「朝日新聞」6月23日付夕刊によると、好太王碑の新たな墨本が中国で発見されたそうです。
好太王碑の碑文については、「倭以辛卯年来渡海破百残□□新羅以為臣民」の解釈を巡って論争があります。旧来は、391年(辛卯年)に倭が海を渡ってきて、百済、新羅などを「臣民」としたと解釈し、いわゆる「三韓征伐」伝説と結びつけて、日本の韓国・朝鮮支配を正当化したというのです。さらには、参謀本部の酒匂某がつくった拓本(「酒匂本」)は、そう読ませるために都合良く改竄されたという意見も出されました。また、碑文の主語は一貫して高句麗(好太王)と読むべきであり、したがって該当部分は、倭が海を渡って攻めてきたが、好太王がこれを破って、百済、新羅を臣民にしたと読むべきだとする説が提起されています。
こんどの墨本は酒匂本より前に作られたものであり、その碑文が酒匂本とほぼ一致するところから、酒匂本の改竄の可能性は否定されたというのが記事の趣旨です。ただ、こんど発見されたのは拓本ではなく、筆で文字を縁取りして回りを塗りつぶしたものだし、伝来についても不詳だとのことで、これで100%決着がついた、とはいかないようです。なお、改竄説については、1980年代の現地調査からも改竄の可能性は低いことが指摘されており、従来からあまり支持されていませんでした。