いま読んでる最中ですが、韓国の女性作家・申京淑(シン・ギョンスク)さんの自伝的小説です。1963年生まれの彼女が、16歳でソウルに出て就職し、夜学に通いながら、小説家を目指すまでの約4年間を描いています。時代的には1978年から1981年ごろ、つまり1972年の「維新革命」をへて1979年に暗殺される直前の朴正熙独裁体制の末期、そして、1980年の「光州事件」(民主化を求める光州市の市民・学生を軍隊を使って弾圧・虐殺した事件)をへて全斗煥政権が誕生するという、本当に激動の時代です。
この時代に、貧しい田舎の家を出て、ソウルで働きながら法律の勉強をする兄を頼り、従姉妹と3人で一部屋の狭いアパートで暮らしながら、昼間は電子機器の組み立て工場で働き、夜は夜間高校に通い……、そんな“底辺”の生活が、半分事実、半分フィクションといった感じで、16年後に小説家として名をなしたあとの私からふり返られていきます。
まだ第1章を読み終えたところですが、工場では、ラインで働く女性たちを中心に、いままさに労働組合が結成されようとしています。企業側の妨害や、組合設立の中心になった女性への嫌がらせ、攻撃、そして解雇…と、激しい攻防が始まろうとします。
こういう小説は、もはや日本では流行らないのかも知れませんが、やっぱり“貧しさ”とのたたかいは、文学、広くは芸術活動の永遠のテーマだと思います。