月に個人所得課税の見直しに関する報告書をまとめますが、給与所得控除の見直し、配偶者控除の見直しなど、低所得層への増税が中心になっています。

よく、「働いただけ所得が増えないと、働く気がしなくなる。だから、最高税率を引き下げる」とか「広く薄く、平等に負担する」と言われます。しかし、何億も儲けているような個人は、ごく限られています。それにたいして、働いても働いてもろくに給料が上がらないようなサラリーマン層に、去年も増税、今年も増税、来年も増税…と増税の追い打ちをかけたら、それこそ国民の圧倒的多数がやる気をなくすんじゃないでしょうか? すでに高額所得者は減税の恩恵をたっぷり受け取っています。それをさらに減税しなければならない経済学的に合理的な理由は、いったいどこにあるのでしょうか? いまやられているのは、「広く薄く」どころか、低所得者層に「厚く重く」です。

給与所得控除の縮小を提言・政府税調、6月に報告書(日経新聞)

給与所得控除の縮小を提言・政府税調、6月に報告書

 政府税制調査会(首相の諮問機関)が6月にまとめる個人所得課税の見直しに関する報告書の大枠が27日固まった。サラリーマンの必要経費にあたる給与所得控除の縮小などが柱で、増税色の濃い内容。代わりに確定申告で経費の実額を控除できる制度を拡充するほか、自営業者の徴税も強化、税の不公平感を解消も狙う。向こう3―4年での実現をめざすが、納税者の反発は必至だ。消費税増税も絡み、今後の税制改革の大きな論点となる。

 今回の所得課税改革は家族構成や終身雇用制を前提とした賃金体系など社会構造の変化に中期的に対応するのが狙い。石弘光税調会長は27日の記者会見で「所得税をどういう方向に持っていくか広い範囲に目配りしたい」と述べた。[NIKKEI NET 2005/05/27 07:00]

「日経新聞」紙面によれば、見直しは、「給与所得控除」の縮小、一時所得・不動産所得の所得区分の廃止、配偶者控除の見直し、個人住民税の均等割引き上げ、同所得割の税率10%に一本化、共働き夫婦の所得合算課税、退職金課税の強化、などなど。

一時所得の所得区分が廃止されると、特別控除(最高50万円)もなくなる? また、宝くじなどの源泉分離課税(20%)もなくなり、所得と合算のうえ課税されることになるのでしょう。合算された課税所得額が年900万円超になると、税率は30%。これも確実に増税になりそうです。

中面では、こんな記事も出ていますが、個人所得税の税収が半減しているのは、もっぱら高額所得者への減税が原因。税収回復をねらうなら、そこに手をつけるのが道理であって、高額所得者への減税をそのままに(個人住民税の税率一本化では、さらに減税しようとしている)、一般庶民への増税をうちだしているのは、税制のあり方として逆立ちしています。

政府税調報告書、増税項目総ざらいへ(日経新聞)

政府税調報告書、増税項目総ざらいへ

 政府税制調査会(首相の諮問機関)がまとめる報告書は今後の所得税制の検討課題を総ざらいで列挙した形となる。負担増となる項目が中心で、いわば「最大限の中期増税メニュー」。どの項目をいつ実施するかは不透明だ。定率減税の縮小・廃止や消費税率の引き上げ論議を目前に控え、財務省内にすら「大型の所得増税を上乗せするのは難しい」との声がある。景気状況を見極めつつ、議論の時期を慎重に探ることになる。
 税調が所得税制論にこだわるのは、個人課税の基本となっていた「会社員の夫と専業主婦、子供2人」という家族構成や終身雇用制を前提とした雇用形態などの多様化にあわせて税制を見直すべきだとの指摘が強まっているため。相次ぐ減税や個人所得の低迷で14兆円と1990年代初頭に比べ半減した、所得税収を回復させて財政再建につなげる狙いもある。[NIKKEI NET 2005/05/27 07:00]

→所得税の最高税率がどれだけ引き下げられたかは、財務省のホームページ(所得税の税率構造の推移)から。

退職金課税強化で一致 サラリーマン対象 政府税調(読売新聞)

退職金課税強化で一致 サラリーマン対象 政府税調

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は24日の総会で、サラリーマンの退職金所得への課税を強化していく方向で一致した。サラリーマンからの強い反発に配慮し、2006年度税制改正では、外資系企業などが数年間働いただけの社員の給与を退職金に付け替え、社員の税負担を軽くする措置を禁ずるなどの措置が検討課題になる見通しだ。
 ただ、政府税調が6月下旬にまとめる所得課税に関する報告書では、控除後の退職金の半額だけに課税する仕組みや、勤続年数が20年を超える退職者を手厚く優遇する現状の見直しなどを中期的な課題として位置づける方向だ。
 石弘光会長は同日の会見で、「(退職金が老後の蓄えになるという)長期的な期待があるので一挙に(見直しとは)いかない」と述べ、数年程度の時間をかけて検討すべきだとの認識を示した。[2005年5月25日 読売新聞]

配偶者控除に見直し論 政府税調(東京新聞)

配偶者控除に見直し論 政府税調

 政府税制調査会(税調、石弘光会長)は27日の会合で、所得税の問題点などについて議論した。会合では「年収103万円以下の妻を持つサラリーマンが受ける配偶者控除と、その妻が受ける基礎控除は“二重控除”に当たり、問題ではないか」などの指摘があり、税調は今後、配偶者控除の見直しを検討する。ただ昨年、配偶者特別控除が原則廃止されたばかりで、納税者から反発の声が出る可能性もある。
 所得税は年収から各種控除を差し引いた「課税所得」にかけられる。給与所得者の場合、どんな就労者にも認められる基礎控除で38万円、経費として認められる給与所得控除で最低65万円の合わせて最低103万円が収入から差し引かれる仕組み。年収が103万円以下なら所得税はかからない。
 つまり、パートなどで働く主婦の場合、年収が103万円以下なら所得税はかからない上に、夫は38万円の配偶者控除が受けられる。
 このほか27日の会合で税調は、子育て支援のための「税額控除」を創設する方向で具体策を検討することも決めた。税額控除は所得水準に関係なく、一定の金額を従来の納税額から差し引く方法で、低所得者の負担の軽減が比較的、大きくなるとされる。[東京新聞 2005/05/28朝刊]

給与所得控除の縮小へ 政府税調」への3件のフィードバック

  1. 税は国家なり……の言葉を思い出します。さて、税制から見える、明日の国家はどんな姿なのだろうと。少なくとも、なかなか厳しそうです。
    私のブログをリンクしていただいておりまして、ありがとうございます。遅ればせながら、当方のリンクページにも入れさせていただきます。左フレーム、厳選!情報ソース、ブログ・リンクのなかにあります。

  2. ピンバック: 大阪のファイナンシャルプランナーのBlog

  3. 合計所得には、給与所得のほかに営業所得、不動産所得、配当、農業、その他事業、一時、雑所得などあるのにそれぞれの所得者に平等な所得控除の改正ではなく、給与所得に限った虐めのような改正は不当であり、憲法違反じゃないのかなあ?
    それでなくても、964(ク・ロ・ヨン)とか十五三一(トウ・ゴー・サン・ピン)と言われるように給与所得者以外は不明朗な申告納税や脱税の温床により優遇されている言われているのに!!
    今の税制のままでも、もっと調査担当の税務職員を2倍以上に増員し適正な申告納税管理がされれば人件費の何十倍もの申告納税が可能になると確信しています。
    また、赤字を生むような公共事業などは問題外であるのでその辺の改革が優先かと思います。民間なら考えられないことです。

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