あらためてアジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国の動きが注目されていますが、アジア諸国やラテンアメリカ諸国の動きは、直接の交流もあって、だいぶ分かってきたのにたいして、まだまだよく分からないのがアフリカ諸国。直接の交流も、地中海沿岸のイスラム教諸国の一部と南アフリカ共和国に限られています。そこで、もう14年前の本になりますが、勝俣誠さん(明治学院大学)の岩波新書『現代アフリカ入門』を読んでみました。
結論からいうと、同じ新興独立国といっても、アジア諸国とアフリカ諸国とではずいぶんと様子が違うということがよく分かりました。第2次世界大戦以前から独立運動の歴史をもつアジア諸国にたいし、アフリカ諸国では、50年代、60年代になって突如「独立」が浮上してきたといいます。また、経済発展という点でも、独立後、それなりに自生的な発展の道をきりひらいてきたアジア諸国と、アフリカ諸国の現状とは対照的です。
本書が取り上げているのはフランス植民地だった地域ですが、そこでは、現地エリートたちは、フランスが設置した大学の出身者であり、したがって第2次世界大戦直後は、「フランス人と平等に扱ってほしい」と要求はしても、フランスの援助での発展が当然のように目指されていたそうです。
それから、「民族自決」といってみても、アフリカの場合は、植民地支配者の側が勝手に引いた国境が、独立後も、厳然として受け継がれていること。アフリカ統一機構(OAU)自体、国境を変更しないことを原則として確認しており、実際、最近のエリトリアの独立まで国境変更はおこなわれてきませんでした。また、「内政不干渉」という点でも、国境をまたいで1つの「部族」が生活し、ある国で内戦や干魃が起これば、大量の難民が周辺諸国へ流入し…という現実は、単純に「内政不干渉」といって拱手傍観していればいいという訳にはいきません。
さらに、この本がちょうどソ連・東欧の旧体制崩壊の時期に書かれたこととも関連するのですが、いわゆる「アフリカ社会主義」の問題があります。「アフリカ社会主義」といっても、アルジェリアなどのように、50年代、60年代の独立直後から独自の「社会主義」を掲げてきた国と、エチオピアやモザンビークのように、軍事政権がソ連の援助などと結びついて「マルクス・レーニン主義」を掲げるようになったケースと、区別して考えなければなりませんが、いずれにしても、一党制や強大な大統領権限などと結びついた政治システムが、ちょうどこの本が書かれた時期に相前後して、変更を余儀なくされたことです。
そこには、「開発」と「民主化」という問題がある訳ですが、「開発」という点でも、アジア諸国が、貧しいとはいえ独立後、それなりの自生的な経済発展を実現してきたのに対し、アフリカ諸国の場合、南アフリカなどを除くと、自生的な経済発展の道を進み始めることに成功した国はありません。そこには、北の「収奪」に還元したり、内戦のせいだとして片づける訳にはいかない問題がある訳で、そういう点でも、そもそも「開発」「発展」とはいったい何なのか、考えなければなりません。
「民族自決」「内政不干渉」という点では、アフリカには、難民や内戦の問題、あるいは独裁政権による“虐殺”問題など、周辺諸国や国際社会の関与が避けられない問題がたくさんあることは事実です。しかし、だからといって、外から干渉すれば、開発やら民主化がうまくすすむということでないことも明白で、アフリカ諸国の、それぞれの国や社会独自の「発展の論理」とはいったい何なのか?それを探っていく必要性と重要性を考えさせられました。
【書誌情報】
著者:勝俣誠/書名:現代アフリカ入門(岩波新書 新赤版193)/出版社:岩波書店/刊行年:1991年11月/定価:本体620円/ISBN4-00-460193-9/※現在、品切れ重版未定
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