作家の阿刀田高氏が、「東京新聞」夕刊の文化欄で、日本語の3つの条件を書いています。その3つの条件というのは、<1>明快で、<2>的確で、<3>美しい、というもの。
<1>明快、というのは、「言葉遣いも構文もわかりやすいこと」。やさしい表現が望ましいけれども、ある程度の豊富さは絶対に必要だ、とも言っておられます。<2>的確とは、「対象を過不足なく表わしていること」。これは非常にわかりやすいですね。過不足なく表現するためには、語彙の豊富さを必要とすると指摘されていますが、なるほど大事なポイントですね。<3>美しいということについては、「大ざっぱなものさし」として、「言葉として美しいこと、イメージが美しいこと、趣きがあること」が上げられています。
さらに、「あえて韜晦を選ぶこと」、「あえて不充分のままでおくこと」、「あえて異端の美しさに訴えること」もあると、実に的確な指摘。阿刀田氏の指摘は、文学を中心としたものでしょうが、論文を書くときも心がけたいものです。