共産党と社民党が、憲法改正の阻止に向けて共闘関係を構築することで一致したというニュースが流れています。政党レベルでの正式な共闘が合意されるとしたら、26年ぶり(つまり1980年の「社公合意」で社会党が、公明党の共産党排除の方針に同意して以来のこと)になります。
共産、社民が改憲阻止共闘 26年ぶり、国民運動強化(共同通信)
共産、社民が改憲阻止共闘 26年ぶり、国民運動強化
共産、社民両党は23日、憲法改正の阻止に向けて共闘関係を構築することで一致した。近く共産党の志位和夫委員長と社民党の福島瑞穂党首が会談して正式合意する。共産党によると、両党の共闘が成立するのは約26年ぶり。
両党としては自民党と民主党の二大政党制の流れが加速する中、協力関係を築くことで改憲反対の国民的な運動を強化し、埋没を回避する狙いがある。
社民党の福島党首は「共産党だけではなく、民主党内の護憲派や、自民、公明両党の改憲慎重派とも連携していく。昔の単純な『社共共闘』とは違う」としている。
共闘に向けた申し入れは、共産党の市田忠義書記局長が同日午前、社民党の又市征治幹事長と国会内で会談して伝えた。[共同通信 1月23日20時58分更新]
福島・社民党党首は「昔の単純な『社共共闘』とは違う」といわれたそうですが、大いに結構なことです。無党派の市民運動も含め、大きな憲法改悪反対の輪を作るために、政党としてはたすべき役割やイニシアティブを発揮してほしいものです。
憲法改悪反対の一致点で共闘を 日本共産党が社会民主党に会談申し入れ(日本共産党中央委員会)
憲法改悪反対の一致点で共闘を 日本共産党が社会民主党に会談申し入れ
志位委員長が会見日本共産党は1月23日、社会民主党に対し、憲法改悪反対での両党の共闘について会談をおこなうことを申し入れました。
申し入れ後、日本共産党の志位和夫委員長は国会内で記者会見し、憲法問題での共闘の会談の申し入れをおこなった経緯やその意義などについて語りました。
志位氏は、自民党が昨年の党大会で「新憲法草案」を決定するなど、憲法改定をめぐるたたかいが新しい重大な段階を迎えているなかで、「憲法改悪反対、九条擁護の一点で、国民的な共同を広げるための努力が強く求められている」と指摘。これまで、日本共産党と社会民主党の代表が、5月3日の「憲法のつどい」でそろって講演をおこなったり、「九条の会」にそろって賛同人になるなどの機会が重ねられてきたことを紹介しました。
そのうえで、20日に日本共産党新執行部が就任あいさつで社会民主党を訪れたさい、志位氏が「両党の憲法問題での協力関係を発展させることを願っています」とのべたのにたいして、福島瑞穂党首が「自分たちには院内外での両党の共闘についてのためらいは一切ありません。障害はありません」と言明したことを、「たいへん重要な発言と受けとめました」と表明。今回の申し入れは、こうした経過を踏まえてのものだと説明しました。
志位氏は、「いま、国会に議席をもつ政党のなかで、憲法改悪反対と九条擁護をつらぬいている政党は、日本共産党と社会民主党です。この両党の共闘関係が成立するならば、憲法擁護闘争の発展にとって積極的な貢献になることは間違いありません」と強調。その立場から両党の会談をしかるべき形でもち、憲法問題の共闘について話し合いをすすめたいとのべました。社民党又市幹事長「検討して返答する」
日本共産党の市田忠義書記局長は23日、国会内で社会民主党の又市征治幹事長を訪ね、社会民主党の福島瑞穂党首にあてた、日本共産党・志位和夫委員長の申し入れ文書を手渡し、憲法問題での両党の共闘について、会談をおこなうことを申し入れました。
市田書記局長が参院の社民党控室を訪ねると、又市幹事長は握手で迎えました。市田氏は、申し入れの趣旨を説明しました。これに対し、又市氏は「申し入れを歓迎します。両党間協議には賛成です。党首に伝え、党として検討して返答したい」とのべました。申し入れ(全文)
自民党が、昨年の党大会で「新憲法草案」を決定するなど、憲法九条を焦点とした憲法改定の動きとのたたかいは、新たな重要な段階をむかえています。憲法改悪に反対し、その平和原則にそむくくわだてを許さないという一点で、国民的な共同を広げる努力が、いよいよ大切になっています。
これまで、「九条の会」やさまざまな市民団体が主催する憲法擁護の集会で、貴党とわが党の代表が、そろって賛同人になったり、あいさつや講演をおこなうなどの機会が重ねられてきました。
この点で、二十日、わが党の新執行部が、貴党にごあいさつにうかがったさい、私が、これらの例もあげつつ、「憲法擁護のたたかいをすすめるうえで、両党の協力関係を発展させることを願っています」とのべたのにたいして、福島党首が、「自分たちには院内外での両党の共闘についてのためらいは一切ありません。障害はありません」と言明されたことを、私たちはたいへん重視しています。
国会に議席をもつ全国政党のなかで、憲法改悪反対、九条擁護の立場をつらぬいている政党は、貴党と日本共産党です。この問題で、両党の間で共闘関係が成立するならば、国会内外の憲法改悪反対のたたかいを発展させ、国民的多数派を結集していくうえで、積極的な貢献となることは、間違いありません。
この立場から、憲法問題での両党の共闘について、会談をおこなうことを申し入れるものです。
ご検討ください。二〇〇六年一月二十三日
日本共産党幹部会委員長 志位和夫
社会民主党党首 福島瑞穂 殿
1/30追記:
東奥日報がこんな記事を載せています。まあ、ありがちな政治部ネタですが。
共産、社民共闘に早くも暗雲/両党で際立つ「温度差」(東奥日報)
[東奥日報 2006/01/28]共産、社民両党が憲法「改悪」阻止に向けて共闘関係の構築に動き始めたが、具体的な共闘の在り方をめぐり両党間の「温度差」も際立ってきた。共産党は「憲法擁護闘争への大きな貢献になる」(志位和夫委員長)と強調してみせるが、社民党は「社共ありきでは、運動が広がらない」(党幹部)と及び腰。二月中旬には共闘協議の党首会談を開く段取りだが、二十六年ぶりとされる「革新」勢力の連携に早くも暗雲が垂れ込めている。
「社民党には(共産党への)抵抗感はまったくない。憲法九条を変えない戦いを(ともに)国民に広げていこう」。二十日、国会内の社民党控室。再任のあいさつに訪れた志位氏は福島瑞穂党首の言葉を聞き逃さず「それなら、わたしたちも歓迎だ」と応じた。
福島氏の「言質」を取った志位氏の動きは素早かった。翌二十一日の党常任幹部会を経て、二十三日に市田忠義書記局長が社民党の又市征治幹事長を“電撃”訪問。共闘に向けた党首会談を正式に申し入れた。直後の記者会見で、志位氏は「福島氏は社民党側の障害は一切ないとはっきり言った。そうなら(共闘の)努力を始める必要がある」と説明した。
共産党が共闘合意を急ぐ背景に、護憲勢力の主導権を握ることで党勢拡大につなげたい思惑があるのは間違いない。党内には、他党との協力を否定する独自路線だけでは「二大政党制の流れの中で埋没するだけ」との不満が渦巻いており、これが高ずれば指導部批判に直結しかねないとの懸念もあったとみられる。
共産党関係者は「共闘は失敗してもいい。志位執行部にとっては、申し入れたことに意味がある。『社民が拒否した』とさえ言えれば、下からの突き上げをかわせる」と指摘する。
一方の社民党は、協議に応じる姿勢は見せているものの「(共産党は)もう少し丁寧にやってほしい」(又市氏)と、戸惑いを隠せない。共産党とは旧社会党時代から支持者獲得で「血みどろの戦い」を繰り広げてきただけに、今回も「共産党に食い荒らされてはたまらない」(ベテラン議員)との警戒感が先行。地方組織から「執行部はしっかりしろ」との声も相次いでいるとされる。
福島氏は二十八日、千葉市内で「共産党とだけ組むことはない。自民党のハト派や、公明、民主両党の同じ考えを持っている人たちと運動する」と強調。幹部の一人は「会ってすぐに『婚約しよう』と言われても困る。まずはお茶、食事でもしながらゆっくり付き合いを深めたいのに…」と漏らしている。
東奥日報がどこの誰から取材したか知りませんが、「共闘は失敗してもいい」「社民が拒否したと言えれば下からの突き上げをかわせる」などと本気で論じている共産党関係者がいたとしたら、言語道断、思い違いも甚だしいと言わざるをえません。
もちろん、共産党と社民党との間には、これまでいろんな経過があったわけだから、一足飛びに何もかもうまくいくはずがないことは言うまでもありません。また、共産党と社民党が一緒に並びさえすれば、なにもかもうまくいくという訳でないことも明らかです。
しかし、これまで、有事立法反対集会は、航空運輸20労組などが間に立つ形で、共産党、社民党、それに民主党の一部も参加して集会が開かれてきました。5・3憲法集会でも、様々な団体の共同実行委員会が主催し、その場に志位委員長と福島党首が出席し、それぞれ講演するという形で、「共闘」がやられてきました。それを、もう一歩するめることはできないのでしょうか? もっと継続的に共同の集会や行動を開いたり、かつての10・21統一行動のように諸団体と一緒に共産党や社民党も直接くわわる形で実行委員会を作って全国各地で集会が持てるのではないか。志位さんや福島さんが、他の方たちと一緒に街頭宣伝に立つのもよいかも知れません。ともかく、いろんなやり方、いろんな可能性があると思うのです。それを真剣に追求してほしいと思います。
憲法9条改憲阻止のためには、国民の過半数の力を集めなければなりません。だから、共産党や社民党の支持者だけでなく、無党派の人たちはもちろん、自民党支持だという人だって、賛同できるような幅広い運動を作っていかなければなりません。同時に、いま国会の中で明確に9条改憲に反対している政党は共産党と社民党だけなのですから、そういう政党として、幅広い国民的な力を結集するために政党としてはたすべき役割はあるはずだし、できることがあるならばその可能性を追求し尽くしてほしいと思います。
今回の申し入れはそのための共同の議論の出発点になるし、ぜひそうしてほしいと多くの人が願っていると思います。