一般紙の有明公演会報道は、ベタ記事あるいは2段見出し程度でしたが、神戸新聞が8/13付で、大きく報道しています。実際の紙面を見たわけではありませんが、インターネットで見るかぎり、それなりに大きな記事のようです。
「九条の会」結成1年の講演会
日本国憲法を守る。その一点を旗印に、反戦の意思を積極的に発信してきた作家らがタッグを組んだ「九条の会」が7月末、結成1年を機に東京都内で講演会を開いた。衆参両院の憲法調査会が今春、改憲への道筋を打ち出す報告書をまとめるなど護憲に向かい風が吹き、世界に戦火の絶えぬ戦後60年。現在と未来への責任をどう果たすべきか――。西宮市在住の作家・小田実さんら平均年齢77歳の6氏が、人間に対する希望と信頼、反戦の気迫をにじませつつ、縦横に語った。(新開真理)
平和へ希望捨てず/東京に9500人集結
「亡霊参加する反戦運動を」 哲学者・鶴見俊輔さん
「上からの『受忍』拒まねば」 作家・大江健三郎さん■死者とともに
「九条の会」は小田さんのほか、劇作家の井上ひさし▽哲学者の梅原猛▽作家の大江健三郎▽憲法研究者の奥平康弘▽評論家の加藤周一▽作家の澤地久枝▽哲学者の鶴見俊輔▽三木武夫記念館館長の三木睦子――の9氏が2004年6月に結成。各地で護憲を訴え、今回の講演会には全国から9500人が参加した。
「目標は、平和を目指してもうろくすること」と切り出したのは鶴見さん。第2次世界大戦中、海軍の軍属として南方の惨状を見た。国内外の戦没者と、そこに連なる人たちに思いを寄せ、「亡霊の参加する反戦運動をしたい」と述べた。
改憲をめぐる国民投票については「負けを避けたいという気持ちは思想を低くする。国民に主権があるなら国民投票をして、九条撤廃が多数になれば、その実状を歴史にさらす勇気を持ちたい」と、心意気を語った。■自分が決める
「上からの『受忍』という説得を拒まねばならない」と呼びかけたのは大江さん。戦時の犠牲は「受忍すべき」として、広島、長崎の被爆者の救済に力を尽くさなかった国の姿勢は、思想や良心の制約をはらむ有事関連3法の制定に連なっていると指摘。被爆者や国内唯一の地上戦を経験し米軍基地の残る沖縄県民らの今に至る苦しみを「私たちは『受忍すべき』とせず、語り続けなければならない」とした。
また「求めるなら助けは来る。しかし決して君の知らなかった方法で」という友人の詩の一節を紹介し、「若い人たちは私たち古い世代の知らなかった形で、この国に変化をもたらしてほしい」と期待を込めた。
戦争を軸に据えた戯曲を世に送り出してきた井上さんは、敗戦時の日本人の平均寿命が男性24歳、女性32歳だったことを紹介。「自分の運命は、国家でも企業でもなく自分で決めるという人たちの声が集まれば、世界は思いがけない方向へ変わる可能性がある」と呼びかけた。■世界への視点
「ベ平連」(「ベトナムに平和を! 市民連合」)を鶴見さんらとリードした小田さんは、孫文が戦前の神戸で「強大な武力で支配する『覇道』でなく、道義による『王道』を行くべき」と訴えた演説から語り出した。
「憲法が求めているのは、日本だけの平和や現状維持の平和ではない。力ずくで抑え込む表面的な平和とも違う。世界の国々が対等に付き合える本当の平和を、非暴力で率先してつくろうとうたっている」と指摘。イラク戦争が泥沼化する国際情勢を踏まえ、憲法の持つ今日性を強調した。
奥平さんは「九条改正は、国のかたちや国柄を変える付随効果がある。改憲し、愛国心や義務の重視などを書き込むよう求める声はすでにある」と説明。「改憲勢力の眼目は9条2項。1項を変えないから平和主義は残る、という説得にごまかされてはならない。1項は、2項があって初めて意味がある」と警鐘を鳴らした。
最高齢の三木さんは、身重で戦火を生き抜いた体験を語り、気骨をみせた。澤地さんは「私たちは賢くならねばならない」と、ビデオでメッセージを寄せた。■広がる共鳴の輪
同会は発足時、「武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪う」と批判。米国偏重の外交を転換し、「世界の歴史の流れに、自主性を発揮して現実的にかかわろう」「国民一人ひとりが、9条を持つ日本国憲法を自分のものとして選び直し、日々行使していこう」と呼びかけた。
こうした趣旨に賛同する市民らが、地域や職場などで小さな「九条の会」を結成。7月末で兵庫県内に85団体、全国では3000団体を超えた。
[神戸新聞 2005/08/13]