雨の中、横浜美術館の李禹煥「余白の芸術」展を見てきました。
李禹煥(リ・ウファン)の作品を見るのは初めて。1936年、韓国慶尚南道生まれ。1956年に来日、日本を拠点に創作活動をおこなってきた現代アーティストです。今回は、回顧展ではなく、最近の作品を中心に構成ということで、展示は、チケットにもなっているような、薄いクリーム色のカンバスにグレーの点(というかスクウェア)を書き入れたような作品(いちおう絵画だそうです)と、石と鉄板などによって構成された造形、の2種類です。
絵画の方は、カンバスの大部分は圧倒的に「余白」で構成されています。グレーの点は、一方は白に近く、微妙なグラデーションになってますが、近寄って見ると、筆の跡やカスレ、顔料の盛り上がりなどがあって、不思議な力強さがあります。
厚さ3センチほどの鉄板と、その前におかれた石の組み合わせ。石が自然を、鉄板が人工を表しているとのこと。石は、形や色はいろいろでも、自然のまま置かれているのにたいし、鉄板は、重ねられていたり、熔接されていたり、すこし曲げられていたりして、微妙に加工されていて、その2つが不思議な距離感と緊張感をもって組み合わされています。たぶん、これらはシンメトリーになるような位置から見るようになっているのでしょうが、床に置かれているだけなので、その周りをぐるぐる自由に歩き回って好きなポジションから眺められます。
そういえば、横浜美術館の展示室の床は、コンクリー剥き出しになっていて、それも含めて、石と鉄板の質感が伝わってきました。最後に、ビデオが上映されていて、今回の作品の展示準備の様子も紹介されていました。横浜市内の鉄工所で鉄板を加工し、クレーンで運び込んで据えつけて、会場で熔接していたのは、ちょっと驚き。その様子こそ見たかったですねぇ。
それから、美術館の前にも、石と鉄板からなる造形が3点、展示されていました(あんまり見ている人はいなかったけど)。その1つに、「6者協議」という作品がありました。もちろん、あの「6カ国協議」のことだと思われますが、もう1つと「鉄の壁」という作品(鉄板で作られた高さ3メートルほどの壁の周りに石が置かれているほか、石が2つ、壁のうえにも置かれています)ともども、いまの朝鮮半島情勢に向き合う作者の気持ちを見たように思いました。
屋外の展示3作品については、こちらのブログで写真を見ることができます。
→はろるど・わーど:李禹煥 「関係項」(3種) 横浜美術館「余白の芸術」にて
※チケット以外の画像は、横浜美術館のホームページより(過去の展示会での作品を撮影したもののようです)。
GAKUさん、こんばんは。
お返事が遅れて申し訳ありません。
TBとコメントをありがとうございました。
今回の李禹煥展は、
全て近作から構成されているということで、
私も新しい世界を見たような気がしました。
余白の持つ意味や、
GAKUさんも仰られているモノ同士の緊張感など、
会場全体の静かな雰囲気も味わいながら、
非常に興味深く見ることが出来ました。
「6者会議」と「鉄の壁」。
今までの李は、
作品へ政治的なメッセージをこめることがなかったそうです。
だからこそ今回の作品には特に深い意味がありそうですよね。
拙いですが、また感想を書いたらTBさせていただきます。
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