構造計算って何を計算しているの?

耐震強度偽装事件で、耐震強度が基準の85%とされたマンションについて、「限界耐力計算」という別の計算方法で構造計算し直したところ、耐震基準を満たしたというニュース。

要するに、構造計算って、何を計算しているのでしょう?

しかも不可解なのは、国土交通省の対応。2月15日には、「限界耐力計算」を認める通達を出しておきながら、それがニュースになると、一転、2つの計算方法の違いを検証すると言い出す始末。なんとも無責任な話…。

別計算法では「安全」…新宿区の「姉歯」マンション(読売新聞)

別計算法では「安全」…新宿区の「姉歯」マンション
[2006年3月7日13時24分 読売新聞]

 耐震強度偽装事件で、姉歯秀次・元1級建築士が構造計算書を改ざんしていた東京都新宿区の投資型の分譲マンションについて、同区の調査でいったんは耐震強度が基準の85%しかないとされながら、別の計算方法で再計算したところ、基準を満たし、安全と判断されていたことが分かった。
 二つの計算方法はいずれも建築基準法で認められたもので、採用する計算法によって安全か否かの判断が分かれたことになる。区では「地盤が固いなどの固有の要因があったため、計算方法で結果に開きが出たが、まれなケースではないか」(建築課)としている。
 2度目の計算に使われた「限界耐力計算」は、法改正に伴って2000年から構造計算に使われるようになった。同区は今年1月、姉歯元建築士が使ったのと同じ、従来の計算法「許容応力度等計算」で構造計算書を調べたところ、85%との結果を得ていた。
 その後建築主と協議したうえ、民間の設計事務所に依頼、限界耐力計算で計算をやり直したところ、120%以上という結果が出たという。耐震診断でも安全が確認されマンションは改修されないことになった。
 国土交通省によると、許容応力度等計算は強度判定に幅が出る傾向があり、地盤の状況など諸条件を考慮する限界耐力計算の方が、詳細な強度計算ができるという。全国の自治体による再計算では許容応力度等計算を使っていたが、現在、全国で十数件の物件について、限界耐力計算での再計算を進めているという。
 同省では、「限界耐力の方が、安全性が高いことを示す数値が出る傾向は確かにあり、適切な計算方法を選択して構わない。公的支援については現行の判断基準に変更はない」(建築指導課)としている。

【東京】限界耐力計算の「運用は慎重に」(建設業界ニュース東京版)

【東京】限界耐力計算の「運用は慎重に」 JSCA(3/9)

 日本建築構造技術者協会(JSCA、大越俊男会長)は、国土交通省が特定行政庁に通知した技術的助言「偽装物件に対する是正措置に関する扱い」に対し、「限界耐力計算による法的適合性の検討は慎重を期すべき」などと指摘する意見書を同省に提出した。性能規定の耐震性能検証法である限界耐力計算と、一般的な計算(保有水平耐力計算)の結果に違いが生じ、混乱の一因となる恐れが強いためだ。
 国土交通省の技術的助言は、住宅局建築指導課長名で2月15日に通知。耐震強度の偽装が発覚した物件について、建築基準法違反を是正するための手順、回収の方法などを示した。この中で、「限界耐力計算などによる安全性の検証をした構造計算書が提出された場合は、特定行政庁が審査し、建築基準法令の規定に適合することを確認した場合はその旨を所有者に通知する」ことを明記した。
 建物の性能規定化は2000年施行の改正建築基準法で導入。限界耐力計算は性能規定で建物を設計する場合に活用する耐震性能の構造計算法で、高層建築物などの多くがこの計算を使って設計されている。
 建物の高さにより一律に基準を定めていた従来の設計法に比べて、限界耐力計算では設計者の自由度が高まり、創意工夫を生かせるようになった。その反面、▽設計者の裁量により、地震力を小さく評価できる▽大地震時での層間変位の制限値が決められていない―といった運用上の課題も指摘されている。
 JSCAは05年9月にこうした状況を踏まえ、「限界耐力計算の問題点」と題するレポートを作成。これを土台とした今回の意見書は、限界耐力計算の運用について、技術的な問題点とともに「偽装物件の一部の建物だけを限界耐力計算法で検討することは、保有水平耐力計算による検討結果に基づき、取り壊しが判断された建物との整合性確保が難しい」などと指摘。両計算の結果の違いについて、「国民への明快な説明が必要」と訴えている。(2006/3/9)

二つの構造計算法、国交省が違い検証へ 耐震偽装問題(朝日新聞)

二つの構造計算法、国交省が違い検証へ 耐震偽装問題
[asahi.com 2006年03月09日]

 耐震強度偽装事件にからみ、いったん「強度不足」とされた東京都新宿区のマンションが別の計算方法で計算したところ、今度は「安全」と判定された問題で、国土交通省は異なる判定の原因となった二つの計算法の「許容応力度等計算」と「限界耐力計算」の違いについて改めて検証する。佐藤信秋事務次官が9日の定例会見で明らかにした。
 検証は独立行政法人建築研究所(茨城県つくば市)に依頼。いくつかの建物について、形や地盤の強さにより、二つの計算法で算出した耐震強度にどのような違いが出るか特性を分析する。
 許容応力度等計算は従来の計算法で、限界耐力計算は建築基準法改正で00年から使うことができるようになった。この時も旧建設省が検証しているが、今回の問題を受けて改めて調べる。

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