耳慣れない言葉ですが、エグゼンプションは、exemption 除外という意味です。
日本経団連が、6月21日に「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表しました。が、その中身を読んでみるとびっくり!
いわゆる工場勤めの労働者を除く、年収400万円以上のサラリーマンを、労働基準法の労働時間規制の「適用除外」にしようというのです。
労働基準法では、労働時間について、次のように定めています。
第32条【労働時間】
- 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
- 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
もちろん、いまはこれに第32条の2から同5までで、いろんな条件を付けて、一定の範囲で「弾力化」(一定の条件を満たせば、ある期間について、全体として平均したときに週40時間を超えない範囲内で、繁閑にあわせて繁忙期に週40時間を超えてもよいとするもの)されていますが、それでも大枠での労働時間規制は、労働基準法の基本をなすものとして、維持されています。
ところが日本経団連のこの提言は、この労働時間規制そのものをやめてしまえというもの。つまり、世の中から「残業代」というものを一切なくしてしまおうというのです。日本共産党の志位和夫委員長が、7月20日の講演会で、「『君も今日からエグゼンプションだね』と言って、肩をたたかれたら、いくら働いても残業代がでない」と話していましたが、まったくもって無茶苦茶な話です。
日本経団連の提言では、エグゼンプション制度の具体的内容は次のように説明されています。
(1)現行の専門業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者は、年収の多寡にかかわらず、ホワイトカラーエグゼンプション制度を適用する。
(2)それ以外の労働者についても、法令で定めた業務、および労使協定や労使委員会の決議で定めた業務については、月給制もしくは年俸制で、年収400万円以上(または全労働者の平均給与所得以上)の場合は、ホワイトカラーエグゼンプション制度を適用する。
で、これらの業務については「賃金と労働時間とを分離する」(提言5ページ)というのです。つまり、何時間働こうが賃金は一切増えませんよ、ということになります。
これを、裁量労働制と同じだと思ったら大変な誤解です。上述の(2)のように労使協定などがあれば、工場労働者を除くあらゆる業務に適用される可能性があります。
それに、裁量労働制であっても、現在は、時間外労働や休日出勤した場合の割増賃金は支払わなければなりません。ところが、このホワイトカラーエグゼンプション制度が実施されると、そういうことも一切なくなるのです。
そのことは、日本経団連自身が、提言のなかで、なぜこんな制度を導入するかを説明して、こう明言しています。
現行の労働時間法制には……企画業務型裁量労働制のほかにも、フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制が用意されている。しかし、これらも労働時間規制という考え方から脱却しておらず、労働時間にとらわれない自由な働き方に対応するには不十分である。(提言1ページ)
さらに、裁量労働制や年俸制などは、すべて本人の同意が要件になっていますが、新しいホワイトカラーエグゼンプション制度は、本人の同意とは無関係に押しつけられるのです。
「提言」では、こんなふうに、どんな働き方をするかは人それぞれだと書いています。
労働者の中には、生活のためだけに働きたい、仕事よりも自分の趣味や家庭団欒に重点をおきたい、したがって決められた時間以上は働きたくないと考える者もいる。一方、労働時間にとらわれず、納得のいく仕事、満足のいく仕事をしたい、自由に自分の能力を発揮したい、仕事を通じて自己実現をしたいと考える者もいる。このように、価値観は人それぞれである。
しかし、ホワイトカラーエグゼンプション制度は、こんな「人それぞれ」の価値観、働き方を許してはくれないのです。「決められた時間以上は働きたくない」と思えば、ホワイトカラーを辞めて、工場へ行け!という訳です。(しかし、現場は、すでにパートやアルバイト、派遣、請負などなど、不正規雇用で一杯なのです)
これだけ勝手なことを要求しておきながら、「ただし、『欠勤』については賃金を控除する」(提言15ページ)ということは、しっかり明記してあるのには、呆れてものも言えません。
ところで、ホワイトカラーを全体として労働時間規制からはずしてしまえ、という理由について、「提言」は、こんなふうに説明しています。
ホワイトカラーは、「考えること」が1つの重要な仕事であり、職場にいる時間だけ仕事をしているわけではない。自宅にいるときや通勤途上などでも、仕事のことに思いをめぐらすことは、珍しいことではない。(提言2ページ)
だから賃金と労働時間を分けなければいけないというのです。もちろん、こういったからといって、自宅にいて仕事のことに思いをめぐらしている時間にたいして賃金を支払いましょうという訳でないことは明白です。そうではなく、一定額の賃金を支払う以上、自宅にいようが通勤途上だろうが、いつも仕事のことを考えよ、というのが財界の狙いです。
もちろん、「労働者の健康確保の面からは、睡眠不足に由来する疲労の蓄積を防止するなどの観点から、在社時間や拘束時間を基準として適切な措置を講ずる」としています。しかし、これこそ、ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入したら、寝る間も削って働かざるを得なくなる、ということを「問わず語り」に認めたものと言えます。「語るに落ちる」とはこのことで、ただただその図々しさに呆れるばかりです。
労働時間規制をまったくはずしてしまったら、どうなるか? 最悪のケースでは、「過労死」しても、それが「過労死」として認定されなくなることさえ考えられます。
すでに、経団連との懇談で、自民党は、「議論を進めていきたい」と約束しています(「自由民主党と政策を語る会」3月29日)。うかうかしてはいられません。
【問わず語り】 人が問わないのに、自分から語り出すこと。
【語るに落ちる】 話しているうちに、うっかり本当のことを言ってしまう。
[岩波書店「広辞苑」より]
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サービス残業の合法化、過労死の推進、奴隷制度の復活・・・とんでもない制度だな、こいつは。盗人猛々しいとはまさにこのことだけど、どうやら選択肢は
1)さっさと会社を辞めて独立する
2)フリーターとしてしぶとく生き残る
3)社蓄と化して過労死する
ですな。こんな法案が通ったら日本もおしまいだね。
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最低ですね。日本でこんな事をやったら、おとなしくて真面目な社員
は過労死続出です。
「過労死推進法案」か「会社員奴隷化促進法」と呼びましょう。
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