この間、雑誌論文で読んだものをちょいとメモしておきます。
関岡英之「奪われる日本――『年次改革要望書』 米国の日本改造計画」(『文藝春秋』2005年12月号)
『拒否できない日本』の著者による、「郵政民営化」後の、アメリカのねらいを明らかにしたもの。「年次改革要望書」というのは、1993年の宮沢・クリントン会談で合意されてから、毎年、双方の政府が提出しあってきた外交文書。最近のものは、駐日アメリカ大使館のホームページで読めます。そこで、アメリカが1995年以来一貫して簡易保険の廃止を要求してきています。それは、アメリカの保険業界が簡保120兆円をねらっているからだというのが著者の主張。
さて、その郵政民営化が強行されたあと、次にアメリカがねらうのは何か? それは健康保険だというのが著者の分析です。
そういえば、小泉さん、こんどは執拗に「混合診療」をすすめようとしていますなぁ。しかし著者は、日米の医療費を比べると
1人当たり医療費 | 総医療費の対GDP比 | |
---|---|---|
アメリカ | 591,730円 | 13.9% |
日本 | 310,874円 | 7.8% |
ということで、皆保険制度を守っている日本の方がはるかに医療費は安くついており、市場経済にゆだねている米国の方が医療費が高くついていると指摘します。
ここで、もし「混合診療」が認められれば、どうなるか? たとえばガンになったとき、「保険ではこれしかできませんが、2,000万円払えばもっと治せますよ」ということになりかねません。医療を受けたければもっとカネを払ってくださいということです。そうなれば、誰だって心配で、公的医療保険がカバーしない分野は、民間の医療保険に入って何とかしようとするはず。つまり、民間保険会社にとっては、そこに新たな市場が生まれるという訳です。
アメリカでは、公的保険制度は、低所得者を対象としたメディケイドと高齢者・障害者を対象としたメディケアの2つしかなく、米国民のうちメディケイドが11%、メディケアが13%をカバーするだけ(ただし、メディケアは薬代をカバーしていない)。他方、民間の保険に入れるのは、ある程度所得のある人だけ。したがって、メディケイドでカバーされている低所得者層と、民間保険に入れる富裕層との間に、どちらにも入れない無保険者層があって、2,002年には、それが4400万人、国民の約15%にもなっているそうです。
「混合診療」解禁論の先に、そんな恐ろしい未来が待っているとは…。う〜む、くわばらくわばら。
最近の「改革要望書」(全部、駐日アメリカ大使館のホームページ)
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