日米が普天間基地の移設先をキャンプ・シュワブ沿岸部とすることで合意。
もともと辺野古沖への移設は、<1>軍民共用、<2>使用期限15年という条件で、沖縄県や名護市が認めたもの。しかし、基地内移設で、この両条件とも事実上棚上げになっています。また、地元負担を軽減するということで、SACOでは海上施設の全長1500メートル、滑走路1300メートルとされていたのですが、新しい移設案では、米軍の要望をいれて滑走路1800メートルに延長されています(日本政府側が、米軍に足下を見られたわけ)。
結局、辺野古沖移設を決めたときの地元の要望は、今回、まるっきり無視されたことになります。「普天間移設」などと言っておきながら、またぞろ基地の負担を沖縄に押しつけて、ほっかむりしようというやり方に、悲しくなってくるのは僕だけでしょうか?
沿岸部で合意 米、浅瀬案を断念 普天間移設
[琉球新報 2005-10-26 14:25:00]【東京】在日米軍再編に伴う普天間飛行場の移設先について、大野功統防衛庁長官とローレス米国防副次官は26日午後、電話で会談し、日本側が主張していた沿岸修正案で米側も合意した。キャンプ・シュワブ沿岸部(兵舎地区)を中心に大浦湾から辺野古沖浅瀬に一部またがる形で、滑走路の長さは1800メートルになる。米側が自らの主張の浅瀬修正案を断念し、日本側の案に歩み寄った格好だ。日米両政府は当初予定通り、29日にワシントンで外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、再編の中間報告を発表する。普天間の決着に伴い、牧港補給地区(キャンプ・キンザー)など本島中南部の4基地を全面・一部返還し、北部に集約する沖縄の負担軽減策も実現の見通しとなった。大筋合意を受け、政府は該当する基地の地元自治体への説明を早ければ26日から始める。午後1時すぎに那覇防衛施設局が県に日米の合意を電話で連絡した。
大野功統防衛庁長官は25日夜、都内でローレス米国防副次官と協議し、大詰めの調整をした。米側は浅瀬案を基に、大部分を埋め立てとし、一部が兵舎地区にかかる修正案を主張。大野長官は米側の修正案ではサンゴや藻場への影響が大きすぎるとの主張を崩さなかった。ローレス副次官は当初予定の26日朝の帰国を延期していた。
同副次官の同意が得られたことを受け、大野長官は同日午後、小泉純一郎首相に報告する。
一方で米側は「運用上の所要」として滑走路の延長を求め、日本側も大筋でこれに同意した。この結果、大浦湾側のみに突き出す形だった当初の沿岸案を修正し、反対側の辺野古沖浅瀬にも一部突き出す形となった。
浅瀬はサンゴや藻場があることから、埋め立ては自然環境への影響が大きく、環境団体や反対派の反発は必至だ。
合意を受け、政府は5年以内での代替施設完成を目指す。普天間飛行場のヘリ部隊のみを移設し、空中給油機は海上自衛隊の鹿屋飛行場(鹿児島)へ移転する。
牧港補給地区と那覇軍港はキャンプ・ハンセンかシュワブへの移設を条件に全面返還する。キャンプ瑞慶覧は大半を返還し、海兵隊基地司令部の機能などをキャンプ・コートニーに移す。コートニーの第三海兵遠征軍司令部などはグアムに移転する。キャンプ桑江の一部も新たに返還する。これにより、在沖米海兵隊の軍人・軍属・家族の数は約5千人減る見通し。
嘉手納飛行場の常駐機F15戦闘機の訓練の一部や外来機の訓練も本土の自衛隊基地に移転し、騒音軽減を図る。普天間の非常駐機の緊急時の離着陸機能も本土の自衛隊基地への移転を目指す。
また、このキャンプ・シュワブ沿岸案は、実は、これまでの辺野古沖移設を決めるときに、検討された候補地の1つ。環境問題から、実現は難しいとして見送られた案だったのです。だから、地元にしてみれば「いまさら」という感じがするんでしょうね。
「環境問題厳しくなる」 普天間移設先で県幹部
[琉球新報 2005-10-26 14:40:00]在日米軍再編をめぐる日米協議で、普天間飛行場の移設先について、日米両政府がキャンプ・シュワブ沿岸部(兵舎地区)を中心に、大浦湾と辺野古沖浅瀬に突き出す1800メートルの滑走路を設けることで合意したことについて、県幹部は「浅瀬部分への建設では環境問題が厳しくなるのは必至。大浦湾埋め立て、浅瀬埋め立てともに過去に検討し、実現困難として消えた案だ。厳しいと判断している。現行計画以外なら、県外移転でない限り、県内世論は収まらない」と指摘し、県の受け入れは困難との見方を示した。
同幹部は「浅瀬にせり出すことで、さんご礁や藻場などの保全がさらに厳しくなる。環境問題や反対派の抵抗など、さらに課題を抱え込むことになり、早期移設にもならない」と強調した。
しかも基地再編の計画全体を眺めると、沖縄県北部に、最新鋭の基地・施設を新設し、米軍基地を集約化するものとなってて、「負担軽減」など、まったくどこ吹く風。
<解説>普天間移設滑走路延長案 基地新設の色彩強く 住民反発必死(琉球新報)
<解説>普天間移設滑走路延長案 基地新設の色彩強く 住民反発必死
[琉球新報 2005-10-26 9:38:00]在日米軍再編をめぐる日米協議で、普天間飛行場の移設先についてはまたも結論を持ち越した。代替施設を極力、既存の基地内に含めようとする日本側と、海上での新設で飛行経路などの制限を避けようとする米側とで25日までに折り合いがつかず、当初の予定になかった26日までの協議続行となった。
一方で、米側が滑走路の長さを1800メートルに延ばすよう新たに要求していたことが分かった。日本側もこの要求を受け入れる構えで、この結果、辺野古沖の浅瀬のリーフ(環礁)内の埋め立ても避けられないことになる。サンゴや藻場の破壊につながるとして住民や環境団体の反発を招くのは必至だ。
日本側の交渉当事者となった防衛庁では、代替施設がサンゴを壊す形となれば結局、反対運動を招き、現行の辺野古沖移設計画と同じ膠着(こうちゃく)状態に陥るとの懸念が強かった。今回、米側の浅瀬案に根強く抵抗したとはいえ、滑走路延長で妥協した結果、辺野古沖の浅瀬にも一部突き出る形となるのは確実。自らが否定した自然破壊を了承したことになる。
もともと防衛庁は、代替施設を完全に既存基地内に押し込める内陸案を推していたが、米側の反発を受け、大浦湾の埋め立てを伴う沿岸案で妥協した経緯がある。さらに辺野古沖浅瀬も一部で埋め立てるとなると、既存基地を飛び出す度合いが大きくなり、基地「新設」の色彩はより強くなる。
ただ、防衛庁は既存基地のシュワブ沿岸を利用する姿勢は崩していない。自由に運用できる海上での基地新設を求めた米側との間では依然、折り合いがつかないままだ。
日米協議がもめたことで、もともと浅瀬案での早期決着を望んでいた外務省内では「日米関係が大変なダメージを受ける」と懸念する声が強い。「修復には時間がかかる」として11月16日の日米首脳会談への影響を危ぶむ声もある。
だが、当面の日米関係悪化を恐れるあまり、本来主張すべきことを抑えようとする在り方には疑問がわく。こうした在り方が結局、県外移設を望んだ県民の願いとは程遠い結果を招いたともいえる。(東京報道部・普久原均)
基地強化に反対 本島北部の3町村
在日米軍の再編協議で、基地機能の一部を沖縄本島北部のキャンプ・ハンセンなどに移転する案が一部報道で浮上しているのを受けて、地元の金武町、宜野座村、恩納村の町村長らが24日、沖縄県や那覇防衛施設局などを訪れ、「基地機能の強化は受け入れられない」との意向を伝えた。
再編協議では、那覇港湾施設(那覇市)や牧港補給地区(浦添市)など本島南部の都市部にある米軍施設の全面、あるいは一部返還が検討されている。米側は沖縄の基地を本島北部に集約する考えを県側に伝えている。
3町村は「人口の多い中南部の基地返還と引き換えに北部の基地機能が強化される恐れが大きい」としている。
金武町の儀武剛町長は「軍事機能が北部に集約されれば、水源汚染や騒音、観光への影響など住民生活に様々な悪影響が生じる。機能強化には断固反対する」と申し入れた。
一方、普天間飛行場のある宜野湾市の伊波洋一市長も同日、県内移設によらない普天間の早期返還を県などに要請。日米両政府で検討されているキャンプ・シュワブ(名護市)周辺への移設案については、「新たな基地建設であり、県民の求める負担軽減とは相いれない」との考えを伝えた。[asahi.com 2005/10/25 10/25]