マスコミ論調 総選挙の結果をどう見るか(3)

マスコミというほどではありませんが、今日の「日刊ゲンダイ」(13日付=12日発行)の見出しを紹介しておきましょう。

まず両1面ぶち抜きの見出しはこれ。

この国の民主主義は死んだ
もはや何も言うことなし。この選挙結果は狂気の果てだ。
全く情けなかった民主党、これからこの国の暗黒の10年が必ず始まる

で、2?3面に続く記事の中見出しはこれ。

▼岡田民主党は四分五裂で野党は無力化、自民党独裁の最悪事態
▼ヌエ公明党は小泉政権から吹っ飛ばされる
▼自民党に投票した若年層はその悪い報いで酷い目に遭うだろう
▼驕る平家は久しからず、勝ちすぎ小泉自民党を待ち受ける罠
▼郵政民営化が成立しても、12年後の民営化実現という喜劇的事態
▼狂人首相が勝ち誇ってこの国はどんな事になるのか、世の中のお先真っ暗
▼小泉首相は1年後に辞めるというがそれから先はどうなるのか
▼この国の選挙民の政治水準は一体どうなのか
▼本紙としてはもはや何も言うことなし、これから先、生きるのが辛い大多数の庶民とヌレ手でアワの一部サギ集団に二分化されて、アメリカと同じになっていいのか
▼この国の選挙民の政治水準では選挙など何回やっても民主主義は確立されないムダであることが分かった

他方で、「夕刊フジ」では、漫画家のやくみつる氏がこんなコメントを寄せています。

 怒りを通り越して無力感でいっぱいだ。……小泉という1人のタレント候補に入れてしまった。「改革」というワンフレーズにコロリとやられ、投じる1票が改革に寄与するように思ってしまったのだろう。政治家は愚直でよく、石部金吉たるべきなのに、まじめなやつより面白いやつが勝つということだ。4年間の信を問うこともできず、こんなことでいいのか。[「夕刊フジ」2005年9月13日付=12日発行]

総選挙の結果をどう見るか(2)

とりあえず、分けて考えよう。

  1. 誰が、どういう理由で、自民党に投票したか。有権者の動向。
  2. 小泉首相は、いつ、どんな見通しにもとづいて、解散・総選挙を決めたのか。そして、どんなふうに「郵政」解散を演出していったのか。
  3. 自民党は、圧勝したことによって、あれこれの政治課題(増税、社会保障の切り捨て、憲法など)を、今後どんなふうにやろうとするのか。
  4. これから、自民党政治とどんなふうたたかっていったらよいのか。

ということで、少しずつ考えてみたい。

投票結果 総選挙の結果をどう見るか(1)

とりあえず、各党の比例ブロックの得票を過去の選挙と比較してみました。

主要5政党のみ、各比例ブロックの得票の合計を、2004年参院比例区得票、2003年総選挙比例ブロック得票合計と比べてみました。今回の総選挙の数字は、選管確定票が分からないので、とりあえずNHKのホームページの総選挙特集のページに載っているものを利用。上段が得票数、下段が得票率です。

主要5政党の得票・得票率の変化
2005年総選挙 2004年参院選 2003年総選挙
自民 25,887,798 16,797,686 20,660,185
38.2% 30.0% 35.0%
民主 21,036,425 21,137,457 22,095,636
31.0% 37.8% 37.4%
公明 8,987,620 8,621,265 8,733,444
13.3% 15.4% 14.8%
共産 4,919,187 4,362,573 4,586,172
7.3% 7.8% 7.8%
社民 3,719,522 2,990,665 3,027,390
5.5% 5.4% 5.1%
投票総数 67,811,069 55,931,785 59,102,827

これをみて分かるのは、過去の選挙に比べて、今回の自民党票が大きく増えていること。2004年参院選と比べると、投票率が上がった分、全国で投票総数は1200万票増えていますが、そのうち900万票が自民党に投ぜられています。その限りで、小泉流「郵政」解散作戦は“してやったり”ということになります。

しかし他方で、民主党は議席を大きく減らしたけれども、得票ではそれほど減っていません。共産党、社民党も、若干ですが得票を増やしていることが分かります。

また、自公で衆議院の議席の3分の2以上を占めたと言っても、得票率で言えば自公合わせて51.5%で、5割をわずかに超えただけ。2003年の“小泉ブーム”といわれた総選挙のときでも、自公合わせると49.8%だったのですから、めちゃくちゃ支持が増えたという訳ではありません。このあたりは、やっぱり「小選挙区制」による“マジック”といえます。

もちろん、自民+公明だけで衆議院の3分の2以上を占めたという結果は重大であることは言うまでもありませんが。