日本商工会議所が6月16日に「憲法改正についての意見――憲法問題に関する懇談会報告書」を出していたことを、今日になって見つけました。
→憲法改正についての意見(日本商工会議所)
※PDFファイルが開きます。
で、自民党第1次案がすでに発表された現時点で読んでみると、結局、この自民党第1次案と「瓜二つ」というか、狙いやポイントの置き方、さらには言葉遣いまでそっくりなことに気がつきます。
焦点の憲法9条について、「意見書」は、第9条1項はそのまま残すとしたうえで、2項についてこう書いています。
2 第9条第2項で自衛権を保持することを明記すべきと考える。その当然の帰結として、自衛のための「戦力の保持」を明記する。
…
なお、自衛権には、集団的自衛権も含まれていることは国際法上の常識であり、それは国連憲章でも認められている「独立主権国家」が保持する自然権であり、現行憲法の下においても我が国も当然に保持していると考えられる。3 第9条第3項を新設し、「国際社会の平和の維持・回復、並びに人道的支援」のための国際協力活動に対する現行の自衛隊の派遣を改めて憲法で認め、これを国防活動と並んで現行自衛隊の本体業務とする。
また、国民の権利・義務にかんしては、「憲法は主権者たる国民が国家機関の権力行使について歯止めをかけるもの」と、あれもこれも国民の義務を並べ立てようとする「国家主義」的議論を牽制しつつ、しかしながら、「権利には当然に限界があることも改めて明確にする必要がある」と強調しています。そのために、現憲法の「公共の福祉」という言葉を「公共の利益」に変更すべきだと主張しています。
「公共の福祉」に関してはその解釈が不明瞭であることもあり、「公共の利益」と表現を変更し、個人の自由と権利を保障するための調整原理として公共の利益があるということを、より明確に規定すべきである。
ここで言う「公共の利益」とは、国の安全や公の秩序、国民の健全な生活環境を確保する全ての事柄をいう。
純粋に法理論的な議論として、「公共の福祉」を「公共の利益」に変えることで、調整原理としてどれほど明確になるのか分かりません。要は、「公共の福祉」という言葉が持つ国民の生活・福利厚生の向上に役立たなければならない、というニュアンスを一掃したい訳で、そのことは「公共の利益」=「国の安全や公の秩序」と言っていることからも明白です。この体制維持的・国家中心的な「公共の利益」が個人の自由や権利の「調整原理」とされるならば、国の計画する公共事業などに反対するのは、まさに「公の秩序」を妨げる仕業とされてしまうでしょう。
さらに、「改正の発議」に(現行第96条)についても、自民党案と同じように、要件緩和を掲げています。
改正発議要件を(総議員3分の2から過半数の賛成に)緩和すべきである。