沖縄自動車道で、米軍の大型トラック4台が料金所をでたところでUターン中に乗用車と衝突事故。米軍側は、大型車両に熟練するための訓練中だったと主張。地位協定で米軍には基地間の移動は認められているが、訓練なら、通告なしに公道で実施するのは許されない。
ところが外務省は、自分でも詳細を確認していないと認めておきながら、「容認される」との立場をさっさと表明。国民の安全より米軍の都合を優先する立場が、あらためて露わに。
米軍、自動車道で訓練 乗用車と衝突事故
米海兵隊の大型車両が、沖縄自動車道を往復する訓練をしていたことが24日までに分かった。23日午後3時50分ごろ、南風原町新川の沖縄自動車道那覇料金所で、キャンプ・ハンセン所属の海兵隊員(20)が運転する大型トラックがUターンしようとした際、一般の乗用車と衝突する事故を起こした。県警の調べに、米兵は「公務中」と答えた。県内の市民団体や専門家からは、高速道路での訓練に批判の声が上がっている。
外務省地位協定室は「詳細は確認中だが、公の道路を走行する活動は施設間の移動に当たる」とし、日米地位協定上、容認されるとの認識を示した。外務省沖縄事務所は「協定上の問題がないとしても、高速道路を使った訓練であれば、適切さを欠く印象もある。事実関係を確認し、対応したい」と話した。
関係者によると、事故を起こしたトラックはキャンプ・ハンセン所属で、沖縄自動車道の許田―那覇の料金所間を往復する訓練をしていた。若い兵士が大型車両に熟練し、運転技能を高める訓練の一環とみられる。
米軍車両の通行料金は、日本政府の思いやり予算で支払われている。日本道路公団沖縄管理事務所によると、2004年度に沖縄自動車道路を通行した米軍車両は約23万8千台。通行料金は約2億2千万円だった。同管理事務所は「公務中の米軍車両が料金所でUターンする行為は初めて知った。米軍車両の通行が訓練か否かの通告はない。交通法規を守り、安全に走行してほしい」と話した。
県警によると、那覇料金所で隊列を組んだ大型トラック4台が左側車線から出て、中央分離帯の切れ目から道路を横断するように反対側車線に向かった際、最後尾の1台が、出口から直進してきた沖縄市の男性(48)の運転する普通乗用車と衝突した。事故を起こした車両の米兵2人と男性にけがはない。
県警は物損事故として処理し、トラックを運転していた米兵(20)が注意を怠ったことが原因とみている。沖縄自動車道を管轄する県警交通機動隊の佐久本盛安副隊長は「米軍の通知はなく、実態は把握できていないのが現状だ」という。[琉球新報 2005-8-24 15:27:00]
琉球新報の記事によれば、このような公道訓練は1994年以来実施されているらしい。また、米軍は、訓練ではなく交通法規を学ぶための練習だと説明を変更。公道での「訓練」が地位協定にてらしても認められないことを、米軍自身が認めた形に。
「訓練ではなく交通法学ぶ練習」 米軍回答に県反発 Uターン事故(琉球新報)
「訓練ではなく交通法学ぶ練習」 米軍回答に県反発 Uターン事故
米海兵隊の大型車両が沖縄自動車道を往復訓練し、那覇料金所付近でUターンする際に一般乗用車と衝突事故を起こした件で、在沖海兵隊は24日午後「訓練ではなく、沖縄の道路事情、交通法規、地形などを習熟させるための運転練習」との認識を示した。那覇防衛施設局などの照会に回答した。
県の花城順孝知事公室長は「大型車両の運転に習熟するための自動車道路での走行は明らかに訓練だ。施設間の移動でもない」と反発。その上で「衝突事故も起きており、公道での訓練が危険を伴うものであることが立証され、極めて問題だ。やめるべきだ」と述べた。県は事実関係を詳しく確認した上で、米軍や関係機関に中止を要請する方針。
外務省沖縄事務所や那覇防衛施設局は、米軍に再発防止を要請した。
琉球新報社の取材に対し、在沖海兵隊報道部は24日夜、公道での走行が1994年以降、実施されているとし「125マイル(約200キロ)以上の運転実績や通常の米軍内の基準を超える指導期間を義務付けている。最も安全な運転手だけが県内の道路に出ることができる」と返答した。
事故を起こしたキャンプ・ハンセンの部隊は「作戦上、答えられない」として明らかにしなかった。[琉球新報 2005-8-25 9:43:00]
↓沖縄タイムスは、社説でこの問題を取り上げている。
社説 [高速道での訓練]米軍はやりたい放題か(沖縄タイムス)
社説 [高速道での訓練]米軍はやりたい放題か
米軍が沖縄自動車道を使って軍事訓練をしていることは県民にあまり知られていない。通行料金を日本政府が肩代わりしていることも、だ。
南風原町新川の自動車道那覇料金所近くで23日に起こった米海兵隊の大型トラックと自家用車の事故は、基地提供施設だけでなく民間地域まで、訓練地域として利用されていることを浮き彫りにした。それを外務省が容認していることも明らかになった。
事故車両を含む米軍のトラックは、金武町のキャンプ・ハンセンを出発したのち、那覇―許田間を約3往復している。日によっては要員を交代して5往復することもあるという。
沖縄タイムスの取材に対し複数の米兵は、トラック4台で那覇―許田間を往復する訓練を繰り返していたと答えている。県警の調べに対しても「公務中」と述べている。
米軍車両の通行料金は、日米地位協定に基づき「公務中」に限って日本政府の思いやり予算で支払われている。
日本道路公団沖縄管理事務所によると、2004年度に沖縄自動車道を通行した米軍車両は約23万8000台だ。通行料金は約2億2000万円に上っている。
外務省は訓練について「施設間移動に当たる。安全には配慮すべきだが、米軍に必要な訓練は施設外でも地位協定上は排除されない」と説明した。
しかし、県民の疑問は、提供施設外でも米軍の傍若無人な訓練を地位協定は認めているのか、ということに尽きる
もしそうであるなら、これほどの欠陥協定をよくも主権国家として認めたものである。これでは県民の日常の暮らしが、米軍の訓練によって犠牲になっても仕方ないといっているようなものではないか。
東京国際大学の前田哲男教授は「施設間移動は基地にアクセスする権利を認めているにすぎず、外務省は拡大解釈で米軍のやりたい放題を許している」と批判している。
当然だろう。百歩譲って「基地から基地への移動」を黙認するとしても、今回のような民間区域での訓練は容認できるものではない。
犯人引き渡しや基地内環境調査にとどまらず、日米地位協定の疑問について私たちは何度も指摘してきた。稲嶺恵一知事や県議会、基地を抱える自治体の議会も「抜本的な改正」を求めてきたはずだ。
民間の高速道路での訓練は言語道断であり、政府は県民の安全を守る責務があろう。そのためにも、地位協定は抜本的に改正しなければならない。[沖縄タイムス 2005年8月25日朝刊]