東京都教育委員会が、「つくる会」の中学校用歴史教科書、公民教科書を採択。都立の中高一貫校などで使用されることに。
他方、茨城県大洗町教委は、「つくる会」教科書の採択を断念し、採択地区の決定に従うことに。ただし、副読本や教師用指導書としての使用などを引き続きねらっている模様。
都教委、「つくる会」教科書を採択 中高一貫校向け(朝日新聞)
大洗町教委、「つくる会」教科書は採択せず(茨城)(読売新聞)
都教委、「つくる会」教科書を採択 中高一貫校向け
朝日新聞 2005年07月28日12時19分東京都教育委員会は28日、都立の中高一貫校4校と盲・ろう・養護学校47校(分教室含む)が来春から使用する中学校教科書について、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編集され扶桑社が発行する歴史、公民教科書を盲学校と知的障害の養護学校を除く計25校で採択した。都立では現在、養護学校2校と中高一貫校1校で同社版が使われている。
盲学校は点字教科書を使い、知的障害の養護学校では教科書以外の図書を授業で用いるため、今回一般の教科書が採択の対象となった都立学校の全校で、同社版が採択されたことになる。委員会は公開で行われた。無記名投票で6人の教育委員の全員が同社の教科書採択に賛成した。
同社版の記述を巡っては「日本の戦争を美化している」などの批判があり、中国、韓国などとの間で外交問題にもなっている。都教委の採択をめぐっては、中高一貫校に改組される高校の卒業生らによる採択反対運動も起きていた。
今年は中学校教科書の改訂に伴い、全国一斉に採択替えを行う年にあたる。公立学校については各教育委員会が8月末までに採択する。これまでに同社版の採択は、栃木県大田原市で明らかになっている。
大洗町教委、「つくる会」教科書は採択せず(茨城)
大洗町教育委員会は26日、臨時会を開き、来春から使う中学校の歴史教科書について、周辺14市町村で構成する「第3採択地区」の選定協議会の決定に従うことを決めた。「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した扶桑社発行の教科書は採択しない。
町教委が他社の教科書を選んだ協議会の決定に反対する異例の事態となっていたが、26日に開かれた臨時協議会で、地区内で同一種の共同採択を定めた教科書無償措置法に違反するとの指摘を受け、最終的に方針を転換した。
会見した柵山美代子教育委員長は「違法になってまでも採択はしない」と説明した。町教委の判断で、教科書以外の「副教材」などとして使用する可能性について、加藤一五(かずい)教育長は「副教材の概念も定かでなく、検討が必要」と明言を避けたが、「教員の指導資料として使うのは許されるのではないか」と意欲を示した。
[読売新聞 2005年7月27日]