有権者の投票動向 総選挙の結果をどう見るか(11)

出口調査の結果について、全国的な傾向。

無党派層の票、大量に自民へ…自公協力は一層進展 (読売新聞)
無党派層、自民も受け皿に 民主との差詰まる 出口調査 (朝日新聞)

無党派層の票、大量に自民へ…自公協力は一層進展(読売新聞)

 読売新聞社と日本テレビ系列各局が11日に共同実施した出口調査で、最近の国政選挙での民主党の躍進の原動力となってきた無党派層の票が、今回は自民党に大量に流れ、自民党支持が民主党支持に迫っていることが分かった。
 また、与党の自民、公明両党の選挙協力が一層進展してきた実態も明らかになった。

 ◇無党派層◇

 出口調査では、特定の支持政党を持たない無党派層は、全体の19%を占めた。無党派層が比例選で投票した政党は、自民党32%、民主党38%で、その差は6ポイントだった。2003年の前回衆院選では自民党21%、民主党56%で、その差は2・5倍以上あった。今回は、自民党が11ポイント上昇したのに対し、民主党は18ポイントも下落し、両党の差が一気に縮まった。これが、今回の自民党圧勝の大きな要因となったと見られる。
 自民、民主両党以外では、共産党8%、社民党7%、公明党7%、新党日本4%、国民新党2%――の順だった。過去3回の国政選挙を見ると、小泉政権発足間もない01年参院選は、小泉ブームに乗った自民党が無党派層の27%の支持を集め、民主党の21%を上回った。だが、その後、自民党に投票した無党派層の割合は、03年衆院選が21%、04年参院選が14%と低下した。
 これに対し、民主党に投票した割合は03年衆院選で56%に跳ね上がった。この選挙で民主党は177議席を獲得し、躍進した。04年参院選でも無党派層の51%の支持を集めて50議席を獲得し、改選分の獲得議席では自民党を上回った。
 一方、無党派層が小選挙区で投票した候補の所属政党は、民主党45%、自民党38%だった。前回衆院選の出口調査に比べ、民主党が6ポイント低下したのに対し、自民党は10ポイント上昇した。
 今回、小泉首相は郵政民営化を最大の争点に据え、その是非を問う姿勢を貫いた。民主党の岡田代表らは、郵政改革をあまり前面に出さず、年金や少子化問題などを訴えた。だが、読売新聞社が6?8日に行った継続世論調査では、無党派層の43%が郵政民営化に「賛成」と回答、「反対」の26%を上回っていた。郵政民営化への賛成が、無党派層の自民党支持が高まった一因と見られる。

 ◇自公協力◇

 出口調査では、公明党候補がおらず、自民党候補のいる290小選挙区では、公明支持層の78%が自民党候補に投票したことが分かった。03年の前回衆院選での同様の調査に比べ、6ポイント上昇しており、小選挙区で公明支持層が自民党候補を支える構図が一段と進んでいることが明確になった。
 今回と調査地点数などが異なるが、公明党が与党に加わった1999年以降に行われた衆院選の出口調査では、公明党候補のいない小選挙区で自民党候補に投票した公明支持層の割合は、00年が61%、03年が72%と上昇してきた。
 一方、今回、自民党候補がおらず、公明党候補のいる9小選挙区で、公明党候補に投票した自民支持層の割合は68%だった。
 同様の小選挙区で、自民支持層が公明党候補に投票した割合は、00年が38%で、03年が56%だった。今回は、前回より12ポイントも上昇しており、自民支持層の公明党候補への支持も徐々に拡大している。[読売新聞 2005年 9月12日 (月) 03:34]

無党派層、自民も受け皿に 民主との差詰まる 出口調査(朝日新聞)

 朝日新聞社が総選挙の投票者を対象に実施した出口調査で、自民が選挙区、比例区とも、無党派層から3割を超える得票を集めたことがわかった。自民が比例区で無党派票の3割以上を獲得したのは、小選挙区比例代表並立制が導入された96年の総選挙以降、衆参両院選挙を通じて初めて。03年総選挙、04年参院選で無党派層から5割前後の得票があった民主は今回、選挙区、比例区ともに得票率を大きく減らした。
 無党派層は投票者全体の21%(前回18%)を占めた。自民支持の41%に次ぎ、民主支持の20%とほぼ並ぶ。このうち、選挙区では38%、比例区では33%が自民に投票した。
 自民は「小泉ブーム」で圧勝した01年参院選で、民主を上回る無党派票の最大の受け皿となったが、この時でも無党派からの得票率は比例区で27%にとどまっていた。
 これに対し、民主の無党派層からの得票は今回、選挙区で44%、比例区で37%。いずれも自民を上回ったものの、その差は大きく縮まった。
 一方、自民支持層で自民に投票したのは、選挙区、比例区とも73%。3割近くが他党や無所属の候補に入れたことになり、民主にも選挙区で16%、比例区で13%が流れた。民主支持層では、選挙区で78%、比例区で81%が民主に投票しており、自民に流れた「離反票」は選挙区で13%、比例区で9%だけ。
 自民は公明との選挙協力の影響もあり、民主より離反率が高いが、今回はこれを無党派層の支持が補った形だ。
 また、無党派層で郵政民営化に「賛成」と答えたのは61%に上り、「反対」の31%を大きく引き離した。

◆郵政賛否、選択に直結

 郵政民営化に賛成の人は与党に、反対の人は野党に――。出口調査からは、郵政民営化に賛成の人が6割を超え、民営化への賛否が有権者の選択につながった様子がうかがえる。今回の総選挙を、郵政民営化の是非を問う国民投票と位置づけた小泉首相の戦略が功を奏した形だ。
 郵政民営化に賛成と答えた人は63%。反対の29%の倍以上を占めた。与党が全選挙区に民営化賛成候補(無所属も含む)を立てた小選挙区で、賛成の人の投票先を見ると、64%が自民、2%が公明で、7割近くが与党に投票した。
 一方、反対と答えた人は、60%が民主、14%が共産、3%が社民、1%が国民新党で、約8割が野党に投票した。
 反対派の14%が自民に入れたり、賛成派の24%が民主に入れたりという「ねじれ」はあるものの、おおむね、民営化への賛否と投票行動は一致している。
 比例区でも傾向はほぼ同じだ。賛成派は58%が自民、13%が公明に投票。反対派は54%が民主、15%が共産、9%が社民に入れ、民営化法案に反対した前職らがつくった新党日本と国民新党にはそれぞれ4%が投票した。9割近くが野党を選んだことになる。
 民営化への賛否を都市規模別に見ると、東京23区と指定市では賛成68%、反対27%。指定市以外の市では賛成63%、反対30%、町村では賛成58%、反対33%。規模が小さくなるほど賛成派は減っているが、町村でも6割近くを占めた。年代別では、賛成派が多いのは30代の68%、40代の67%などだった。

◆変化への期待、自民へ

 出口調査からは、「政治が変わる」という有権者の期待の受け皿となったのが、民主より、小泉自民だったことも明らかになった。
 「この選挙で、日本の政治は大きく変わると思うか」と尋ねたところ、「そうは思わない」と答えた人が61%で多数を占めた。
 しかし、「大きく変わると思う」と答えた34%が、小選挙区でどこに投票したかを見ると、61%が自民候補で、民主候補の26%の倍以上だった。「そうは思わない」人の投票先では、自民候補が39%、民主候補が42%で、ほとんど違いはなかった。
 政治が変わると答えた人は、東京23区と指定市で36%。指定市以外の市の34%、町村の31%に比べ、大都市で割合が高い。
 年代別では、60代37%、70歳以上38%と高年齢層で高く、50代34%、20代33%と続く。男女別では、男性が36%で、女性の32%をやや上回る。
 政治が変わると見る有権者の多くが、政権交代につながる民主ではなく、自民に投票した。すべての郵政民営化反対組の選挙区に対立候補を擁立するなど、旧来の自民党の手法を覆した小泉首相が、「改革者」のイメージを印象づけるのに成功したと言えそうだ。[朝日新聞 2005年 9月12日 (月) 10:04]

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