郵政民営化法案が参院で否決され、午後7時、衆議院が解散されました。まあ、数日前から予想されたとおりの事態で、ここ数日の「騒ぎ」も終わってみればそれまでの話です。
しかし、小泉首相が、“受け”や“ポーズ”を含め、あれだけ頑張ったのに、結局、参院否決の事態に立ち至ったと言うことは、4年前の“小泉人気”を思うと、隔世の感があります。問題は、そこまで小泉首相を、ただの“変人”にしてしまったものは何か、です。
僕は、結局、この4年間の小泉「改革」なるものに国民がうんざりし出している、そこに今回の郵政「混乱」の理由があるように思います。内閣支持率70%などという化け物のような数字はもはや望むべくもなく、また、新聞調査によっては50%近い支持率があるとはいっても、その内実たるやすでに空洞化しているというべきでしょう。
それを端的に示しているのが、前に紹介した、「毎日新聞」7月18日付にのった世論調査です(郵政解散をめぐる世論)。
郵政法案についていえば、「今国会で成立させるべきだ」はわずか25%。それにたいし、「今国会にこだわる必要はない」が52%で、小泉さんの「今国会に成立させる。継続審議はあり得ない」は人気がなかったにもかかわらず、成立しなかった場合の解散には53%が賛成。このギャップは何か、という問題です。
僕は、このギャップは、結局、国会のゴタゴタに有権者が嫌気がさしていることを表わしていると思います。もっと広くいえば、国会内に「反対勢力」をデッチ上げて、強引にやってきた小泉政治の手法そのものが、国民から胡散臭く見られるようになった、ということではないでしょうか。その証拠に、「毎日」の世論調査で、現在支持している政党の支持率と、総選挙で伸びてほしい政党の割合とを比べると、自民党は、支持率26%、総選挙で伸びてほしい政党の割合25%ということで、期待度ゼロだからです。現在自民党を支持している人か、自民党に伸びてほしいと思わない、というのは、もはや「小泉人気」の命脈がつきたことを表わしていると思います。
で、次の問題は、民主党。自民党と同じようにみてみると、現在の支持率18%にたいし、伸びてほしい割合は35%。ということで、当然、このまま投票日を迎えれば、民主党が議席を大きく伸ばすことは確実。
しかし、本当にそれでよいのか? それが問題です。
郵政民営化だって、「本筋は縮小・廃止であり、決して民営化ではない」というのが民主党の立場(日本経団連「民主党と政策を語る会」4月7日、経団連会館)。いま話題のサラリーマンを狙い撃ちにした各種控除の縮減でも、民主党「財政健全化プラン」では、しっかり「控除(扶養・配偶者・配偶者特別)廃止(1.9兆円)」と増税項目に上げられています。
憲法問題でも、「『自衛権』を憲法上明確に位置づける」「国連主導の集団安全保障活動への参加を明確に規定する」(「民主党『憲法提言』の策定に向けて」4月25日)と、憲法9条2項の戦力不保持・交戦権否認を改変して、自衛隊を憲法上明記し、海外での武力行使に道を開こうという点では、自民党と同じです(「制約された自衛権」など限定をつけているように見えますが、基本が、自衛権を認め、海外での武力行使を認める点にあることは明らかです)。PKO活動への参加など、いろいろ考え方はあるでしょうが、少なくとも、現状では、9条2項があるために、政府といえども、自衛隊が海外で武力行使することは憲法上認められない、という立場をとらざるをえません。ところが、自衛隊(自民党案なら「自衛軍」)を持つことが明記されれば、この歯止めがなくなってしまいます。
こういう民主党が議席を伸ばして、本当にいまの政治が変わるのでしょうか?
一方で年金、介護、医療と、次々負担を増やされ、他方で、定率減税の縮小・廃止、各種控除制度の見直し、さらには消費税率の引き上げなども議論され、国民の暮らしは痛めつけられ続けています。JR事故やアスベスト被害など、不安も広がるばかりです。こうした国民の暮らしに、本当にゆきとどく政治が必要なのではないでしょうか? 憲法9条をこのまま変えてしまってよいのでしょうか? 「郵政解散」「自爆解散」など、マスメディアは面白可笑しく取りざたするでしょうが、本当の争点はどこにあるか、よく考える必要があると思います。
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