ギッタ・セレニー『人間の暗闇―ナチ絶滅収容所長との対話』(小俣和一郎訳、岩波書店)。まだ100ページほど読んだだけですが、ナチス・ドイツがポーランドに設けた絶滅収容所長にたいするインタビュー。原書は、1974年にまず英語で出版されたそうです(邦訳は、1997年のドイツ語版から)。著者は、イギリス在住のジャーナリスト、歴史研究者(女性)で、1967年から1970年にかけて、西ドイツでおこなわれたナチ裁判を傍聴し、1970年に終身刑の判決を受けた元レブリンカ収容所長フランツ・シュタングルにたいする70時間にわたってインタビューしたもの。
1対1のインタビュー記録ではなく、他の関係者へのインタビューや記録とつきあわせて、シュタングル(あるいはその他の収容所関係者)の言い分が事実に合致しているのかどうか、確かめながら、なぜ普通の人間が、ヒトラーによる「ユダヤ人最終解決」を担うことになったのか。その心理に迫っています。
それにしても、本書を読みながら、あらためてナチスのホロコーストについて、僕自身が事実をよく知らなかったということを痛感しました。たとえば、絶滅収容所と強制収容所は違う、という基本的な事実も、今回初めて知りました。
原題は“into the Darkness”――「闇の中へ」。ほんとに、人間の「闇」の中に引き込まれるような、重い本です。
【書誌情報】書名:人間の暗闇――ナチ絶滅収容所長との対話/著者:ギッタ・セレニー/訳者:小俣和一郎/出版社:岩波書店/出版年:2005年12月/定価:本体4200円+税/ISBN4-00-024239-3