米政府は、何故、日中韓の歴史問題を憂慮するのか

小泉首相の靖国参拝問題に関連して、アメリカの政府や議会から、日本の戦争を「自衛戦争」「アジア解放の戦争」とみなすいわゆる“靖国史観”にたいする批判が投げかけられていますが、なぜ米政府などが、日中韓の歴史問題に関心を示すのか? 昨日の読売新聞「地球を読む」に載ったアーミテージ前国務副長官の論評は、その背景を伺わせていると思います。

ここでは、アーミテージ氏がこの論評全体で言わんとしていることについてのコメントは省略しますが、氏は、歴史問題について、こう述べています。

 我々は歴史からくるアジア諸国の反感を克服し、地球規模においてもアジア域内においても、現在の関与政策を再考しなければならない。
 例えば中国と韓国が、歴史を理由に、米国の意図に疑念を抱くことは容易に想像ができる。アジアにおける米国の歴史は、第2次世界大戦という顕著な例外を除き、一貫して日本と歩調を共にしてきた。1882年、米国は李氏朝鮮と修好通商条約を結んだ。これは友好と公正な通商を保障するだけでなく、相互防衛条約の意味合いを持っていた。だが、朝鮮側が抱いていた安心感は、1905年〔日本による韓国併合のこと――引用者注〕にはきれいに吹き飛んでしまった。
 この年、米国のタフト陸軍長官は、桂太郎首相と秘密会談を開いた。数日にわたる白熱した交渉の結果、両者は「タフト・桂協定」に達した。日本側は、ハワイとフィリピンに対する米国の主権を承認し、それと引き換えに米朝条約の廃棄を、ひいては朝鮮に対する自由裁量権を手に入れた。
 中国に対しても、歴史は厳しかった。1915年、日本が戦争の脅しをかけながら、中国に「21か条の要求」を突き付けた時、米国は中国を支持しない道を選んだ。そのおかげで日本は、諸外国による領土租借の即時停止や、満洲と山東半島の支配権を含む諸要求を、いやがる中国にのませることに成功した。
 これらの歴史的経緯は重い。日米間の長い絆を象徴するだけではない。日米同盟にいくばくかの不安を抱くアジア諸国に、ひとつの下地を提供するからである。

つまり、日韓、日中の歴史問題での対立が深刻化していくと、問題がアメリカの対アジア政策の歴史におよぶことが懸念される、そうなれば、アメリカが日本のアジア侵略を――少なくとも最初の段階では――容認してきたことが問題になる可能性がある、というのです。だからこそ、小泉首相の靖国参拝や“靖国史観”について、アメリカ政府は「懸念」を表明せざるをえない――というのは、大いにあり得ることではないでしょうか。

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