国会図書館が、自民党の独法化案に反論

自民党の行政改革推進本部が、国立国会図書館の独立行政法人化を提言したことに対し、国会図書館が記者会見し「国立国会図書館の役割について」と題する資料を配付。

まあ、自民党の国会議員のみなさんは、国会図書館で調査なんかしないのかも知れませんが、国会図書館は、たんなるでかい図書館ではありません。

まず、国会図書館法により、日本国内における出版物は必ず国会図書館に納入されなければならないことになっています(第25条)。何十年も立ってから、古い文献や資料を探したり、学術書ばかりか、一般雑誌などから社会動向を調べたりできるのも、こうした法律的な裏づけがあるからこそ。こうした役割を果たしうる図書館は、全国数多しといえども、国立国会図書館以外にはありません。独法化でそうした機能が失われるようなことは、絶対にあってはなりません。

また、国会図書館は、独自の調査機能をもっています。それは、国会議員の立法活動、政策活動を支える大切な物質的条件の1つでもあります。自民党が国会図書館の独法化を持ち出すなどと言うのは、自分で自分の足下を切り崩すようなものだと言わなければなりません(自民党議員は、役所に電話して「資料持ってこい」と言って、用を済ませてるのかも知れませんが、それでは本当に官僚から独立した国会議員の活動など保証されません)。

独立行政法人化に懸念表明、国会図書館が異例の反応(読売新聞 2/10)

独立行政法人化に懸念表明、国会図書館が異例の反応
[2006年2月10日18時52分 読売新聞]

 国立国会図書館は10日、自民党の行政改革推進本部が同図書館の独立行政法人化を提言したことを受け、国会内で会見し、「国立国会図書館の役割について」と題する資料を配布した。
 同図書館の担当者は「今後も現在の国会図書館の機能は維持されるべきで、行政改革の観点だけで決めてよいのか疑問もある」とし、事実上、独立行政法人化に対する懸念を表明した。政党の政策提言に対し、同図書館がこうした反応を示すのはきわめて異例。
 自民党の提言は、同図書館は組織を見直し、国立大学や博物館と同じように独立行政法人とするべきとしている。これに対し、同図書館は、「調査業務や国民へのサービスなどに支障が生じないようにするべき」などとし、独立行政法人化によって、これらの機能が損なわれる可能性があることを示唆している。

国会事務局改革案:国会図書館が独立行政法人に?(毎日新聞 2/10)

国会事務局改革案:国会図書館が独立行政法人に?
[毎日新聞 2006年2月10日 21時43分]

 自民党の行政改革推進本部(衛藤征士郎本部長)は10日の総会で、国会事務局改革案を了承した。国立国会図書館や、憲政史を伝える憲政記念館の独立行政法人化を明記。国会職員の削減に向け、06年度以降の5年間で1割以上、10年間で2割以上削減する数値目標も盛り込んだ。改革案は14日の総務会に報告し、衆参両院議長に提出する。
 行革推進本部は改革案の柱となる国会図書館について「職員数の増大など肥大化を続けており、独立行政法人化により効率化を図るべきだ」と説明。一方、国会図書館の塚本孝総務副部長は10日記者会見し、独法化について「立法補助機関として、行政から独立した質の高い調査をする機能が損なわれるのであれば問題」との懸念を表明した。
 このほか国会職員の削減に向けて、衆参両院の法制局の統合のほか、衛視や速記者、国会公用車の運転手などの民間委託を列挙。また、両院事務総長の年収(2976万円)が、国会議員(2483万円)より高いことから、幹部職員の給与体系の見直しなども打ち出している。【平元英治、青島顕】

◇ことば…国会図書館

 国会の立法機能を補佐するため、1948年に発足。職員数は940人で、国会議員の求めによる各種調査のほか、独自の調査・分析活動も行っている。国内で刊行される出版物をすべて収集しており、蔵書は837万冊に及ぶ。一般国民も利用でき「国立中央図書館」としても機能している。

で、10日に発表された国会図書館自身のコメントはこちら。
「国立国会図書館の役割について」

いまのところ、自民党の行政改革推進本部のページを開いても、国会図書館の独法化に関する資料は出てきません。ということで、唯一?の関連資料といえるのは、この「産経新聞」の記事のようです。

国会図書館、独法化へ 自民行革本部、国会改革の目玉に(産経新聞 2/2)

国会図書館、独法化へ 自民行革本部、国会改革の目玉に
[産経新聞 2006/02/02 東京朝刊から]

 自民党行政改革推進本部(衛藤征士郎本部長)は1日、国立国会図書館の独立行政法人化を求める方針を決めた。政府の公務員総人件費削減に合わせたもので、行政機関よりも遅れている国会(立法機関)の改革を進めるための目玉に位置づける。9日に総会を開き、国会図書館の独法化を含めた国会改革案の了承を得る方針。その後、公明党や野党の協力も得ながら、平成19年度から順次実現させたい考えだ。
 「日本唯一の国立図書館」とうたわれている国会図書館の本来業務は、国会議員の立法、調査活動の補佐。だが、このほかにも資料の収集、整理や一般への閲覧などの司書業務も行うだけでなく、最近は国会議事堂隣の本館に加え、京都府精華町に「関西館」、東京都台東区に「国際子ども図書館」が相次いで開館した。このほか電子化にも取り組むなど、「副業」の拡大が顕著になっている。
 行革本部では文化庁の機関だった国立美術館・博物館などが独法化している点に着目し、国会図書館も同様に独法化させるのがふさわしいと判断した。独法化は国会職員の非公務員化と、不透明とされていた運営内容の情報開示を促進するのが主な狙いだが、問題視されていた副業拡大を自由に行えるメリットも生まれてくる。
 党行革本部の国会改革案ではこのほか、当面の方針として国会職員(約4100人)を今後5年間で10%削減する。その上で、警備、運転業務の民間委託▽衆参両院にある法制局の統合▽委員会の審議運営を担う「委員部」と法案調査を担う「調査室」の統合▽各部署で分かれていた会計経理の一本化――などを進める。
 公務員の総人件費削減は昨年末に閣議決定された「行政改革の重要方針」に盛り込まれた。行政機関の国家公務員には「今後5年間で5%以上の純減」の下、政府で具体策が検討されている。国会職員の削減については小泉純一郎首相が党に検討を指示していた。

               ◇

【用語解説】独立行政法人
 各府省の政策実施部門のうち確実に実施される必要はあるが、国が直接実施する必要はない事務や事業を分離して、独立の法人格を与えた機関。中央省庁再編に伴い、平成13年4月に研究所や大学など教育機関などを中心に発足。平成17年10月現在で116法人が設置されている。

※「雑記@史華堂」のわかとさんのブログ記事などを参考に、関連資料を補足しました。

国会図書館が、自民党の独法化案に反論」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: 雑記@史華堂

  2. お世話になっております。
    補足記事の掲載により、少しばかり実像が見えてきました。それにしても、博物館・美術館が独法化したんだから図書館も…、という主体性のない話が本当だとすれば、なんだかなぁという思いがします。
    記事にあるような「改革」が、本当に独法化しないと出来ないことなのかが、少し見えにくいですね。「小さな政府」という目的のみが一人歩きしないようにしてほしいものですが…。

  3. かわとさん、こんばんは。

    国会図書館の独法化をもちだしたのは、国家公務員削のために手当たり次第にどこでもいいから削ってしまえ、という以外の何ものでもないですね。図書館の役割なんていうことも、まったく考えたことがないに違いありません。

    国会関係職員が目の敵にされているのは、毎日新聞が書いているとおり、衆参両院事務総長の年収が国会議員以上だという「やっかみ」が一番の理由かも知れません。

    どっちにしても、「野蛮」としか言いようのない話です。

  4. ピンバック: 為替王

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